木靴下@カフカ>
(──────────この男に動く心臓なんてのはない。)(だから、貴方にとっちゃあちょっとだけ、残念かもしれない。) (ご自慢の尻尾も肩からずり落ちた上着の中に隠して、特徴的な四本指もポケットの中にしまい込む。)(そうしていれば背の大きさで驚かれる程度に済む。……普段なら。)(ざわざわと、拾い切れない小さな言葉の集まりはノイズとなって実に煩わしい。人が密集しているからか、温度のある肉の集まりから発せられる熱が肌を刺すような冷たい気温でさえ温く感じさせる。)(そうなっている原因は果たして自分なのか、それとも隣にいる真っ黒な貴方なのか。)「………エスト。」「ごめん。結構、探しては見たんだけど君に合う服が見つからなくて。」「なら作ってもらおうと考えたんだけど、何せぼくはセンスが悪いから何を選べばいいのか分かんなくて。」「その代わり、知り合いからいい生地屋を教えて貰ってそこで選んで作ってもらおうと思うんだけど……【プレゼント】はそれでいいかい?」(任務で何か功績を上げたのか。はたまた貴方の単なるお願いか。)(どちらにしたってカフカはそれを酷くあっさりと了承しただろうし、それに対して異様なまでの長い期間を要したはずだ。)(結果は《見つからなくて。》……その言葉でまぁお察しだとは思うが。)「どうせなら、普段使いできるものがいい。…君は普段その黒兎の姿なんだから。」「勿論ぼくの独断と偏見だ。君がたった一夜の時の為に着たいものがあるのなら、今からにでも行く先を変えるけれど。」「……如何かな。」(気だるげで、眠そうな雰囲気を薫らせる細い瞳。…ビー玉のような透明感のある青い瞳孔は貴方を見上げていた。) (1/22 12:18:26)
エスト・レゼルヴァ>
『その代わり、知り合いからいい生地屋を教えて貰ってそこで選んで作ってもらおうと思うんだけど……【プレゼント】はそれでいいかい?』「………っ!?、」(目をパチクリと2,3度瞬いて君の言った言葉の真意を測りかねていた。カモフラージュ用に持ち歩いていたヘリウムガスでぶくぶくに肥え太った風船をいくつも片手に束ねて君の隣を歩いていた彼女は思考を整理しながらも駆け寄ってきた子供に風船を手渡してひらひらと手を振って見送る。それくらいの余裕はあるみたいだ。兎角、あまりにも理解しがたい、というより、予想できなかった事実。確かにプレゼントをおねだりしたのは自分だし、デートに似合う服を、なんて小洒落た物をねだったのも自分だけれど。ぽかん、としたまま君の顔を見つめ、冗談じゃあないだろうな?と言わんばかりに背を丸めて地面に片手を着いて身を屈め、君にその獣臭い顔を近づける。)『どうせなら、普段使いできるものがいい。…君は普段その黒兎の姿なんだから。』『勿論ぼくの独断と偏見だ。君がたった一夜の時の為に着たいものがあるのなら、今からにでも行く先を変えるけれど。』『……如何かな。』(正直、ものすごく意外だった。職場で見る君はあまりにも人との関わりを避けているような、もしくは理解し合う事を諦めている様な、そんな印象が在ったから、自分の為にそこまで考えてくれていたなんて思うと、やっぱりなんだか、この感情はまるで、)「く、ふッ!たーいちょー!!そんな事考えてたのかぁっ?私の為に?ふふふッ、それはなんとも、ふふっ、うっれしーなあ!?」(…そう、嬉しい。彼女は感極まって両手で君を持ち上げれば子供にするそれのようにぴょんぴょんと宙へと投げ放つように高い高いして見せるだろう。その表情はニィっと実に嬉しそうだ。)「私は元々ヒトなんだから、この呪いが解けた後で着るためにって思ってたけど、そうか、ふふ、オーダーメイドねえ、それなら今からでもお洒落できるもんなっ!流石隊長!そいじゃあ、その店に行こう!」(高い高いを終えて君を抱き上げた状態のままニマニマと至極嬉しそうに笑みを浮かべながらそんな思考をそのまま言葉に出して一度ぎゅっと嬉しさはみだしハグを君に施してからまた地面へと返してあげるだろう。) (1/22 12:36:22)
