外@ヴィオレッタ>
(──────『黄昏時』)(空色のキャンパスに朱色の水彩を薄く滲ませた時間帯でしょう。中庭の噴水は西日を惜しみなく吸い取ってキラキラと輝き、この風景だけ見ればとてもじゃあないけれど『イーコール』も『カミサマ』も、何も無い穏やかな日々が流れていると、錯覚してしまう人だっているんじゃあ無いかしら。それでもここ、『アルマデル』では。1人は研究対象に。1人は壁外調査へ。一人はカミサマへの好奇心に想いを馳せて。そして、1人は………………)『……あれ、ヴィオレッタじゃね……………』『うわほんとだ、………………何してんだろ………………』(…1人の女性を遠巻きに、ヒソヒソと影で話す職員に囲まれながら、とある〝 解剖班〟が1人。)
「フリーハグで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜すぅ♡ 」
(……ヒッチハイク宜しく、首から少し丸まった文字で『freehug (ニコちゃんマーク付き)』の看板を下げながら緩々とアピールをしていることだってあるんだ。彼女はそんなヒソヒソ話に気づいちゃいないのか、目前を通りかかった職員に駆け寄ってはニコニコと笑って腕を広げてアピールを。)「…………あっ、お仕事お疲れ様ですぅ♡お顔に元気がないですねえ、ヴィオレッタさんがぎゅーーーーってしたら治るかもお……♡どうですかあ……?」『…………え、嗚呼、………いやその、……………僕は、いいかな……急いでて………………』「……んん、そうですかあ………………………残念ですねえ…………」(そして、こうして振られるのがもはやパターン化しているのは言うまでもない。悲惨である。いい歳した女が誰彼構わずハグを要求してくるんだ。しかも〝あまりいい噂をされちゃいない 〟にも関わらず、だぞ。ほれみろ。『俺ちょっと行ってこようかな』『やめとけやめとけ、触手で何されるか分からないぞ。アイツ夜な夜な男を食ってるみたいで……』『私注意してこようかしら…………』『やめときなさいよ、あの人この間トカゲを食べてて………………』)(ヒソヒソヒソヒソ……………貴方はこの地獄みたいな惨状を見て踵を返すのか?それとも。) (1/26 20:53:22)
Dr.ダン・D>
「………、」(かさ、すさ、かさ、すさ、かさ…す……、それは目元にたっぷりとクマを蓄えたダメな大人の典型例の様な男が、履き潰された雪駄を鳴らしながら禄に脚も上げずにずるずると身体を引きずる様に歩く音、そして、それが止まったのは他でもない、君の真横だ。なにやってんだアンタ、なんてどの口が云えたものか。今指を刺されているのがアンタってだけで、こっちだってあまり良い目を向けられちゃいない。事実、アンタの噂が根も葉もないならこちとら根も葉もすくすく育った幹すらあるんだ、何やってんのか分かんねえのはどっちだ。)「……姐さん、此処は飯を食う処だ。」(もしも君がこちらに気付いて手を開いてハグを求めたのなら、否、そうでなくとも、その手を引いて食券の自動販売機に向かって肉うどんを購入しよう。)「………姐さんは?」(ぼりぼりと片足を持ち上げて爪先でもう片方の足のふくらはぎを掻いて、君が食券を買い終えれば係員に食券をぶっきらぼうに渡して君を連れて席に着くだろう。) (1/26 21:02:08)
外@ヴィオレッタ>
「あっ。〝 デルヴィーニュ〟さ────── …」『…姐さん、此処は飯を食う処だ。』(すりびるような足音が耳に届いた。まるで曇天を引き連れたような、酷い低気圧にこちらまで目眩がしてきそうな典型的な〝陰鬱〟に、彼女は慣れているように……否、どこか嬉しそうに微笑みかけ腕を広げようとしていたかもしれない。それはゴツゴツと冷えた手が彼女の手首を掴み、貴方が言葉を並べることで叶わなかったことだけれど。)『……姐さんは?』「っ!ええ、御一緒していいんですかぁ~~?嬉しいですねえ、うふふ。是非是非。私おうどんとぉーーーーーっても好きでえ~~♡」(でもね、それでも〝 構わなかった〟。寧ろ思わぬ申し出に少しばかり驚いたような顔を見せた後、嬉しそうに微笑んでチケットを受け取り、貴方について行くことでしょう。コツ、コツ、コツ、……お話好きな彼女は貴方について行く最中もきっと言葉を紡ぐに違いない。)「……………………にしても良かったです、お声をかけていただけて。そろそろ寂しいなあ~って、思ってたところなんですよう。」「…………ほら、動画とかで映画でよくあるじゃあないですかあ、着ぐるみとか、或いは人が首からボードを下げてぎゅーーってしてもらうんです。そしたら皆もぎゅーーって返してくれて〝はっぴぃ~♡ 〟見たいなあ………私皆さんとはもっと【仲良くなりたくて】………でも皆さんお忙しいみたいでぇ………………」「………やっぱり英語より、ひらがなの方が良かったですかねえ…?」 (1/26 21:19:56)
