ハリィ・バンホーテン > 『よーし。フライト時間だぜ豚野郎(ピグレット)。昼飯は食ったか?神様にお祈りと、あー……後、便所は済ませとくのを推めるぜ。漏らしても生憎、オムツは買いに行けねーんでな。』ひゃは、と通路に響くような悪趣味な笑い声を上げながら、支部内の適当な一室を間借りする形で装備を点検しつつ相棒を見やる。ワイヤーを通した大量の手榴弾、明らかに対人用ではないとわかる大型の地雷、シリンダーを愛おしげに撫で回してからかしゃん、とスナップを効かせて38口径の鉛を放り込んだ回転拳銃。これから向かう場所はピクニックでは無いのは明白だ。『ターゲットはマンティス、悪趣味なシリアル・キラーだ。十字架と聖なる釘の出番だな。出現した場所は農村部、幸いにも人がほとんど居ねーってんで被害者は今のとこゼロ。別件を装って避難誘導自体は済ませてあるらしい。』要約すると、これからやるべきことは一択である。『___よーするに後はすき放題暴れて来いって意味だろ。後始末は奴隷やらに任せときゃ、この世はするりと片付き申すのさ。』現場に行き、標的を撃滅せよ。準備はいいかい?と、彼女は飢えたコヨーテのような陰惨な笑みを浮かべながら君に問うだろう。 (1/10 15:20:04)
鴨葱乙里 > 『マンティスは非常に素早い生体を持っている。君では……死んでしまうよ。』ハリィ・バンホーテンのペアと誰にするかという緊急会議に名乗りを上げたのは私だった。止血ができない身体であることは周知だったから、ある局員が口ごもりながら私を静止した。……それは、そうかも。だけど恐らく彼は、第8小隊技術班ハリィ・バンホーテンのプロフェッショナリズムを知らないのだろう。彼女は兵器フリークの、覚悟も技術も伴った一騎当千。本当は彼女だけでも十二分の戦力があるのだろうけれど、前のめりで猪突猛進なところが唯一の不安要素。自分には何の戦闘力も無いことは解っていたけれど、彼女のブレーキを操れるのは8番小隊の中じゃ自分だけだという自負だけが乙里にはあった。「大丈夫です。ハリィさんが居ますから。……ハリィさん、一度でも傷を追えば私の致死率はちょっとやそっとじゃどうにもならないかも。絶対に、守ってくださいね。」 (1/10 15:56:22)
鴨葱乙里 > ───────この時、『死なせるな』と『死ぬな』は同義になる。お荷物の一つでもないと、彼女のアクセルはぶっ壊れてしまうに違いない。オーライ。良き【足手まとい】になりましょう。局員の静止など袖にして、ハリィと乙里は準備を始めるためにその場をさっさと後にしただろう。男の人たちなんて今はお呼びじゃないの、なんてつれない顔をして。(……それに、ハリィさんはああ見えて繊細かもだから。)身を守るのは、あなたの役目。心を守るのは、私の役目。そして二人の共通点は、死への覚悟がとっくに決まってる事。違う?……ほうら、アルマデルの人事部も伊達じゃない。8番小隊は、クジ引きで出来上がった学校の、寄せ集めのクラスとは訳が違うんです。 (1/10 15:56:27)
鴨葱乙里 > 「準備おっけい、座標確認。転移ゲートを開くよ。臨戦態勢は………」「大丈夫みたいだね。」さあ、辺りを見回している暇などない。転移を完了すればすぐ、目の前には二人の女に相手をしてもらう、本日のラッキー・ガイが居ることだろう。 (1/10 15:56:32)