木靴下@カフカ>
「ぅ、お。」(正しく、〝跳び上がる〟ように喜ぶ貴方に空中へと投げ飛ばされようものなら、流石のカフカも圧に潰れたような苦しそうな声を上げるかもしれない。)(だが、相も変わらず表情だけは乏しく。その瞳をほんの少し開くだけに終わった。)「エスト、目立つ。」「此処では、やめなさい。」(外では貴方、着ぐるみという体なのだから。)(流石に2mの男を空中に放り投げるのは人の範疇を超えている。)(それを流石のカフカも察してか空を飛ぶ最中、舌を噛まないように注意しながら短めの単語で貴女に伝えることだろう。)(……抱き締められる時でさえ彼は車に轢き殺された蛙のように「ぐぇ」と、小さな悲鳴をあげた。)(けれども、その行為自体に拒絶的な態度は取らなかった。寧ろ貴方の上機嫌な態度を見て、唯一感情表現のできる尻尾を服の中で愉快そうに揺らしていただろう。)「うん。じゃあ、その店に行こうか。」(貴方が快くそれを了承してくれたのなら、お得意のように喉を「くるる」と鳥のように鳴らして、貴方の少し前を歩き始めた。)(教えて貰った店に着いた時、店の両開き扉をくぐるのに多少苦労したという話はさておいて。)(事前にカフカが手立てを打っていたのか、店員は貴方の姿を見て多少訝しくその瞳を細めながらも、「いらっしゃいませ」なんて言うでしょう。)(巻かれておかれた様々な種類と色の布。質感も伸縮性もその布で多種多様である。これは確かに、センスの悪いカフカが悩むのも無理はない。…何せ多いんだもの。)「えっと、前に来た時言われたのが…これが今年の流行りのカラーを使った布で、こっちは今人気のもの。着心地がいいものならこっちの……。」(それを全部覚えているということは、それだけ貴方への贈り物を考えたということになるのかしら。)「どれがいいか、好きに選ぶといい。」「考えたけど、ぼくにはよく分からない。」(誰かのために着飾る、なんてことが分からないから分からないなりに考えて。沢山頭を悩ませて、結局妥協点しかあげられなかったけれども。) (1/22 13:28:14)
エスト・レゼルヴァ>
「ほぉー…、まあ、そりゃあ、そうだよなあ。」(店内で出来るだけ物を壊さないように縮こまって辺りを見回す彼女ははたと納得してしまった。というのも、勿論あまり人間への擬態が上手くない君じゃセンスが悪いと云うのも仕方ないし、そんな君が選びかねるのも無理はないという事、それから、お互いに今はヒトですらないのに、そんな自分たちだけでファッションを語るなんて片腹痛くて救急車を呼ばれてもおかしくない。それでも、事前にこの店に来て下調べまでしてくれたのは既に君の言動で十分に分かるわけで、それはやっぱり、嬉しいわけだ。)「それじゃあ、店員さん。この色男の隣に並んでも恥ずかしくないドレスを仕立ててくれ。」「ワインレッドを基調としたクラシックな、あー…毛皮があるから生地は薄めでいい、通気性を加味するなら多少の露出も厭わない。イケそうか?」(ふわり、と気に入ったワインレッドのパリッとした生地を指先の肉球で撫でてから、ふと思い立ったように君の肩に腕を回してぐいっと引き寄せれば無邪気ににへらって笑みを浮かべる。君には悪いけれど、今の彼らでは流行にも今人気の柄も生地も着こなせやしないよ。彼らは、君らは、僕らは、この世界の主人公たちとは一線を画した蚊帳の外に居るのだから、君の心の中に居る君自身も、どこかでそんな言葉は吐いていないだろうか、ニンゲンゴッコなんて虚しいだけだ、って。心の何処かで諦めていたその感情が、ヒトでありたいと願う思いが、今日はなんだか久しく解凍されてしまったようだ。だから、人並みに弱く強く自身の足で立っている君に憧れの様なものを抱くのも、きっと間違いではないのだろう。) (1/22 13:51:26)