Dr.ダン・D>
「……言語活動は意志の伝達の為の物だからな、伝えるつもりも歩み寄るつもりもないそれは言葉として意味を為さない。」(謂う迄も無くこのダイハチと呼ばれる機関にはバケモノも霞む様な個性派が揃いも揃って雁首揃えてあっちにこっちに、二進も三進もどっちもどっち、もはやこの組織に存続する権利とアイデンティティが表裏一体の背中合わせにすら思える。兎角、何が云いたいかと謂えば、その中でも特に人に好かれやしない特徴を持ってしまった自分たちは本当に、居るべくして此処に二人で居る様にすら思えるという話だ。)「……どうしてそこまでトモダチに拘る、友達が欲しいならもっとマトモな誘い方があるだろう、今時フリーハグなんてよっぽど暇な奴しかやらないだろ…こうやって飯に誘うだとか、若者の話題に乗れる様な流行を勉強して見たり…」(もそもそと手元に届いた肉うどんを口へと運びながら、至極マズそうに彼はただ生きる為に為すがままにタンパク質とその他諸々の栄養を胃に押し込めていく。) (1/26 21:31:42)
外@ヴィオレッタ>
「…………………蘇生システムがあるからなのか、過酷な状況下だからか、…………人の死因に『こんなことで』なんて言葉は存在しませんけれどお…ココ最近になって昨日話していた職員さんが次の日〝 いらっしゃらない〟なんてことが、多くって。……………〝紙のように軽い命 〟にも〝 重力(責任)〟が付与されれてくれればなあ…………ってえ。」「第1歩はお友達。歩み寄ることが大切かと。」 「……せっかく一緒に働くのなら、〝 楽しく〟働きたいじゃあありませんかぁ。ねえ?」「私的には、『合理的』で、……『合法的』だと、思ったんですけどう……………」(彼女は依然変わらぬ笑顔で、生ぬるい言葉を並べ立てていた。〝悲しい 〟というには軽薄で、無常と言うには〝付きまとう粘着質さ 〟。それでも言っていることに、貴方だって〝 思い当たる節〟はあるんじゃあないかい。それでも、提案されたことに関しては〝 盲点でした〟と言わんばかりに両手を合わせるのだけれど。彼女は肉うどんを持って、あなたのお隣に座ることにする。お箸をパキ、と小気味よく割ったのならば、〝 頂きます 〟と丁寧に。)「……………………ねえ、もしかして、…おうどん苦手だったりします?」「嗚呼、ごめんなさい。あまり〝 美味しそう〟に食べているように見えなくてえ…………」(…食べる前に、貴方に問いかけちゃった。そういうのって、普通は黙っておくべきなのに。) (1/26 21:51:50)
Dr.ダン・D>
「………、姐さんの見た動画じゃハグし合ったやつらはメアドでも交換したのか?」(相手の言葉の何処までが真意で何処までが冗談で、何処までが天然で、何処までが“装い”かすら、彼には分からない、否、分からないように目を伏せているのだろう。君の歩いてきた道のりは知らないが、少なくとも君の足跡は常人の踏みしめたそれとはあまりにも形が違い過ぎると思ってしまった。だからだろう、その道のりを知るのは自分ではない方が良い、もっと人並み成らぬ異常さを受け止められる人間にしか、その正体を明かす事か許されていないと思ったから。)「……、味がな、分かんねぇんだ。」(それはイーコールの影響でも無ければ先天的に恵まれなかったわけではない、徐々に、徐々に、老衰の如く、ある日気付いたら何を食べても無味のゴムを喰わされている様な不愉快な行為へと食事は成り果ててしまっていた。精神的な過重によって感覚機能が麻痺する人間が居る事を、君ならば理解しているだろう。彼の場合、それが幸か不幸か味覚だったのだ。)「この世の終わりみたいな味のモンを口にしてやっと味覚が完全に息を引き取った訳じゃないと気付ける程度だ。……、此処のうどんは美味いのか?」(もそもそと不快そうに咀嚼して、呑み込める程度の大きさになったら呑み込むだけの作業を何度も、何度も、何度も、続ける。自分も君みたいに愉快だと装えば少しはましなのだろうか。) (1/26 22:08:44)
外@ヴィオレッタ>
