日満寺 百貫>
「さぶりみならずにすべての意識を持っていかれ、生きながらも何も認識することができなくなる、植物段階。死亡は他殺以外ほぼ不可能となり、体中に当カミサマと同じ異常性を持つ『さぶりみならず』という言葉が這い回るため、第3支部に隔離される……との、事なのですが、現状、第三支部は壊滅状態、…ぼくたちダイハチに白羽の矢が立ったという事なのですが………」(彼は片手にたくさんの資料を抱え、もう片方の手にはなにやら掃除用具の様な物をたんまり引っ提げながら保護サイトの一室を前にしている。その横には10個も年下の医療班である君が居て、その一室の中では罹患者が寝台に寝かされている。その体表に這い回る"さぶりみならず"という言葉達を視認しないために患者の身体は遺体袋の様なものに覆われているが、備え付けられた医療機器によってまだ患者が生きている事だけがモニターに映し出されている。そう、生きているという事だけが。)「………それで、その、アマヤドリさんの能力で、僕を後から元に戻してほしいんです。」(1時間ほど前、彼が君に提案したのは『患者が意識を取り戻した時の為に、血流マッサージや清拭やケアなどをしてあげたい』________________というものだった。 (2/6 13:46:30)
雨夜鳥 志乃紀>
(君の隣に立つ彼女は、君とは対照的にその手に何一つ持ってやいなかった。脳天気に脳死したまま、誰かに守られることでぬくぬくと生きてきたその実体を携えて、彼女は資料を抱える君のその手を、そうっとじぃっと見つめるのでしょう。)「第三支部……、」「うん。」(壊滅したという第三支部の名を、至極興味なさげに呟いたのなら、取り繕うように頷いた。彼女とて、アルマデルの一員だ。自身がここに来た理由も経緯も全て雨に洗い流されたとて、仕事をしなれば生きれないことも、君に助けて貰ったことも忘れたわけじゃない。歪なアルマデルへの嫌悪と、ARKに対する帰属欲求と……、君に対するわずかな感情が、彼女の中で渦巻いている。)(前回会ったとき。凍えそうな寒さの中では、君のその体温は幾分心地好かったのだけれど、空調設備の整った今ではほんの少しだけ蒸し暑く思う。組織の嫌悪か君へのそれか、はたまたそのどちらもか。どちらにせよ、君と彼女の間には、ほんの少しの距離があるように思う。)「わかった。……その、気をつけて、ね、おわんくん。わたし、モニターみてる、から」(君のその申し出を聞き入れたのなら、患者のケアに不要であろう諸書類を受取って、彼女は室内へ踏み入った。)(罹患者たちの寝台の横、モニターの前に彼女は立ち、視線をモニターに固定する。決して患者を……、その文字を、視界に入れないように。)「ん……、数字はいつもの、とおり。」(君から受取った書類の中にあるチェックボードにその数値を記録していく。数値は至って正常、今日も”元気”そうだ。)(規則正しい心音は鋭い電子音が代返し、その呼吸は衣擦れや君、彼女の心拍と呼吸で聞こえやしない。人を目に入れない彼女にとって、今この空間は二人だけだ。__尤も、意識の動かない罹患者達を、なんと形容すべきかは分からないけれど。)「…………おわんくん。」(彼女はぽつりと言葉を零す。)「……その、………………、」「あの、このあいだの。ありがと、ね。たすかっちゃった、」(極めて普通の女の子のように。君に”親しい誰か”の影を重ねたとて、君は未だきっと”親しい誰か”じゃあ、ないのでしょうから。) (2/6 14:13:19)
日満寺 百貫>
「………うん、…大丈夫。」(___大丈夫、その言葉の中にどれほどの意味が内包されているかは多分、君にも、本人すらわかっていないのだろうけれど。恐らくそれが君の云う感謝の言葉に返された言葉なのは間違いないだろう。それから、彼は躊躇することなくその一室へと足を踏み入れて、資料を置いて、用具をせっせと用意し始める。もしかしたら、君が能力を使わないかもしれない、その疑いは現状では拭いきれないのだ。あくまで、自分もそして他の誰かもアークであるという疑惑はいつまで経っても晴れない、この一室の電子ロックを掛けられれば彼は此処から出る事も出来ないだろう。見るだけで影響を受けてしまうカミサマの面倒なんて自分の様な雑用係や奴隷階級にしか回ってこない仕事だから、発見される頃に自分がどの様な状態になっているかは定かではない。)「アマヤドリさん、…あのさ、僕に医学を教えてほしいんだ。」(それはもしかしたら此処に君を連れてきた理由の一つかもしれない。