木靴下@カフカ>
「…………??」(カフカはその首を傾げた。本当に良いのかと確認する為か。もしくは単純に理解できなくて疑問に思ったのかもしれない。)(暫くカフカと貴方を交互に見た店員は「かしこまりました。」なんて言葉と共にかけるように店の奥側へと消えてしまう。)(さて、その裏側では何を言われているのやら。きっと耳触りの良い話じゃあないだろう。)(だからカフカは口を開いた。)「本当にあれで良かったのかい。」「何も、ぼくに合わせる必要はないだろう。」(デートに似合う服、なんて言われたものだからてっきりもっと可愛らしいものを選ぶとばかり考えていた。)(生憎、そんなものカフカには必要ない。だから貴方に選んでもらおうと思ったのだけど。)「変な気を使っているのなら別に、無理しなくていいんだよ。」(自分がいるせいでその選択になったのなら、カフカがそれを嫌がることくらい隊員の貴方なら分かるはず。)(もしそうじゃないとするなら…他に何が浮かぶだろう。)(カフカは暫く考えるようにして、結論が出たのかもう一度貴女に向き直った。)「君は『女の子』だろう。」(今は人でなくても。)「似合う似合わないじゃなく、着たいものを着たって誰も咎めやしない。」(だから、貴方を態々呼んで、お店にまで連れてきた。)(もしそれが、自分がいることで抑制されてしまったのなら、「ニンゲンゴッコ」を強く認識させてしまったのなら、カフカはそれを真正面から否定するだろう。)「ぼくを基準にされるより、君の好きなものを着ている方が、ぼくは見てみたい。」(着こなせないからなんだ。似合わないから着てはいけないなんて、どうして決め付けられる。)「……………………………………別に、君の選択を悪いと言ってる訳じゃあなくて。」(なんだか、自分を基準にされたことが言い訳のように思えて、疑問が浮かんだだけ。) (1/22 14:51:43)
エスト・レゼルヴァ>
「ははーん、私がお前の隣に立てるステキ女子になるのがそんなに怖いか? ふーん、お前は私に気を使って貰えると思っているんだなあ?そんなに自分に人望があると思ってるのか? へー、そりゃあこんなイカしたデートも思いつくさなあ。」(君がなんとも言い難い文句を言ってくるもんだから、茶化す様にニマニマと笑いながら君の両頬を片手の人差し指と親指でふにっと摘まんでやわらかな肉球でモニモニともみほぐす。これで多少表情筋も緩むと良いな。)「答え合わせをするか、まず、私はお前に気なんて使ってない。けど、お前の為に身体張れる位には慕ってると思う。それから、人望ももちろんあると思う。これだけ隊員の事を思った行動が出来てるんだから無ぇわけねえよなあ。そんで、最後に、」「…お前はもう少しだけ周りに期待しても良いんじゃないか?いや、期待って言い方は野暮か…正しくは、……主観だけで可能性を否定するのは自分の首を絞めるだけだって話だ。もしかしたらお前の云う『私の好きな物』を得る為には私がお前の隣に立てる自分になる必要があるかもしれないだろ?な、だから、もしもの時の為に隣空けとけよ?」(にぃっと笑みを浮かべてそっと頬から指を離せば店の扉を開けて匍匐前進の要領で小さな小さなドアを潜り抜けて外に出よう。オーダーメイドでこの大きさの物を作るには大層な時間がかかるはずだろうからな。) (1/22 15:26:23)
木靴下@カフカ>
(いつだって、カフカは貴方達を迎えて「おかえり」と言ってくれるだろう。愚痴の吐き場所になってあげるだろう。疲れた時、いつでも休める様にいろんなことを考えてくれる。欲しい物のために貴重な時間をたくさん割いてくれる。)(だけど。)「…………ごめん。」「〝隣は、無い〟。」(貴方にどんな真意があっても、冗談であっても、カフカは、それだけは真剣に伝えるだろう。)「かもしれない、じゃない。」「どんな理由があっても、どんな意味があっても、そんなもの、作らないで欲しい。」(いつだって一歩後ろに引いて、他人との境界に強く線を引いて、)(理解したくない。理解しないようにしているのは。)「……それだけは、【絶対】に。」(その顔はきっと、カフカより背の高い貴方じゃあ前髪に隠れて見えないかもしれない。カフカも顔を上げる気は無いのか、首を曲げたまま止まっていた。)
