雨夜鳥&ジニー

雨夜鳥 志乃紀 > 「……、ま、って。」(彼女は君を追いかけた。君の真意を聞きたかった。)『ガキ………、良いガッツだ………けど、弱ェ。そのままで居ろ。弱いままでいい。……強さなんてもんはなァ…それが無きゃ生きていけない奴にだけ在りゃ良いんだ。持たなくても良いなら、持たねえ方が良い。……………』(さっき零した、君の言葉。それが誰に向けられたか彼女に判別はつかないけれど、それが自身に向けられていないものでも良かった。)(彼女は少しだけ、ほんの少しだけ怒っているのだ。それは本当にひどいエゴで、私利私欲に塗れた、自己中で薄汚い怒りだ。)「なんで。…、なんで、弱いままでいい、なんて、言うの。」(彼女は君の言うとおり弱い。彼女は自身の弱さを呪い、かつその弱さに救われてしまうほどに弱い。彼女は、そんな自分が嫌いだ。だから。) 「なんで……、っなんで、なんでっ、」(だから、君に、何よりもきっと強い君に、勝手に夢を宿してしまった。裏切られた、なんて勝手だけれど、どうか、どうか君に、まけないでほしかったのに。)「なんで、あなたがあなたの強さを、ひていする、の、…っ、」   (1/10 00:52:16)

因(ゆかり) > 「………誰かを守るなんて事ぁなあ、誰かが傷付く事を前提にした言葉だ。そんなもん、無い方が良いに決まってる。それになぁ……」「お前が頑張らなくたってお前より優れた誰かが何とかしてくれるなら別に半端なモン持ってる必要なんてねえだろ。」(彼は語る。一切足を止めずに、片手に持った一升瓶をあおって酒をごぷごぷと腹に飲み下しながら、ふらふらとのそのそと歩き続ける。最後に突き放す様に呟かれた“お前”が彼自身、誰に向けて呟いたのかも分からず、向かう先の無い爪先は彼の忌み嫌う夜明けへと着実に進み続ける。明日もバイトだ、早く寝なきゃな、なんて思う度に、どうして生きているのか分からなくなる。こんな事をする為の44年だったのか?違う、違う。…違う、と言い張りたいが、きっと、違くは無いのだろう。だから彼はそれ以上の言葉を語らない。口にしてしまえばそれは聴覚器官を通して脳に到達し、否定しようも無く理解してしまうから。だから彼は酔い続けなければならない。何も考えられない程に忙殺と酩酊を繰り返して壊れそうな自我を騙し続けなければならない。)「____テメェもそうだろうがよ。」   (1/10 01:04:40)

雨夜鳥 志乃紀 > 『……誰かを守るなんて事ぁなあ、誰かが傷付く事を前提にした言葉だ。』(誰も傷つかない世界なんて、存在しないじゃないか。)『お前が頑張らなくたってお前より優れた誰かが何とかしてくれるなら別に半端なモン持ってる必要なんてねえだろ。』(自分自身が生きる意味を、自分自身の生きる価値をその人に預けて、安心してしまいたいから。)(意地汚い本音、醜い自己愛と承認欲求は誰にでもあるもの。だから、そのまま、汚くていいよ。弱さは強さなんかじゃない、ただの堕落だ。彼女の優しさは妥協と諦観とほんの少しの嘘でできていて、綺麗なんかじゃないんだ。)(彼女は君のほんの後ろを歩いた。君が不安定に歩く道を慎重に追った。それは君の影に隠れて光から隠れるためじゃない、ただ君を光から守ってやる背丈がないだけで、ただ君を立ち止まらせるだけの重さがないだけで、ただ……いや、隠れているだけなのかもしれないね。)『____テメェもそうだろうがよ。』(ぽつり。)   (1/10 01:43:58)
雨夜鳥 志乃紀 > (アスファルトに、暗いシミが一つ。)「……そう。っそう、その通り、なんだよ。」(ふたつ、みっつ。)「それ、でも……っ、そう、だけど、」(君は正しい。ただしいけど、ちがうんだ。)「おじ、さんが。おじさんで。きみ、でいるの、から。ぅ、にげ、ちゃ、」(零されたシミはやがて数えることすら億劫になるほどに増え、それはやがて君の背や肩、頭や顔すら含めたすべてを包んでしまうでしょう。人のごった返していた路上は突然の雨に驚いて、人々は駅構内へ吸われていく。)「だめ、なん、だよ。」(彼女は諦観を抱えている。それは、大きなすべての事から逃げなければ、生きていけない弱さを抱えているからだ。過去、将来、人間、勉強、嫌いな食べ物嫌いなこと、他人と接すること、自分でいること、誰かが傷つかないといけない世界と、付き合っていくこと。)   (1/10 01:44:06)
雨夜鳥 志乃紀 > 「にげ、ちゃ。……っ、だぇ、なん、ぅ“~……っ、」(大事なものを抱えるのは苦しい、それがだめになった時自分もだめだと思ってしまうから。)(何かを持つのは苦しい。それが永遠に手元からなくならずにいてくれることなんてありはしないから。)(それでも。)「きみ、は、」(こんなこと、君に押し付けるべきではないのでしょう。これは彼女の勝手な希望を、勝手な光を君に勝手に重ねているだけだから。 それ、でも。)「きみ、の、いきてく、重さは、…、」(もしも君が立ち止まるなら。否、君が酩酊で足がふらついてしまうなら、彼女は君の正面に回り、きみの体を抱き留めたいんだ。何が何だかからないまま歩き続けなければ死んでしまうような、君のそのぼろぼろの自我を殺してしまいたいんだ。)「べつの、だれかに。あずけちゃって、いいん、だよ」   (1/10 01:44:13)
雨夜鳥 志乃紀 > 「いっしょ、に、きてよ。」   (1/10 01:44:41)