あくまで、自分が感染する事を前提とした仕事であるのが最も大きな理由なのは覆らないが、)「……色んな人がさ、…居なくなっちゃったじゃないか。情報室のマドカさん、1番小隊の雨晴隊長、2番小隊の布瑠部隊長、3番小隊の白隊長、4番小隊のカフカ隊長、8番小隊の鴨葱さん、研究生の帝さん、それから支倉さん、第三支部のたくさんの職員や住人も、……ラベットさんと狗咬さん…は、アークのスパイだったみたいだけど、でも、…人が死んでしまうのは、例え誰だろうと、………悲しい事だから。 だから、君みたいに少しでも誰かに手を差し伸べる術があったら、僕にも何か出来ないかなって…医学知識のほんの一部でも触りだけでも、ただ淡々と唱えてくれるだけでも良いから、教えてほしいんだ。」(彼は用具を用意し終えると、じゃあ、こっち見ないようにね、とだけ声を掛けて患者を袋から出して、清潔な布でまずは身体を拭き始めるだろう。小さな声で資料に書いてあったその患者ひとりひとりの情報と照らし合わせて声を掛けながら、…家族がいるのなら家族の事を問いかけたり、学校の事、仕事の事、趣味について、最近の天気について、最近できた美味しい料理のお店の話、それから、それから…もしも目が覚めたら何をしたいか、とか。答えなんて帰ってくるはずもないけれど、) 『罹患者を救いたいのならば…残酷だが、耐えることだ。』 (そんな報告書の一文を反芻しながら、ただ、耐えていた。) (2/6 14:35:35)
雨夜鳥 志乃紀>
(それは「いいよ」じゃなく、「どういたしまして」でもなく、「大丈夫」、だった。気にしないで、たいしたことない。嫌だったけど別に、どうでもいい__言葉の前に憑くであろう様々な言葉を夢想して、分からないからと諦めて首を横に振る。)(それから。)『…あのさ、僕に医学を教えてほしいんだ。』(心臓がぎゅうと、きつくきつく彼女の首を絞める。)『……いろんな人がさ、─────、』(円さん、れいれいのことも。もうぼやけてしまったあの人のことも。__アルマデルに虐げられて逃げてきた、自身のおうちのルクレルク人のことも。今この場にいる人の内、何人が実験台として差し出されたのか。__人は死ぬ、それはきっとこんな世界で生きているなら誰だって知ることだ。それに毎回心を苦しめて居られる余裕なんて、きっと多くの人間はないのでしょう。彼女は、きっと殆どの人間は、『自分は生きていたい』と強く願うから。)(だから。)『…人が死んでしまうのは、例え誰だろうと、………悲しい事だから。』(彼女は自身の唇をキツく食み、自身の書いていたボードを、そっとモニターの前に置いた。赤いカーディガンをそうっと脱いだなら、ブラウスの袖を二度折って。) (__________狂えて、しまえたら。)【諦観】を、(彼女は君の隣に立ち、患者を見て。患者の肌に、そうっと触れた。君の体温を片側に感じつつ、それを彼女はきっと、愛おしくすら願うのです。)「いいよ。……、医学、といっても、その。……そんなに、たいしたのじゃあ、ない、けど。」(ぼんやりと燻った彼女の瞳は深い深い沼のように。人差し指で触れるだけでも、その水はほわりと濁ってしまいますから、どうかそのままに。)「わたしも、一緒に、やる。」(罹患者の皮膚の上で蠢いている『さぶりみならず』を指であやしながら、彼女は君と同じように、それぞれの患者に施術して、それから。最後の最後、ほんの少しの余暇にでも、自身の知ることを説くのでしょう。)(それはきっと、医学書なんかで身につけるような知識では無くて、もっと実践的な技術のところ。治す術、癒やす術。止める術と戻す術、保つために大事なこと、隠すために大事なこと。)(時に自分自身の体を示し、その四肢に刻まれた傷跡が露呈することすら厭わずに。)「あと……、ね。」(きっときっと、一番、一番大事なこと。)(おわんくんはきっと、易しい優しい人だから。)「危険な場所だと、ね。」「医療班が、一番に、狙われるの。最初に潰すと、後は回復できないから。だから、ね。」(彼女はズルくて汚い人だ。だから、綺麗で綺麗で美しい君が、汚れてしまえばいいと、思った。)「自分の命を大事にして、……、目の前の一人が死にそうなときでも、君が生きていれば多くの命が、助かることがあるから。」【諦観】をそっと、きみに。「だから、……、にげることも、大事、だからね。」 (2/6 15:12:29)
日満寺 百貫>