「─────────お腹すいてないかい。」(暫くの沈黙。)(その末で落ちた顔を上げたのはカフカの方だ。)「受け取りまで時間がかかるだろうから、……財布、渡しておく。ぼくは食べられないから君の好きなものを選ぶといい。」(貴方に投げられた革製の財布には色んなものを買っても困らないくらいのお金が詰まっている。そして、やけに真新しくて、全く使い込まれていないのがよく分かるだろう。)(普段から、持ち歩く癖はないようで。)「それに。」「あんまり長く一緒にいると、〝疲れてしまう〟だろう?」(───────────〖過負荷〗。)(彼の能力は自身の半径から15m内の全ての生命機械物体、あらゆるものに例外なく極度の過負荷を与えるものである。)(それには問題点があり、彼はその能力のスイッチを完全にoffにすることはできない。)(……別に、これのせいで一人を選んだわけでもないけれど。)「……《行ってらっしゃい》。」(一緒に隣を歩いてはいけない。)(与えられたものは傍においてはいけない。)(……全部、ダメにしてしまうから。)(別に、それを拒んで影響を受けたいのならカフカは好きにさせるさ。)(棺を蓋いて事定まる。…そこで終わるならそれだけの命だ。)(だからずっと言ってるんだろう。)(─────〝好きに選ぶといい〟って。) (1/22 16:38:38)
エスト・レゼルヴァ>
「……お前、あんまり私をムキにさせるなよ。」(例え、冗談であっても、そして、例え、本気であっても、どちらにしたって君のその反応はあまりに不服だろう。ごめんと前置きをされても彼女はむっとしてしまう。折角こうしてデートまでしたのに、折角こうしてドレスまでプレゼントしてくれたのに、)「おうおうおうおうおう!じゃあ聞かせてもらおうかあ?メシなんて良いんだよ!いざとなったらお前を食っちまうからな!こちとら雑食の黒兎だぞ、そんなもんは今はどうだって良い!」(ほうら、見た事か、君と同じように、彼女は強情で頑固者だ、恐らく、互いが納得するまでどれだけ疲弊しようが引く気は当に無くなってしまっている。口先だけでもYesと言わない限り、彼女はしかめっ面で君にぎゃいぎゃいと鳴き喚き続けるに違いない。)「いいか!?隊長!自分だけ特別だなんて思うなよ!お前の寿命がどうとか、お前の力がどうとか、そんなものは私は詳しくは知らない!けど、ヒトってそういうモンなんじゃないのか!?互いに気ぃ遣い合って心の何処かじゃコイツのこう言う処嫌いだなあ、とか思いながら互いに疲れたりしちゃったり、かと思えば大事過ぎて失うのが怖くて自分から距離を置いちまったり!!な!?お前も他のヒトを見ててそういう処あるよなあって思ったりしなかったか!?ヒトってのはなあ!多分そういうモンなんだよ!だからそれが悪いとか、そんな事を大袈裟に言うなとかじゃあねえけど………っ、だからぁ!何が云いたいかって云うとぉぉ………だあぁぁあああああッ!!!!」(そう、彼女は馬鹿だ、君と同じくきっと分からず屋の大馬鹿者だ。だから結局何が云いたいのか、どう伝えるのが正解なのか彼女自身見失ってしまったのだろう。伝えたい感情はあるが、それを真っ直ぐ伝えるにはまだ彼女はヒトに成り切れていないのだ。だから、もっと単純に感情を伝える為に人攫い顔負けの勢いと力技で君の身体を片腕で抱えて思い切り跳躍して見せるだろう。誰に見られようが関係ない、どうせ誰かがなんとかしてくれるんだろ、なら知ったこっちゃない。今はただ君にYesと言わせたくて仕方ないんだ。だから彼女は自慢の脚力で壁や屋根を蹴って恐らくこの周辺で最も高い鉄塔へと跳び乗るだろう。) (1/22 17:26:21)