ハリィ・バンホーテン > 『死ぬか死なねーかで頭を使っても仕方ねぇ。そんなもんは、コイントスみたいに指先ひとつでくるんとひっくり返るもんさ。……ただ、子猫ちゃんひとり育てきれねーほど耄碌してもねぇからな。多少は庇ってやる。生命保険の受け取り先は生憎……僕じゃねぇ。死なれても死体袋(ボディバッグ)が増えるだけだ。そりゃ、よろしくねぇ。』せいぜいくたばらないでいてくれ、衛生上良くない。と憎まれ口を叩きながら小さく手を振る。守ってやるよ、生きて帰ろうな、なんてことは口にしない。そんなことを言いあって、最終的には死んでいくなんて山ほど見た。ただ、死んでしまったら迷惑だから____多少手は差しのべる。そのくらいなら口にできる。 (1/10 16:24:24)
ハリィ・バンホーテン > 『……へぇ。いい感じのフゼイってのをしてんな。オトリ、アンタの好みだったりするかい?……そうなら美的感覚は疑うけどな。』そこは、見渡す限りの灰色だった。夕暮れに微かに照らされた枯れ草の茂る田畑や、巨大な恐竜の化石のようになった深い森が、乏しい街灯を今にも踏み潰してしまいそうなくらいの質量を持っている。人間の目と脳はあまり関係ないのだろう。バンホーテンには、この風景が黒を多分に混ぜた灰色のように見えた。標的の足音が風にまじり微かに聞こえる。巨大なカマキリのようなあの図体がどうして今さっさと見渡せないものかは不思議で仕方ないが、熊がすぐ目の前に来るのを気づかないという事例もある。そんなものなのだろう____『ハニー、探すのはアンタの役割だ。息を殺して、息を殺した呼吸を聞き取りな、ブギーマンと追いかけっこするみてぇにだ。』ハンドシグナルで、空から探してくれと述べる。自分の能力は____見つけるには不便だから。 (1/10 16:24:35)
鴨葱乙里 > 「……もうっ、ハリィさん!」(余裕たっぷりの軽口を困ったように窘めて、立てた人差し指を口元に当て、少しボリュームを落とすようお願いをする。かすかな音から近くに居るらしいマンティスに最初に気づいたのは、ハリィだった。)「……了解。でも、一度でもマンティスからのエイムを受けたら私は逃げられないかも。ハリィさんの兵器のどれかを使って、気をそらすように誘導できますか。その間に私は手頃な屋内へ入り込んで、森にいる鳥を使役してみます。……鳥類は大きな音に反応して飛びます。なるべく派手な音がいいかも。ハリィさんの誘導後、私達は安全地帯を確保。」辺りを見回し、屋根に登ることができそうな家を指し示すように、立てた人差し指を一通りぐるりと廻した。「……後は、通信機で連絡をします。」そう言って、乙里は早速ハリィの元を離れた。 (1/10 16:49:19)
ハリィ・バンホーテン > 『……ALL Right!』ばすん、と破裂音が鳴る。水を打ったような、深海の中を思わせる寒村に放たれた拳銃の銃声は、何キロも果てまで遠く遠く響いていくようだった____なんて感傷は一瞬で終わりを告げる。波涛の砕け散るように飛び立った鳥の羽音に混じり、草木を薙ぎ払いながら直進する巨影。蜘蛛、あるいは蛇。または蠍が近いだろうか。重さを感じさせない、ひとつの丸太のような形をしたアメーバ質のそれが動き回るかのような挙動。『___あの神様は、時速40kmで走り、巨大な鎌で剣戟を、銃撃を受け止め。人間をダルマにして楽しんだり、切り刻んで殺したりしてるんだろう。……なら、仇討ちをしようぜ。僕らが来る前に殺された奴は"""今この村に"""いねぇって言うだけだ。誰かしら居ただろう可哀想な奴らのために_____な。』 (1/10 17:13:01)
ハリィ・バンホーテン > それが段々とこちらに迫っているのを耳と目と、後は野生動物的な勘だろうか。そうしたもので………僅かずつ聞き取る。ただし、それはあくまでこちらに来るのが分かるだけ。詳細な位置までは無論不明だけど。『オトリ_____ッ、見つけたか!?』鵜の目鷹の目とはよく言ったもので____それを見抜く彼女を信じて、ワイヤーに繋がれた手榴弾をカバンから鞭か蛇腹剣かのように引きずり出しながら、叫ぶ。接敵まで………何秒か。その一手の誤りが命を奪うのを百も承知するからこそ、彼女を信じてギリギリを走るのだ。 (1/10 17:13:04)
