風鈴@α-007>
(自分の心を写したように大きな魚が自分の身体に影を作る。ふんわりと香る磯の香りは、見たことのない海を連想させるのだ。ここは様々な水の生き物が住んでいる水棲棟。海の中身だけを切り取って育てられた魚達はここを海だと勘違いしているのだろうか。だとしたら、なんて虚しい人生なのだろう。井の中の蛙にさえなれず、海ではないと教えられず、与えられた餌だけをひたすら食べ、肥えて、そして研究材料として死んでいく定めなのだから。もしも彼らに言葉が理解できたとしても、陸にあげられた魚は跳ねることしかできない。自分だってそうだ。ニンゲンと同じように感情を持ち合わせているが、周りからしたら兵器にしか見られない。ニンゲンとは違い、冷たくて硬い黒いボディ。顔なんて存在せず、表情を作ることさえ叶わない。もしも、自分がニンゲンだったならば使い捨ての命ではなく、尊重されるべき一つの命として扱われていたはずだ。そんな考えが錆のようにこびり付いて離れないとです。そっとガラスを触れても水の冷たさは感じられない。1匹の魚が物珍しげに近づくだけだ。いつになれば自分は罪を言えるのだろうか。きゅっと締め付けられる胸の音に導かれたのか。コツコツと足音がするからそちらを見てみると、小さな男性が一人。雪のように色白で墨汁を染み込ませた髪は一つに括られ、一見女性か?と思ったが、プログラムは男性だと示している。そっとガラスから手を離せば) 『こんばんは、貴方"も"魚を見にきたのですか?』(薄暗い空間に響き渡る低い男性の声がロボットから発せられる。まるで自分は感情があるのだと。ニンゲンと同じような行動ができるのだと言わんばかりの口調になってしまった。だけど間違いではないはずだ。身長差84cmもある大きなロボットにビビるかもしれないけど今はちょっぴり話したい) (2/5 17:40:47)