木靴下@カフカ>
「エスト。」(水面に雫を落とすような淡い声だった。だからきっと、ムキになって叫びだした貴方の耳には届かなかったかもしれない。)(貴方はカフカを掴んで飛び上がった。きっと、抵抗もなかった。する気力すら浮かばなかったのかもしれない。)「……エスト。」(二回目の呼び掛けだ。)(少しだけ、声の重さが増した。今度は独り言と言うより、呼び掛けに近かった。)(それでも貴方は止まらなかった。)(目立つことさえ厭わずに、貴方は駆け出して、高い鉄塔の上へと登る。)(片目で見る街並みと、人混みが、どんどん遠ざかっていく。)(カフカが一瞬でも浮かべたのは支部への心配だろうか。隊長である自分がいながら、ここまで目立つ行為を許してしまった責任を問われるのだろうか。)(……いいや、カフカなら、そんな立場を気にするようなことなんて、考えたりしないだろう。)(いつだって色んなことを考えてる。…そんな頭にまず浮かんだのは。)
「ッ゛ッ─────────エスト・レゼルヴァッッッ!!!!!!!!!!!」
(珍しい、大声だった。)(風船が破裂するような衝撃に近い声。)(ここまで大きな声をあげるカフカを見たのは、貴方の記憶の中ではきっと初めましてだ。)(慣れない大声に初めてカフカは息を【乱した】。ぎゅうぎゅうと締めるように痛くなる胸元を抑えて、苦しそうに咳き込んだ。)(……その後、届くのなら貴方の頬に手を伸ばそうとするだろう。その顔に触れて、抱きしめてやろうとしてくれるはずだ。)(……触れたとして、心音はない。温度もない。)(──────産まれるべからずであるが故に。)「…………ぼくは、」「……ッ゛…………ぼく、は……!」(普段なら、言いたいことは口にする。)(でも、貴方は自分の小隊の隊員だ。…言葉は慎重に選ばなくちゃあ。)「………ぼく、…〖子供の面倒を見るのは、嫌いじゃない〗。」(何処から話したものか。)「………「おかえり」…って、言ってあげられる場所になりたかった。」「居場所も、行く宛てもないまま、歩き続けるのは、疲れるだろうから。」「……もし、外で居場所がなくなっても、変わらず迎えてあげれる場所が、あったらいいなぁって……。」(ひとつ。ひとつ。)(やけにゆっくりだ。)「…………でも、…そこに、【居続けてほしい】訳じゃない。」(ありのままで居られる場所を、そこに居て心地の良い場所を、きっとカフカは与える。)(だけど。)「……ぼくは、君達を、迎えてあげるけれど、それと同時に、ぼくを必要としないように育てる。」(貴方が四番小隊に入った時、カフカはきっと行ったはずだ。冷酷に、なんの感情も温度も宿さず。)(『ぼくが君に求めるのは礼儀じゃない。君がどこまでぼくを必要としないか、だ。』)(…………〝四番小隊(ここ)〟にいる限り、カフカは可能な限りで貴女を守り、貴方に自由を与え、それと同様に、可能な限りで自分を必要とさせないように辛く当たるだろう。)「ぼくは君達に、【一人で生きていけるようになってほしい】だけ。」(だから、自分を必要としないでほしい。隣を歩くと、そう言わないでほしい。)(自分の隣は誰にも空けないし、誰にも寄り添って欲しくない。)「ぼくは、特別じゃあないし、誰の特別にもならない。」(……彼の羽に守られながら、彼から狩りを学んで、そしていつか、巣立って。)(守ってくださいなんて言ったか。…って、貴方は言うかもしれない。)(それでも、上から任された以上貴方は自分の小隊の隊員であって、カフカにとっちゃあ、守って育ててやるべきな存在なんだ。)「……いつまでも、傍にはいてあげられない。」「…ぼくが居なくなるまでに、どれだけ遺してあげられるかわからない。」「……………………だから、………めいいっぱいわがままを言って、自分らしくあって欲しい。」「……………………せめて、それが、許される間は。」(彼は、帰るべき『家』であることを望んだ。子を守る『親』であることを望んだ。)(わがままを、言えなかったから。居場所を、得られなかったから。)(それで、それが終わったら本当に、)(─────誰も自分を必要とせず、自分を誰も必要としない時が訪れる。)(その時がきたら、本当に【無価値】になれる。)(望んだ孤独が、安らぎが訪れる。)(そしたら、)(────────ようやく、眠れる。) (1/22 19:02:12)
