雨夜鳥&レイ

【ブラックデー】

雨夜鳥 志乃紀 > (事務棟内部の小さな談話スペースは、いくつかの椅子とテーブル、自販機やゴミ捨て場が置かれたちょっとした憩いの場だ。研究合間の小休憩、誰かとの待ち合わせや、ちょっとした雑談に用いられるこの空間に、彼女もまた一人佇んでいた。)「……もう、そろそろ?来る、かな、」(自販機で買った熱いココアを両手で包み、キョロキョロと落ち着かない様子であたりを見渡して。机上に用意した黒い包みのプレゼントをちらちらそわそわと確認しながら、彼女は君を待っていた。)(待ち合わせのドキドキは、まるで小さな初恋みたいに。)「ふー……ふ、えへ」(熱いココアを冷まそうと、ペットボトルの口に息をそうっと吹きかければ、ほぅ、と低い音がひとつ。彼女は楽しそうに目を細め、もう一回、またもう一回。……もう冷ますという目的なんてすっかり忘れて、気分は一人の音楽家。ほー、ほほ、ほー、ほー。)「あ、」(そんなことをしていれば、いつの間にか来ていた君に気付くのが遅れてしまって。)「れいれい!あの、えへ、……あの、えと……おはよ?」(何でも無かったようにペットボトルの蓋を閉め、ちょっとすましてご挨拶を。……おはよう、なんて時間でもないけれど。)   (1/19 13:18:43)

レイ・ラベット > [しのぎさんが気づかなかったのは、きっとレイが向かいに座らなかったからでしょう。かくれんぼみたいに後ろからそおっと近寄って。何してるのかな、なんて手元を覗き込んで。小首をかしげれば、桃色のふわふわとした猫毛が重力にしたがって、左肩のほうへ揺れながら落ちました。ほぅ、ほぅ、ほぅ。反響する空気の音といっしょに、ゆらりゆれる湯気はしのぎさんの鼻先をかすめるでしょう。ただの湯気なのにどうしてかそれがくすぐったそうで、冬の妖精がしのぎさんの鼻先をほんのり赤くお化粧したような気がして、レイはくすっと笑いました。]   (1/19 13:45:47)
レイ・ラベット > 「あ、」「れいれい!あの、えへ、……あの、えと……おはよ?」[しのぎさんは、ようやく気づいたみたいです。こんなにも無防備なのに、カーディガンに隠された手の内はちょっとだけミステリアスで。フォスフィフォライトの透き通った眸で見つめながら、レイは隣にちいさく腰をしずめました。]『んへへぇ。おそくなっちゃった...かな?おはよぉ、しのちゃんさん。』[しのぎさんの声は大気を揺らさない、白い息みたいに聞こえました。それにくらべれば、レイの声はほんのすこうしだけ、中性的な揺らぎがあるでしょうか。声変わり前のおとこのこの、まだどっちにもなりきれないような....幼い、幼い声でした。]   (1/19 13:45:56)
レイ・ラベット > 『あ........も、もしかして、それ...ぼくに?....どうしよ、ぼく、なにももってきてないや。ごめんなさい、しのちゃんさん。』[ふと机の上を見て、レイは頬に両手を当て、むにぃと手のひらをしずみこませて言いました。]   (1/19 13:46:02)

雨夜鳥 志乃紀 > 『んへへぇ。おそくなっちゃった...かな?おはよぉ、しのちゃんさん。』(ぱちりと合ったその瞳はまるで、否本物の宝石の様に美しいと、彼女は夢を見る少女のように想うのでしょう。揺れる髪も綺麗な瞳も、くすぐるみたいなその声も。なんだって彼女には、ほかのなによりも特別愛おしく、綺麗に映るから。) 『あ........も、もしかして、それ...ぼくに?....どうしよ、ぼく、なにももってきてないや。ごめんなさい、しのちゃんさん。』(そんなことを言われてから漸くはっとして、思い出したように立ち上がる。)「ん~~~…………っ」(ペットボトルを机上に置き、彼女は君に腕を伸ばす。溢れる愛しさと感謝と、どうしようも無い感情のまま。もしそれが叶ったなら、彼女は君をほんの少し苦しいくらいに強く、強く抱き締める事でしょう。)「いーの、……いいの。“この間”、とってもとっても、“うれしかった”。」   (1/19 14:08:00)
雨夜鳥 志乃紀 > 「だから、ありがと、ね。れいれい。」(置き手紙、プレゼント、それから。彼女は君に感謝したってしきれないくらいなのだ。だから。)「うん。これ、れいれいにプレゼント。……ありがとね、と、だいすきと。」(腕をそうっと君から放し、彼女は包を手に取って、君に手向ける事でしょう。)「これからも、よろしく、ね、って」(彼女はふわりと笑ってみせた。包の中身は、君を模した、手のひらサイズの編みぐるみだ。【器用、手芸】そのクオリティはそれなりに高い。きっと他の誰が見たって君だとわかるだろう。)「その……黒いのは包だけだから、ブラックデー、ちょっと違うかもだけど……その。」「危険なことも、大変なことも、きっとたくさんある、から。」「忘れないように、悲しくないように。……消えちゃわないようにの、おまじない。」   (1/19 14:08:09)