鴨葱乙里 > バササッ……破裂音と共に数羽のカラスが飛び立つ。ハリィの初動は恐ろしく早かった。能力【禽息鳥視】発動。灰のキャンバスにスパッタリングされた墨のような、風景でしかなかったカラスのうちの一羽は隊列を乱した。翼を広げ、上昇気流と共にソアリングして高く飛び上がる。カイトの繋がった糸先へ、羽ばたきを停止し滑翔する。「……はぁっ、はぁっ……」───────ブツッ──────「心得ましたッ!」通信機からは、乙里の荒い息と駆け上がるような足音が聞こえてくるだろう。畑の近くにあった小さな煉瓦の見張台の上に、乙里は到達する。「……おいで!」一羽のカラスは乙里の右腕に嵌められたエガゲにふわりと止まった。【ライセンス:方角認知】マンティスと貴女の位置を確認する。「……ハリィさん、七時の方向です!───────六秒で、始末してください!」 (1/10 17:37:42)
ハリィ・バンホーテン > 『オーケイ、いいタイミングだ。ベッドの上以外じゃ、なるだけ早いってのはいい。いいことさ。やつを月の向こう側まで___吹っ飛ばす。』風を巻いて振りかぶられる大鎌。彼(マンティス)は、セオリー通り、それがカミサマとして繰り返してきた当たり前を思い浮かべたことだろう。この人間(いきもの)に自分の鎌を振りかざせば、腕や足が飛び、無様にもがいている姿を鑑賞できる。きっとそう考えた。考えたからこそ____死因になった。振り上げた関節にめがけ、遠心力をもって投擲されたワイヤー付きの手榴弾。その手元を引き寄せれば、かつん、と鳴子のようにお互いが触れ合い_____その数は【産む】のコードを刻まれたレリックの見出す摂理に従い急速に_____増殖する。『____最初に狙う必要があったのは……頭だったな。』 (1/10 18:04:51)
ハリィ・バンホーテン > 手榴弾という物を理解しているか否かは別だが、巻きついた何かが卵でも産卵するように増えたことによる、異常事態と危険信号を受信し、軌道を捻り、慢心を捨てて頭に断頭台のように刃は向かう………が。『張り裂けろ____硝煙皇女(レイナ・デ・ラグリマ)ッ!!』それより早く、バンホーテンの背中を滑走路のように飛び立った大きめのラジコンに満たないくらいのサイズの双発機が、その腹に牽引したミニチュアサイズの爆弾を投弾し___閃光と熱が、飛散した。手榴弾の同時起爆に加えることのそもそもの爆撃を足した爆破は、一身にゼロ距離から浴びせれば当然理不尽なほどの破壊力を産む。『六秒_____かからなかったか。なあ、数えてたかいハニー。』 (1/10 18:05:05)
鴨葱乙里 > 休みなく訪れる爆発音に乙里は耳を塞いでしゃがみ込んだ。この音を聴けばもう、ハリィ・バンホーテンの勝利を確信したと言っても過言ではない。飛び立ったカラス達がすべて森へ帰り、静寂が戻る頃。通信機から貴女の声がした。『六秒_____かからなかったか。なあ、数えてたかいハニー。』「……ええ、ハリィさん。およそ四秒です。タイマーウォッチを使っていたわけじゃありませんから、間違ってるかもですが。……お疲れ様でした。イーコールを採集して帰りましょう。」通信機をポケットにしまいこみ、見張り台を駆け下りる。「いいニュースと悪いニュースがあります、ハリィさん。」にっと笑って、洋画みたいな話し方をする貴女の真似をしてみる。「良いほうは、私もハリィさんも傷つかず、討伐に成功した事。」「悪い方は……………この後片付けを、これから一緒にやるってことです。」〆 (1/10 18:18:58)