エスト・レゼルヴァ>
「……ッ、」(正直に言おう。彼女は驚いたのだ。自分から他人に触れる事は少なくはなかったにしても、誰かがその頬に触れる事なんて今までありはしなかったから。物理的にも心理的にも彼女の頬に触れたいと思う人間は今までいなかった。だからこそ、一本足らないその手の感覚に彼女は目を見開くだろう。そしてようやく、意表を突かれて状況を整理しようと思考を再開し始めた脳には君の声が届くようになる。)『ぼくは、特別じゃあないし、誰の特別にもならない。』(嗚呼、でも、それは、お前が決める事じゃないだろ。お前が成りたく無くたっていつの間にかなっちまうもんだし、誰も成りたくて成れるもんでもないじゃんか。)『……いつまでも、傍にはいてあげられない。』(そんなのも、結局はみんな同じじゃないか、人間には寿命が在って、こんな世界だからこそ、いつ誰が居なくなるか分からないからこそ、その短い余生をせめて輝かしい物にする為に思考するんじゃないか。)『…ぼくが居なくなるまでに、どれだけ遺してあげられるかわからない。』(________でも、その思考は表に出る事は無かった。何故なら彼女は時間という概念の残酷さを知っているから。“親友”の時計師が執着する時間という概念がどれだけ平等でどれだけ残酷か、彼女は身を以て知っている。)「………なあ、此処だと風が気持ちいいと思わないか?」(君の言葉を全て聞き入れてから、彼女は鉄塔の骨組みに掴まりながら地上に立ち並ぶ建造物たちを見下ろして呟く。)「私は多分まだ子供だから、隊長の言ってる意味がちゃんと理解出来てるか分かんないけど、……そうやって諦める理由を一生懸命探して、仕方無いって言い聞かせるみたいに幸せになる事への責任とか重圧とかに背を向けるラクな生き方をする事がオトナになるって事であるなら、私はずっと子供で良いと思う。」(彼女には心眼なんて物はない。だから、君の言葉の意図を正しく汲み取れているかは分からない、)(けれど、でも、だって、それは、彼女には言い訳に見えるんだ。自分が幸せになるよりも他人の幸せを願った方が楽なんだもんな、だってそうじゃないか、こんなに幸せでいいのかとか、自分なんかがって、思っちまうもんな。お前もそうなんじゃないのか?分かんないけど、そうなんじゃないかなって、思ってしまうんだ。________でも、その思考は表に出る事は無かった。何故なら彼女は時間という概念の残酷さを知っているから。“親友”の時計師が執着する時間という概念がどれだけ平等でどれだけ残酷か、彼女は身を以て知っている。)「………なあ、此処だと風が気持ちいいと思わないか?」(君の言葉を全て聞き入れてから、彼女は鉄塔の骨組みに掴まりながら地上に立ち並ぶ建造物たちを見下ろして呟く。)「私は多分まだ子供だから、隊長の言ってる意味がちゃんと理解出来てるか分かんないけど、……そうやって諦める理由を一生懸命探して、仕方無いって言い聞かせるみたいに幸せになる事への責任とか重圧とかに背を向けるラクな生き方をする事がオトナになるって事であるなら、私はずっと子供で良いと思う。」(彼女には心眼なんて物はない。だから、君の言葉の意図を正しく汲み取れているかは分からない、けれど、でも、だって、それは、彼女には言い訳に見えるんだ。自分が幸せになるよりも他人の幸せを願った方が楽なんだもんな、だってそうじゃないか、こんなに幸せでいいのかとか、自分なんかがって、思っちまうもんな。