「……そう、だね。………君の様にもしも僕にも出来る事があるのなら、…生きなきゃ。」(彼は君の言葉を【記憶】するだろう、自身の身体をも使って教えてくれる君の身体をじっと見つめて、得た情報を応用して【洞察】によって見解を広げていくのだろう。そして、今日の職務が全て終わったころには医学書のデータを取り込み、端末から読み上げ機能を駆使して垂れ流しながら取りこぼさないように脳に叩き込んで、そのまま夜が白けてしまうまで訓練所の傍らで教わった全ての術を活かす為にどっと汗を流すのだろう。今の彼はあまりにも、あまりにも出来る事が少なすぎるから。)「アマヤドリさんもね、多分僕なんかよりよっぽど敵に回すと厄介だから、僕より君のが狙われると思うし、……でも、もし君が狙われても、此処にはたくさん優秀な人も居るから大丈夫、かな ……君にも、生きていてほしい…です。」(諸々を終えた後、用具を洗い、散らかした資料を片付けて、あまりまとまり切らないそんな言葉を投げて何言ってるんだろうなあなんてへらへら笑って、それから、…)「っと、ごめんね、忘れてた…ええと、それじゃあ、症状だけを戻してくれると助かるかな。」(にへらっと笑って彼は君に能力の使用を求めるだろう。もちろん、その能力の矛先は自分と、それから君自身にもだ。このまま別れてしまっては、君を失う事になるのは目に見えているから。) 大希晩成可動域:【投擲】 +【医学】【諦観】 (2/6 15:29:53)
雨夜鳥 志乃紀>
「うん……、うん。」(ほんの少しだけ、迷った後。彼女は君に触れようと手を伸ばす。能力の使用条件は触れる事。『さぶりみならず』の寄生した脳の内、記憶を司る海馬を避けるほんの隙間をさがそうと、君の正面にたち顔を両手で包んだのなら、彼女はそうっと目を閉じた。君の柔らかい、しっとりとした頬に触れて、そろりとその指先で耳を撫でる。熱のこもったくせ毛に指を差し込んで、くすぐったい感覚にちいさくちいさくわらったのなら。)【容量3消費。君の症状を、3ロル前の『君が患者を目にする前』へ戻します。】「…………、あのね。」(彼女は君のかみからそうっと指を引き抜いてから、きみにそのまま体を預けるようにきみにぎゅうと抱きついた。)(彼女よりほんの少しだけ背の低い君だから。きっと彼女の口元は、丁度君の耳にささやきかける。)「おねがいが、あるの。」(彼女は不安定に揺らいだ声で、君にそうお願いをするのでしょう。泣きそうなのか、笑っているのか。判別のできないその声はきっと君の鼓膜を確かに揺らす。首に回したその腕を、寂しがりの子供がそうするみたいにぎゅうとちょっぴりきつく締め、それからぱっと体を離し、彼女は。)「あのね、のね。……おへや、きて。……くれたら、うれしい。な。」(薄く淡い微笑を浮かべ、ふらりとその身を揺らがせた。)「いこ。」(置いておいたカーディガンに袖を通し、長いフレアスカートを揺らし、またその柔らかい髪を歩く度に上下させながら。彼女は君の手を取って、自身の寮へ向かって歩いて行く。君が望むなら先に道具を片付けに行こう、調査データをまとめに行こう。彼女は細められた瞼の奥でそうっとそうっと君を見て、勝手に何かを期待して、それから。綺麗な綺麗な君の汚い何かを、待ち望んでいる。)(どうせ世界は汚いのだ、どうせ人間は汚いのだ。幻想を砕かれたとき、その夢が叶わないと知ったとき、人間は腐る。)(君が綺麗で、綺麗なほど。彼女は胸が苦しくて仕方ないのだ。)「どう、ぞ。はいって、」(自身の部屋の前に来たのなら、そのドアを開き、君に入るように促すだろう。君が入るまで、彼女はきっとこうしている。) (2/6 16:06:54)
日満寺 百貫>
「ぇ、あ、うん…?……うん"ッ!?」(君の誘い文句はなんというか、突拍子も無かった。だから、素っ頓狂な反応をしてしまったし、何よりも…汗がすごい。凄かった、ではない、今もすごい。兎角脳内は大いに乱れてしまった。ドクドクと鳴り響く心拍数やらそれに合わせて四肢に這う欠陥が疼く感覚も何から何まで気持ち悪くて、それというのも自分が否応なしに興奮しているという事実を知らしめるからなのだけれど、反復するが脳内は大いに乱れてしまった。ステルスドローンが配布された今、もしも自分がアークの一員ならば君の部屋で君を襲うのは容易なわけで、でもそれを言うなら逆も然りなわけだが、ただ単純に君がアークの人間かどうか分からない以上、警戒はするに限るが疑いたくは無くて、だとするならばこんな年頃の女性が自分を部屋に招き入れる方法なんてなにも思いつかなくて、だから、ええと、どうするべきだ?いや、そもそも何が起こるんだ?………なんて、考えている間に、)「お、…お邪魔、します……っ」(着いてしまった。どうやって道具を片付けたのかもどうやってレポートをかき上げたのかも正直あまりちゃんと覚えていない、とにかく、汗がすごい。 (2/6 16:19:10)
