敗北@布瑠部 藍>
『……おじさまー。』それが柄にもなく心配からくる行動だなんて、自分でも理解していなかった。別に未経験ではないが、欲しくもなかったタバコを買った。一番軽いヤツ。そして結構安いヤツ。銘柄はなんと読むのか分からないようなものを手に、隊の部下である彼____ダン・デルヴィーニュは医療班だから一番死には敏感だろうと、そんな直感があって___いるだろう喫煙所に入り。『せっかく助けたっていうのにさ、死んじゃったんだってー。現場にはいなかったけど、時期的にコイツらでしょ。』たどたどしい手つきで火をつけて咥え。少しの煙だけを小さく吸い、吐き出しながら。微睡むように目を細めた。『大体、死にたいなんて言わないで黙って死んでくれたらいいのに。なんだってああいう弱い奴らって群れるんだろーーね。』タバコの先端が赤く燃える。それと同じくらいのタイミングで口にしたのは____彼を慮る言葉ではなく「被害者」への罵倒だった。思った以上にスラスラと言葉が出てくる。同じことを思っていても、普段ならもっと軽く終わるはずだ。『死ぬほどしんどいけど迷惑かけたくないだのなんだのって言うなら、一番しんどいのは遺体を始末するお掃除屋さんじゃない?』こんな長々口にしたのは。『山落ち馬鹿なんだろーね。目の前の人が悲しいとか、全然知らない人が嫌な思いするのとか。気にしないで死ぬだけ死ぬのは、クソだ。』一生懸命救ったはずの彼が、救えなかったと自分を責めるようなことが。そうせざるを得ない結末が。納得いかなかったからだと……いい終わってから、そう気づいた。 (1/29 00:25:05)
ダン・D>
「……隊長、」(彼は最初の罵倒を聴いた時点でまるで煙の粒子が眼球に触れたかのように眉間に皺を寄せ深く瞼を閉じ出来るだけ静かに声を漏らす。だがきっと貴方は止まらないのだろう。勿論、解るともそう云った感情が無いわけじゃない。一体自分は何をさせられてたんだって思わないわけじゃない。他人の感情を素直に受け取らない人間の、救いの手を差し伸べられてもそれに手を伸ばそうともしない、まるで善意そのものに恨みでもあるかのようなその行動に憎悪が無いわけではない。それでも、彼も片脚を【彼方側】に突っ込んで居るからこそ、彼には聞き捨てならなかったのだろう。人は自分が思っている程に器用では無い。) 「…………隊長…!」「………辞めよう。…彼等が選んだ最善はあの結末だったんだ。俺達はただそれを阻害してしまった、けど、任務は全て要請通り遂行出来た、………それで良い、もう良いだろう…」(それは想像力の乏しさが招く不完全な最悪の想定によって陥る欠陥の露呈である。人は追い込まれると視野が極端に狭くなる、これが駄目ならあれをあれが駄目なら…なんて、のらりくらりと目的と過程と欲求をすり替えて感情をコントロールできるのはまだその域を脱して居ないからだ。もしも本当に死という選択肢と向き合う時が来るのなら、その時はもう他の選択肢は可視化すら出来なくなっているんだ。そんな些細な事で、と思うだろう。……そう、些細な事なんだ。矮小で姑息で虚弱な人間は常に何かを辞める理由を探している。そうしなければ苦しくて心が死んでしまうから。本当に壊れる前に自分を終わらせた、それだけの事なんだ。それは確かに正しくはない、けれど多分、間違っても居ないのだろう。) (1/29 00:46:34)
敗北@布瑠部 藍>
『……隊長はさあ。』何を考えているのか不明な、光と焦点をどこかにやったような瞳を真っ直ぐに向ける。任務はこなした、その通りだ。彼ら彼女らは仕方ないんだ、その通りだ。ふざけるなと幾ら叫んでも喚いても手が届かない。ずるいなあ、と心の底から思う。悩みやら辛さやらなんて無縁の自分には、彼の言っていることを頭を使って反芻するだけで大変だというのに。考えずに死ぬだけならよっぽど楽じゃないか。『ほら、イマイチ生命(いのち)とかピンと来ないんだよ。ん〜……自殺志願者って訳じゃないけど、別に楽しく生きてきたしいっかなー。みたいな。勝手に1人で死んだだけなら、私悪くないし関係ないなー、お腹すいたなあ、とか。』『正味感想はそんななんだ。』君がしんどそうにしていなければね。と、そう付け足す。てんでひね曲がったコース外れのものではあるけれど。抱いた怒りは間違いなく、形を変えた善意だった。『だけど、君に少しばかり欠けてることがあるのは私にもわかるよ。それは、どうしようもない時悩まないってことさ。』 煙を長く吸い。それからゆっくり吐く。