白雪>
【蠱毒-ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。……『医学綱目』巻25】円澪に引き続き、レイ・ラベット、狗咬当馬の訃報を耳にした。カミサマ、ARKという人狼、そして狂人……我々を死の淵へと追いやる要因はそこかしこに転がっているという事は解っていたけれど、カミサマ予備軍であるイーコール適合者、それを作り上げたアルマデルという組織、ヴィクトリア号。もはや、そのすべてがまるで殺し合いを誘発させ、呪いの壺を作りあげる事を目的とする為にあるかような昨今の混沌に、この白雪という女も徐々に正気のタガを外していっていた。アルマデルの局員であるかぎり、世界の裏側、真実を自分達だけが知っている気にすらなる事もある。けれどその真実めいた、はたから見れば陰謀論と相違ない共通認識が与えるものは結局のところ、白雪にとって”もう引き返せやしない”という呪縛に過ぎなかった。「……ああ、鵺の調査に駆り出される事になったのは、あなたね?三番小隊隊長のツクモユキです。宜しく」立候補したのか捩じ込まれたのかは定かではないが、これから致死率の高い任務にあたる貴女に対し、雪はやけに淡白で形式的な挨拶を送った。「調査直前に初めて顔を合わせるなんてことになってしまうなんて、ごめんなさいね。このところ常に忙しくしていたものだから。」そういう彼女の目の下には深い隈が染み付いていた。もしかすれば貴女の耳にも、人が変わったようにカミサマの研究に没頭しはじめたという雪の噂が入っているだろうか。寝食を打ち忘れてカミサマと近づいていく果てはドルイドか、それ共、”特殊なカミサマ”とやらのイーコールを染み付かせ代替の器にでもなるつもりか、と。「このダイハチで、鵺を討伐した例は”まだ”ありません。とにかく生きて帰れば良いわ……ノヴァを持っていって」彼女のほうの準備は整っているようだ。 (2/1 22:37:34)
敗北@ハリィ>
『……オイ。』まず見咎めたのは、その目のクマだった。話を聞き終わった、準備してこれからという所だった。そのタイミングで、話の腰を折るように黙していた口を開く。『普段なら僕はな、"だが捕獲に関しちゃなんとも言われてねぇぞ" って趣旨のポジティブで前向きなジョークを、チャップリン顔負けに口にするところなんだ、が。』普段なら、陽気に戦場に向かうところだ。たとえ敵がどれだけ強大であっても100パーセント勝つ気でいる。それが戦う人間には必要だと思うからだ。それが高じてくだらない下ネタや冗談を交わすようなやり取りを好んでいる。しかし、この時この場合に関しては違った。『だが、アンタ今にも死にそうだ。これから先に死にに行く理由に鵺を使ってそうだ。そんな命令は聞きたくねーな。フラフラでヨタったジャンキーに戦いが務まるか。なんかの能力の発動条件ってんならまだわかる。それとも隠し球があるとかならな。だが……多分、アンタそうじゃねぇ。なぜ、そんなテスト前みたいな面になる。』『その理由からまず聞きたいね』半ば聞き流しながら身体に身につけた装備が、今日は重く感じていた。 (2/1 22:57:56)
白雪>
「…………心配してくれてる、と思っていいのかしらね」俯いたまま控えめに口角を上げて、雪は応えた。「それとも相方が頼り無く見えて不安?貴女の戦士としての美学になにかが引っかかる?」斜め上に目線を向けた時、耳を覆い隠す為になるべく顔のほうへ持ってきいてる長い髪の束がばらりと頬に垂れた。「すべて”イエス”なのだと思った上で、つまらない話をさせてもらうわ。本調子でないように見えるのは昨日も徹夜でカミサマ研究をしていたからと、このところばたばたと周りが死んでいって気苦労が絶えないからよ。冷たいと思うかもしれないけれど、別に死を乗り越えるだとか乗り越えないだとか、背負うだとか背負わないだとか、そこまでの感情移入もしていないようなの。ただ……滅入るだけ。明るく振る舞ってくれないと調子が出ないというのなら、おあいにくさま。私は滅入っていようがいまいが、いつもこうなの」声色や語尾は比較的柔らかい物腰であるが、何でも聞けと言わんばかりに堂々と胸を張って応じる姿勢は未だ凛とした彼女らしさを残していた。「自分から悲劇のヒロインに成り下がるつもりはないわ。自殺なんて以ての外。……そんな恥知らずな真似ができるなら、もうとっくにやっているもの。死に方にどんな理想を思い描こうが、どんなに抗うつもりでいようが、逝く時は逝くものよ。