因(ゆかり) >  「………………、誰が受け取ってくれんだよ。」 (欲しかった居場所があった。目指していた夢があった。守りたかった何かがあった。…在った、それは確かだ。そして今では否定のしようも無く過去形であるのも、これも、確かだ。かつて目指していた未来に、今の自分は居ない。一度は登ったリング上に築かれた玉座、その時はそれが全てだと思っていた。けれど、いつか、必ず手放さなければならない時が来てしまう。それが偶々あの時だっただけだ。) 「あのなぁ………」 (今まさに彼はなりたく無かった人間になろうとしていた。そして、そうしないと自分が生きていけない事も理解していた。綺麗事だけでは何も変わらない。それはきっと誰の世界でもそうだろう。彼は君に足止めを食らって、違う色の諦観をぎゅっと握り潰す様に忌々しい様な表情で拳を握り締めて溜息交じりに呟く。)   (1/10 02:05:46)
因(ゆかり) >  「夢や希望じゃ食ってけねえんだよ…、アンタはヒーローの“主犯格”なのか?アンタが全部何とかしてくれんのか?出来んのか?いくらヒーローだって、全ては救えねえだろ………だから、アンタが救うのは俺じゃなくていい。 …………帰んな、俺も…明日はバイトなんだ………」(タクシー代にでも使えよ、と居酒屋の店員に渡し損ねた札を君の顔に手のひらごと押し付けて、押しのけて、のそのそと君を残して歩み出す。もしも君がそのままそこに残るのならば、もうこれ以上追う為の術や権利を持っていないのであれば、君に声を掛けるもう一人の人物が居る。その選択は君に託されている。)   (1/10 02:05:52)

雨夜鳥 志乃紀 > (彼女は。) (彼女の頬は濡れていた。雨か雫か、その判別など誰にもできないし、必要ではなかった。)(くやし、かった。何もできない自分が、誰も救えない自分が。手を伸ばすことすら諦めた人にも寄り添えないまま、ただ消費なんてしようとしてしまった自分が。)(欲張りな彼女は、)「わかって、る、けど……っ、」(君は正しい、ひたすらに正しい。夢物語なんて見ず、概念ではなく現実で生きている。救いなんて存在しない現実で、生きている。)「っん、な…、」(顔に押し付けたられたそれを握りしめ、彼女は彼に押しのけられるままに、その場に立っていた。立つことしかできなかった。頽れてしまいそうな足を、奮い立たせておくことしかできなかった。)(声をあげて、ひどく冷たい雫で少女は泣いた。)(彼女は、醜い。)   (1/10 02:19:47)

因(ゆかり) > (否、君の雨はいずれ止むはずだ。スーツとシルクハットでその無機質な身体を隠しながら真っ黒な蝙蝠傘で街灯の明かりと雨粒を遮ったのは、他でもない___)『Oh, Ms.アマヤドリ、総員可及的速やかに帰還、とのご命令でしたが、時効を迎えた事件を追う人は少なくないと聞きます。貴女もそちら側でしたか?』(マックスであった。)『少し場所を移しましょうか、即席で任務をでっち上げて来ましたので帰還は緩やかでも許されます。……珈琲はお好きですか?』(彼は簡易的なパトロールの任務申請書を君に見せて、そこにしっかりマックスと君の署名が書き込まれている事を確認させる。声はどうにも無機質で抑揚が殆どない事には変わりないが、確かに人間と似た温度がそこにはあった。もしも彼がが受け止められる何かがあるのなら、受け止めたいと思ったのかもしれない。君も、そうだったのだろう?)   (1/10 02:30:34)