レイ・ラベット > 『しのちゃん、さん.......わ、ぷ....』[ほそく華奢な腕で、けれども力強く抱き締められて、レイはほんの少しおどろいたようにたじろぎました。]『......この間.....』「というのは、しのぎさんに武器とお手紙をわたしたあの日のことでしょう。喜んでくれたのが、あんまり嬉しかったからなのでしょうか。レイはすこしだけ泣きそうな顔になってしのぎさんの肩に顔をうずめると、ちいさく笑いました。」『....んーん。しのちゃんさんのこと、しんぱいだったから。ぼくも、こわいこと、いっぱいあったから....よかった、よろこんで、くれて。』[ちらり、談話室を見渡せば昼下がりの柔らかな日差しが、窓からさしこんでいました。ねむっているひと、お勉強をしているひと、二人みたいに、お喋りしているひと。談話室には、いろんなひとがいて、いろんな営みをしています。その営みが壊されるようなこわいことも、このアルマデルにいる以上、レイも、しのぎさんも、きっと覚悟はしているのでしょう。]   (1/19 14:38:59)
レイ・ラベット > 『....ん.....』[しのぎさんの腕が緩められ、そうっと離れて差し出された包を受け取りました。上目遣いで顔を見ながら、すこし照れくさそうに包みを開けると。]『...わっ....』[その中にいた小さなあみぐるみを、手の中にちょこんとのせ、レイは嬉しそうに頬ずりをしてみせました。]『ありがと...しのちゃんさん、...じゃなくて、...しの、ちゃん。...えへぇ、ぼく、すっごくうれしい。』[慣れない呼び方に、少しだけとぎれとぎれになりながらも、そう答え。忘れないように、消えちゃわないようにという言葉に、喉を小さく鳴らしました。]『.....ん。....』『しのちゃん、あの....ね。』[きょろきょろ、もう一度部屋の中を見回して。不安そうな顔を、しのぎさんに近づけました。]『......相談.........しても、いいかな。』『......ぼく、狙われてるみたい、なの。』   (1/19 14:39:06)

雨夜鳥 志乃紀 > (嬉しそうな君を見れば、彼女だって嬉しくて。やわくあがっていた頬も早鐘をうっていた胸も、それを見るだけでちょっぴり大変なくらい。強い感情は重くなり、彼女の下腹部を強く強く押さえつけながら、それでも彼女の喉から声になろうと首をもたげてやまないの。)「わたしも、すっごくうれしい。……えへ」「こっちはね、わたし。れいれいとおそろいなの、かわいいでしょ」(先ほどまで座っていた椅子に腰を下ろし、彼女は自身のカーディガンのポケットから、試作品の自分の編みぐるみを取り出した。『こんにちは、れいれい』なんて声を当て、その手をちょっぴり振ってみせたなら、彼女はちいさな子供みたいにその編みぐるみにテーブルの縁を走らせて、にへ、と小さく笑うのです。)「てってってってって……えへぇ」(人肌程度に冷めたココアを一口あおり、彼女はほんの少しだけ身を乗り出す。人の少ない所とは言え、ほんの少しだけデリケートな話ですから、小さく声を絞って。)「あぁ……この間言ってた、ストーカーさん、だっけ」「れいれい可愛いし、優しい、から。」   (1/19 15:21:30)
雨夜鳥 志乃紀 > 「ハンカチ、ひろってあげただけ、なんでしょ?」「勘違いって、なんか、ね、やだね。」(話を聞かれても良いような『ちょっと怖いけどあり得る話』にすり替えて、心配そうな顔を作る。【ARKの人間がアルマデル内に潜んでいる】と言う話は、非戦闘員の彼女でさえもよく耳に挟むこと。……もし君の相談がそれとは違っても、自分たちがここの職員である以上、相手がそれである可能性が最も高いのは事実でしょう。大事な人が傷つくのは厭だなぁ、なんてぼんやり考えながら、彼女は君の手にそうっとカーディガンの袖を伸ばし、それ越しにでも手を握ろうと試みる。)「よし、よし。ストーカー撃退法、ってね、この間動画みつけたの。一緒にみよ?いやほんないけど……」(そんな風に言いながら。彼女は右手で携帯端末を操作して、動画配信サービスのなかからそれらしい動画を再生した。流れる音は、喧しくない程度の音量で人の少ない談話室に響く。一緒に画面を覗こうと彼女は君にぴったりと肩を寄せるのでしょう。)(年頃の子供達の、ちいさなちいさな保身のお話。彼女の声を聞けるのは、肩を寄せている君一人だ。)「……、相手とか、なにか、その。分かってることは、ある?」   (1/19 15:21:48)