あなたもね」「……だから、肩の力を抜きなさい」ぽん、と貴女の肩に手を置き、顔を見合わせずにそう言った。モチベーションを削ぐような真似と捉える事もできようが、なんとなく、ハリィ・バンホーテンは手心を加えずにはっきりとこちらの事情を打ち明けたほうが通じる人物のような気がしていた。「聞きたくない命令は聞かなくても宜しい。私が心配で足手まといと言うなら、言わせていただくわ。いざという時、私はあなたを盾にすらしましょう。」「……疑問は晴れたかしら?」腹のうちのすべてを打ち明けた訳ではない。まだ気になるというのなら応じる、と示すように疑問系で投げかけた。けれど、チャンスはそう多くないだろう。ちらりと目を向けた先にある時計は、任務開始時刻が迫りくるのを刻一刻と刻んでいた。チャンスは、【あと一回】。 (2/2 12:46:01)
敗北@ハリィ>
『言っておくけどな。決死と、必死は違うからな。九死に一生、一だけは帰れる算段があって戦うならまだどうにかなる。そんな身体で、それこそアンタが研究から武力行使まで全部やるみたいな真似して、その上で突っ込むってのか。』それは自分に向けての言葉でもあった。決死の覚悟で望むのと、必死と決まって行くのとは話が違う。第三支部があんなことになって、その首謀者が現れて。ルクスの乱入なんて異常事態がなければ勝ち目がなかった。そんな時に……。自分は何をしたか。特攻である。形勢逆転を着実に狙うものでは無い。このまま埒が明かないならどちらにせよ死ぬのだから___というギャンブルに負けた人間のやる、思考の澱みのようなものが動機だ。似たようなものじゃないのか? と疑問と、共感をいっぺんに思った。お偉いさんなら無理やりに自分が行かなくても、誰かを行かせたらいい。ボロボロになっても必要な報酬があるなら好きなだけボロボロにすればいい。残酷だが、奴隷階級やら機動要塞なんて、上層部からするならば、そのためにあるようなものじゃないだろうか__『シンプルな回答が欲しい。アンタ、鵺を使って……。それか、鵺から色々調べて出てくるコードなんかもあるだろうが、それで何を目指してんだ。まさか、他の誰かに話したりはしないから。』『アンタがそうまでする理由を知って一緒に戦いたい。僕は兵隊でもなけりゃ殺し屋でも、快楽殺人鬼でもなんでもない!一人の……人間なんだから。』君が何故、ボロボロになる理由はわかる。しかし、その状態になるまで誰かに任せたりもしないで、しかも戦地にまで行くのか。その理由は、君が疲れている理由とは必ずしも結びつかないだろう_____?と。そう問いかけるのだ。 (2/2 13:08:12)
白雪>
ハリィの言葉を、どうも容量が得ない顔で聞いていた雪であったが、ある時ふと、腑に落ちたように顎に当てていた指を下ろした。「シンプルな回答……」「……私がアルマデルのために任務を”こなしている”ようにはみえない、”そうまでする”のには個人的な事情があるに違いない、と言っているのね。」「そうよ。正解。」ため息をつく。「ペト…………鵺を使って、私のとっての重要人物を蘇らせる手立てを、探しているの。」「貴女を殺し屋だの快楽殺人鬼だとの思った事はないけれど、ごめんなさい、私にとってはただの兵隊よ。……納得がいかなくても、ついてきてもらうわ。」 (2/2 13:48:36)
敗北@ハリィ>
『そうか。気持ちは……理解出来なくもない。』頷きはしたものの、気にかかってはいた。インボルバーというカミサマがいる。それの解析は、有難いことにかなりの部分まで進んでいる。死者の蘇生に役立つ、という触れ込み付きだ。そちらでは都合が悪かったのだろうか。それに、漏らした言葉は……。推理や謎解きが得意なわけではない、その分野は誰かに任せてきた。ただし、知恵を絞るのならば今だという直感はあった。『んじゃあ……長話もなんだし、行こうか。』しかし……その上で、選んだのは勝負(コール)だ。罠があるなら踏み越える。そんな自信があるような訳でもない。しかし、毒を食らわば皿まで。なにか引っかかるまま話が進むのならば____それがなんなのかを突き止めるチャンスは、騙されて飛び込んだその先にしかない。『……(ピリついてきやがった。これだよ、この感覚だ。)』ワイヤーに命綱、設置型の爆弾や、閃光、発煙手榴弾、レリックとなった破片手榴弾に拳銃。それら普段から持ち歩いている装備だけでなく、言われた通りのガイア=ノヴァまで引きずって。さあ、行こうかと手を振った。 (2/2 14:11:16)