辞めよう。そう口にしているのはどちらなのだろう。やるせなさや虚しさが募るから辞めるのか。口ぶりが残酷から辞めるのか。どちらかというなら……前者だと感じ取った。『まさか、生き死にかかってても反省するなとか、死んだらしょーがねーだろしーらない!ってしろって話をしているんじゃーない。』『異常な場に正常を求めんなよ ダン 私達がやらなきゃならないのは何か、君ならわかるだろう?自分が傷つかないように誰か傷ついた人を助けることさ。その折り合いをつけずに、ずるずるやっていきそうに君は私から見える。自己犠牲やら、頑張って上手くいかなかった鑑賞(感傷)会はァ〜〜。クソの役にも立たん。"""""職務に戻りたまえ"""""』『なんちゃって。隊長っぽい?』憎まれ役。憎まれ口なら慣れっこだった。なんだがお前大丈夫か?とか、優しい言葉はきっと自分より頭のいいやつがやる。だから、いうとしたらこんなことだけだ。 (1/29 01:27:54)
ダン・D>
「_______っ、」(納得出来ないという感情の滞留はその言葉ですとんと飲み込めてしまった。異常な場に正常を求めるな、それは余りにも現状を打開するのに相応しい解答とも考える事を辞めた思考停止の議題の放棄とも思える。だが、…それが正しいと思えた。何故かは解らない。恐らく、心の何処かで期待し過ぎて居たのだろう。きっと救える、きっと彼等も幸せになれる、きっとそれを望んでいる。全てエゴだと理解したつもりでは居たが、自分が望んでいるからきっと相手もその筈だ、という感情が、あの頃から今に至るまで救いを求める彼によって屈折した生への平等な執着性という錯覚が、いつの間にか肥大化していたのは確かだ。それらを求めるにはあの状況は余りにも、剰りにも、有り餘った異常で満ち溢れていた。)「………嗚呼、アンタはちゃんと俺らの隊長だよ…これを吸い終わったら、“戻る”。」(はっ、と自嘲気味に笑うも、彼の表情は何処かスッとした様にも見える。救えなかった事実が消えるわけでは無いけれど、これで全てが赦されるわけでは無いけれど、でも、救えた命があった事も覆せない事実だ。あの異常の中で救えたモノにも目を向けるべきなのだろう。喪った者ばかりを数えるのは現役時代の悪い癖だ。すぅっとココアの風味が燻るブラックデビルを口に咥え火を付けて、彼は鑑賞会の幕を閉じる。救えなかった者を背負ってより多くの悲劇を叩き壊す事ができれば、きっといつか許される日が来るだろう。) (1/29 01:50:15)
敗北@布瑠部 藍>
『死んじゃったもんは帰ってこないけどさ。でもまあ、次死んじゃったりしないように頑張ることは出来るんじゃない。それに____何人かは助かったんでしょ、その人達がかわいそうじゃん。なんか失敗したオマケで生きてるみたいで。せっかく助けたんだ____仲良くしなよ。』気づいてくれたかな。背負っていくのもいいが、大概にしておけ。訳の分からない事態なんだから普通の感性で向き合ったらしんどくなるのは当たり前だ、それで悩むなんて意味のないことをするなら、誰かをこれから救う自分を救え……。一生懸命にやった失敗には随分な言葉だが「お前は間違ったことをした」なんて一言も言わなかったのを。にこ。と笑みを浮かべる。隊長だと扱ってくれたのが嬉しくてもある。格好がついたのもある。しかし、なんだか元気………には見えないけれど、マシになったと見てわかる姿が嬉しくて。『あ、いけね。私タバコ……。君の様子見に行くのに買っただけで、あんま好きじゃないんだよなあ。』んじゃ、なんて気前よく去るつもりだったけれど、残り19本、後々捨てたりするような真似をするのが妙に罪悪感で。要らないからあげる、とでも言わんばかりに彼にソフトパッケージを突き出して。『ねえ、確か、タバコって「飲む」って言うんだよね。方言かなんかで聞いた事ある。』黒い小悪魔を模した可愛らしい包装と、無機質なアルファベットだけの安っぽさが退避して、余計貧しく、憐れに見えたから、どうせかっこよくなんて立ち去れないし____もう少し一緒に居よう。『なら、これって乾杯になるのかな。』そう思って一本取りだして咥えて、彼から火を拝借。初めてやったのに上手く火がついたのは幸運だった。『何もかも台無しになった私たちに、乾杯。明日からまた、台無しになりかけな誰かを救う私たちに____乾杯。』多分もうタバコなんて吸わないな。けど、これでこの時間が、二度とない「特別」になるのなら____ (1/29 02:20:26)