レイ・ラベット > [テーブルの上で行われるささやかな人形劇は、なんの邪気もない無垢な無垢なものでした。ほんの少しだけ、あみぐるみ達が羨ましくなりそうです。]『.....え?ストー....』「れいれい可愛いし、優しい、から。」『ううん、しのちゃ、』「ハンカチ、ひろってあげただけ、なんでしょ?」『.........うん。.....そう、なんだ。』[けれど、あみぐるみ達の時を止めたのもまた自分、でした。さいしょは要領を得なかったレイも、しのちゃんの心配そうな顔に、ふとその意図を察して、口裏をあわせてゆきます。自分を模した毛糸のかたまりは、笑っているのか、悲しんでいるのか、わからない表情をしていました。]『.....うん、ありがと。みる。』[二人の声はその時、携帯端末から出る音に遮られてほんの少しだけ、フィルターがかかった白いもやのようになるでしょうか。]『.....ん....わかってる。けど、ほんとにそうって、きまってないから。』   (1/19 15:52:59)
レイ・ラベット > [相手についての情報を、しのちゃんに明け渡してしまうのは少しあぶないと思いました。彼女よりは、よっぽど自分のほうがたたかうのに向いている。たたかう覚悟が、ないわけじゃない_____なんて、辻褄をあわせるのなら、そんなところでしょうか。]『....しのちゃん、ぼくね。もしかしたら_____ううん、こんなことが、なかったとしても。......なんだか、かんたんに....しんじゃうような、気がするんだ。』『なんかね、いのちが、ふわあって。じぶんで、つかまえられないの。....こわいんだ。』[人を頼るのは、これで何度目になるでしょう。自分の身は自分で守るべきだと、レイは教えられたことすらもありません。]『もし______ぼくに、なにかあったら..........』[子供の特権を使うみたいに、甘えて、頼って。こんなふうにいろんなひとにいのちを明け渡していくことを。]   (1/19 15:53:14)
レイ・ラベット > 『.........いっかいだけ、しのちゃんのこと、たよっちゃ......だめかな。』[パパは、どう思うのでしょう。]『........ごめんなさい。』[【あなたが、ことわれないことを知っていながら。】]『ぼくひとりのいのちだとおもったらね。きっと、ゆうきがだせるから。』[そんな事を、口にするのでした。]   (1/19 15:53:18)

雨夜鳥 志乃紀 > 「うん。……、ん。」(彼女は視線を画面に向けたまま、小さく小さく相槌を返す。そっと触れた手をきゅうと握ってしまうのは、隣に一緒に居るはずなのに、何だかちょっと、ひとりぼっちみたいに寂しく思えてしまったからだ。君の不安が伝染した訳じゃない、君に共感したわけじゃない。)「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」(ただ、彼女もそれを知っているからだ。)(彼女は至極柔らかい声で……否、平坦な浮かんだ声で、そんな風に心をあやす。)(彼女には重さが分からない、彼女には強さが分からない。それはきっと、彼女自身が、彼女の胸の中にあったいしを、投げ捨ててしまったからだ。のんちゃん、かささん、他にも沢山。かつて自分の愛した人たちが自分の元から去ったとき、自分など捨てて彼らと共にいきたいと願い、浮かんでしまうことを願ったからだ。)「だいじょうぶ。……だいじょうぶ。居る、から。」(彼女は君の過去を知らない。知ろうとも思っていないし、知ったところでどうなるとも思っていない。ただ。その命の軽さとどうでも良さと、残酷さと無意味な軽薄さを、彼女はきっと、他のひとよりも知っている。)   (1/19 16:26:36)
雨夜鳥 志乃紀 > (彼女は【代替の器】。)(だれよりも、誰かの為に生きて、死ななければならない存在だから。)   (1/19 16:26:44)
雨夜鳥 志乃紀 > (動画が終わったのを確認したなら、彼女は端末を机上に置いて、もう一度君を抱き締めようと腕を伸ばすことでしょう。目の前で消えてしまいそうな君を、大事だった、守れなかった過去に重ねて。) 「れいれい、編みぐるみ、私のをお守りに持ってて。そしたら、きっと、わたしの約束、わすれないから。」(「自分の身は自分で守るべき」だなんて、君が知らなくて良かった。)「あのね。たくさん沢山、たくさん……、たくさん、たよっていいよ。」「わたしはきっと、れいれいより弱い、けど、でも、でもね、何も出来ない、訳じゃきっと無いの。」「だから、」(死んで欲しくないと、隣で笑っていて欲しいと、たった一度でも願ってしまったものだから。彼女はきっと君を捨てられない。)(悲しい悲しい世界の雨から、逃れるための雨宿り。あんまりスペースは無いけれど、詰めれば二人は入れます。)(『あのときの、わたしなら』。)「わたしが、きみをまもるよ。」(きみの死に顔は、もう見たくないの。)   (1/19 16:26:56)

レイ・ラベット> [しのちゃんに、もう一度ぎゅっと抱き締められて、レイはほうっと安心したように息を吐きます。体温を感じたくて背中に腕をまわす、けれど。]『......うん。....ずっと、もってるね。ずっと、だいじに。』[もう二度と、わすれないように。]『....えへ、ぼくばっかり、話しちゃったね。...そろそろ、おしごと、もどろっか?』『つぎはしのちゃんの話も、ききたいな。』[その思い出をすこしだけ、わけてくれるなら。次は自分が守る番になれそうなのです。]〆   (1/19 16:38:55)