お前もそうなんじゃないのか?分かんないけど、そうなんじゃないかなって、思ってしまうんだ。)「な、ワガママ、聞いてくれるんだろ。私はさ、お前がペルソナだとしても誰も殺さないようにボコってでも止めるし、それで裏切り者たちの親分に殺されちまうんだったら、それに最後まで抵抗して最悪私も一緒に死んでやるつもりだ。お前が本当のバケモノになっちまうなら、止めるのは私でありたいって思うし、それでお前が死んじゃうんなら、私の声が聞こえなくなるまで抱きしめて、最後まで独りになんてさせてやらねえつもりだ。」(この鉄塔から見下ろす市民たちの一人一人を認識できるだろうか?少なくとも彼女には無理だ、米粒より小さく見える彼らの名前や思考や過去や憂いや罪や懺悔やこれから先の事すらも何も分からないし、何も知らないし、知ろうともきっと思ってない。けど、多分、みんな同じような雑念を抱えて、それでもこの狭い世界で生きているから、この大勢の米粒の内のひとりだって思えるんだ。自分以外にも同じような何かを抱えている人がいて、そいつらが平気そうにしてるのは気に食わないけど、でも、自分だけが変なわけじゃないと思うし、だからこそ、自分だけが何かを背負う必要だって無いって思ってしまうんだ。それは、無責任だろうか?もしもそうだとしても、貴方がそんな寂しい事を云うくらいなら責任感なんて無い方が良いって思っちゃうんだ。)「隊長、そんな風に云っちまうから、いつか自分を犠牲にして死んじまうんじゃねえかって思っちまったんだ。……つまり!そこまで言うなら私のこの我儘も聞いとけ!私はお前と一緒に居たい!それから!そんな寂しい事云ったお仕置きだッ!!」(彼女は全て語り終えれば君の頬へとがぁっと口を開いて牙を立てないようにはぐはぐと甘噛みしてみせるだろう。どうだ、もう唾液でべっちゃべちゃだ。お仕置きだからな、我慢しろ。) (1/22 19:32:53)
木靴下@カフカ>
(石膏のような冷たい肌も、巻き込まれた絹糸のような髪も、今や貴方の涎でべちゃべちゃだ。)(それでもカフカの表情は本物の石膏像みたいに動いてくれたりはしないんだろう。)「─────ぼく、一緒に死にたくはないなぁ。」(くるるる…。)(鳥のような音を喉から鳴らす。それが愉快であることの象徴なのか、はたまた困っている時に鳴らすものなのか。)(貴方のお仕置きを抵抗することもなく素直に受け入れながら、カフカはぼんやりとその言葉を口にした。)「いつか、エストを心から大切に思ってくれる誰かと出会えるといいね。」「いつか、メアリーがちゃんと居場所を見つけられるといいね。」「いつか、礼が自分を道具だと思わないようになればいいね。」「そういえば、新しく来たお姫様、まだ自己紹介もしてなかったなぁ…。」「………………大丈夫。やることはまだまだ沢山あるから。」「少なくとも君が生きている間は、隊長をやってると思うよ。」(───所詮、面倒事の押しつけに過ぎないけれど。それを悪くないと思ったのはカフカだ。)(四番小隊に所属する彼らの未来が幸せであればいい。その為に、まだ自分が必要ならカフカはきっと、そこに在るだろう。)(……諦める理由を、探しているわけでは決してない。産まれてくることができなかったから、それを願って、【奇跡】が起きてくれないかと願った。)(起きた。)(だから自分は今ここにいて、貴方と言葉を交わせる力を持った。…自分で願ったことを嫌だと思うことは、途中放棄で諦めることは、カフカはしない。)(四番小隊の在り方も、自分で始めたことだ。)(収拾は自分でつける。)「ちなみにエスト。ひとつ言っておこう。今回のこの件で目立つ行為をしたのでぼくは多分上から叱られる。君も多分それなりに怒られる。」「ので。」「どうせならその財布の中身がダメになる前に散々遊んで帰ろう。」「〖疲れたら〗、休憩でも挟みながら。」 (1/22 20:56:23)