『………、姐さんの見た動画じゃハグし合ったやつらはメアドでも交換したのか?』「……………うふふ。もう、デルヴィーニュさんったら。」(ひとつの冗談に返すのは、同じ重力の言葉でいい。うふふ、なんて少しばかり楽しそうに笑う彼女。肉うどんを箸でつまんだのならば、緩く髪を耳に掛けて、ふー、ふー、と麺を冷ますことでしょう。)『……、味がな、分かんねぇんだ』「…………………、……」(それを口にはまだ、運ばない段階。ぽつりと貴方が零した言葉。ヒトは過剰なストレス…1人じゃとても背負って歩けやしない物を無理やりにでも背負わされると パズルのピースが『欠け落ちるよう』に、喪失してしまうことを、彼女はよく知っていた。それは記憶か、それは髪の毛か、それは涙か、それは…………)(どうやら、貴方の場合今にも抜け落ちてしまいそうなのは味覚だったようで。貴方にとって食事とは食べ物の匂いのする靴紐を、粘土を、ゴムを咀嚼しているに等しい。それを嘘でも『美味しい』と答えるのは、きっと至難の業でしょう。『この世の終わりみたいな食べ物でようやく味覚が生きていると認識できる程度』……〝 ドロリ濃厚いもけんぴサイダー巨峰&ジンギスカン味〟なんて、誰が好むかも分からない飲み物を片手に喉を通す理由。職員達に〝 よくそんなもの飲めるね〟なんて言われて嘲笑される瞬間、貴方は何を思っていたのか。)(どうして、自分にそれを教えたのか。)『……、此処のうどんは美味いのか?』「………実は。」「…………………私も相当の〝 味音痴〟でして。」「……………でも………そうだなあ……………」(彼女は、箸でつまんでいた冷めた麺を静かに啜った。〝 味を感じないわけじゃない〟。けれど彼女の味覚はどこかズレきってしまっている。でなけりゃゲテモノや虫を食うなんてことは、しないでしょうに。噛み砕いて咀嚼したその瞬間、鼻腔を擽るは出汁の聞いた御汁。)(彼女は、口を開いた。) 「………………、…」「…………………………遅くまでお仕事をする旦那にね、………良く夜食を作っていたんです。コーンクリームスープとパン。」「…………静かに旦那が食べようとしていると、そこに娘が突然起きて来る時があって。」「〝 ママもたべよ〟……〝 ちゃんと食べたらまた歯を磨こうね〟なんて。」「……………少しだけ、…………思い出しちゃうような味がします。………………〝 誰かと一緒に食べているから〟、………ですかねえ。」(食堂に2人きり。特段豪華でもない肉うどん。味音痴。真っ当な味覚なんてもうないけれど、ひとつ言えるとするなれば『誰かと食事を摂る感覚』じゃあないか。)「…………私、実は料理を作るのが、少し得意だったりぃ…………今もたまに自炊するんですよう。」「…でもね、もう誰も食べてくれる人は居なくって。居ないのについつい癖で、作りすぎちゃう時があるんです。……少しお砂糖入れすぎてしまっても、お塩を入れすぎてしまっても。」「…………あなたなら許してくれそう、なんてのは………………少し〝 意地悪 〟でしょうか。」(彼女は、困ったように笑って貴方に目を向けた。) (1/26 22:44:26)
ダン・D>
『…………………………遅くまでお仕事をする旦那にね、………良く夜食を作っていたんです。コーンクリームスープとパン。』 (嗚呼、そうだったかもしれない。妻も、よくサンドイッチとコーヒーを書斎まで持って来てくれていた。≪ちょっとそこまで行ってくるけど、なんか要る?≫だなんて言いながら毎回、そんなに毎晩そこまで行く予定なんてある筈ないのに、今思えば気を遣ってくれていたのだと思うのだ。髣髴とされるのは君とは違うぶっきらぼうで着飾らない照れ笑い。)「……ッ…」(途端、ビクッと肩を跳ねさせ目を見開く。髣髴とするのはそれだけじゃない。今やもうそれだけではなかった。あの笑顔が一瞬で苦悶に歪み蒼白となる。動かなくなる。そんな想い出にすら侵食してくる錯覚。)『……………少しだけ、…………思い出しちゃうような味がします。………………〝 誰かと一緒に食べているから〟、………ですかねえ。』(……嗚呼、…嗚呼、そうだな。そうだ… 今でも、今でも妻のカルテに記した言葉が髣髴とされるのだ。数百にも及ぶ殴打によるショック死、人は痛みだけで、辛いというだけで、死んでしまうだなんて。) 『…………あなたなら許してくれそう、なんてのは………………少し〝 意地悪 〟でしょうか。』(だが彼が肩を跳ねさせたのは飽きるほどフラッシュバックしたそんな光景のせいではない。初めてそれが現実に侵食して来たからだ。一瞬見えてしまったのだ。君が苦悶にその嫋やかな表情を歪ませて、内臓はぐちゃぐちゃに叩き潰され、血管は至る所で破裂し、蒼白として…)「………フィッシュ&チップス、作れるか…?、…案外姐さんの料理なら、味もするかもしれないしな。」(なんて、こちらも笑えないジョークを口にして、彼は食卓について初めて笑みを漏らした。人は痛みだけで、辛いというだけで、死んでしまう。君もそうだ。けど、だからこそ、楽しいというだけで、嬉しいというだけで、幸せというだけで、ただ、誰かとこうして会話ができるというだけで生きられる、とも…言える筈だ。それで誰を生かそうとしたのかは、分からないけれど。) (1/27 02:08:20)