雨夜鳥 志乃紀>
「ん。」(君が入ったのを確認したのなら、その扉は鍵の音一つ立てないまま、そうっと閉じた。)(カーテンの閉められた室内は薄暗い。それなりに片付いているその部屋はクリーム色を基調とした家具でしつらえられており、また至る所に大中様々な熊やフクロウ、ナマケモノのぬいぐるみが置かれている。本棚にはいくつかの医学書と日記と絵本が並び、上段には色鉛筆とクレヨンの大きめのセットが立てかけられている。籠の中にある毛糸玉の山の中には作り途中の編みぐるみが置かれており、……きっとそのなかに、君の姿も見つけることができるだろう。それから、一つ。彼女の部屋に似つかわしくない、発信器や録音機器、レコーダーの類いが、棚の縁に散らばっている。)(ローテーブルの周りにある座椅子はぬいぐるみに占領され、彼女はそれを除けることなく、君にベッドに腰掛けるように進めるだろう。)「……その、ごめんね。お水しか、なくて。お花とくまの、どっちがいい?」(彼女はふたつのコップに水を汲み、どちらを飲むか君に選ばせてから自身のそれに口を付けた。)「あの、えっとね、ごめんね、急に。その、これ、」(彼女はベッドに腰掛けた君の前の床に正座してから、一つの紙袋を差し出した。)「こないだ、べしょべしょにしちゃった、から……あ、あとこれ、も、あげる。」(先日借りた膝掛けは雨に濡れてべしょべしょだった。洗濯すれば使えるのだろうが、それはいくらか申し分なくて。それからそれから、と、彼女は自身の本棚にあるいくつかの医学書と、その際につかったノートを紙袋に入れていく。先ほど話したのは実践的な【医療】の知識。日常的にもきっと使える【医療】の知識を、君に。)「…………、それから、あのね。」(彼女はそうっと俯いて、カーディガンのそでの先をふにゃふにゃといじる。言いたいことは多くあるし、やりたいことは多くある。それでも、それを実行に移す勇気なんてなかなか出ず、小さな沈黙がその場に降りることでしょう。)「……、」(視線を巡らせても、彼女の逡巡の答えはでやしない。__だから。)「あのね、……あのね。きいて、……聞きたい、ことが、あるの。」(まだきみとはきっと深い仲じゃない。だから、君が彼女を嫌ったって、彼女が君を嫌ったって、きっと沢山は痛くない。)「……あの、ね。」(恐る恐る、そろりそろりと視線を上げて。)「”もし”。……、もし、おわんくんが、じぶんのために人を、殺しちゃった……と、したら。どうしたら……、どう、したら、償えると、おもう?」 (2/6 16:52:07)
日満寺 百貫>
「………それは、」(彼は受け取った紙袋をぎゅっと抱きしめて思考が冷めていくのを実感した。なんとなく、分かった気がする、君が自分を此処に呼んだ意味が。そうか、それは、…それは、………誰の事を云っているのだろうか、報告書にあった"カミサマの影響を受けて殺さざるを得なかった誰か"について言っているのだろうか、それとも、それとは違う誰かについてだろうか、だとするのならば、君が殺してしまったのは、誰だろうか…否、もしも答えを出すのなら、まず…)「アマヤドリさん、……能力、自分にも使ってあげて。さっき、多分ぼくにしか使ってない…でしょ?」(へらり、と少し気まずそうに彼は呟いた。彼の【記憶】が正しければ、君はまだ能力を使用していない、そのはずだ。そして、能力はそう多くは使えない、君の元に戻す能力ならば、今自分に使わなければ間に合わないのではないだろうか?仮にそうだとするならば、…今ここで君が彼に致命傷を負わせることは出来ないはずだ。能力が使えない医療班と未だ能力を発動していない雑用係、どちらが生き残るかは目に見えている。この時点で、既に君の危険性は失われた。)「………僕は、そうだな…この時代なら、この世界なら、それはもう仕方無い事なんじゃないかなって、思っちゃうんだ…それは!もちろん、悲しい…けど、でも、……どの生き物も生きる為に他の命を奪っていて、…もしも、仮に、今ここでアマヤドリさんに僕が殺される事になっても、アマヤドリさんが生きる為なら仕方ないって、思うよ…抵抗しないって意味じゃないけど、それは、なんというか………この世界で生きる僕達の運命じゃないか。それで恨まれるのも、それで返り討ちに遭っても、それで結果として自分が殺されることになっても、それは、運命だって受け入れるしかないんじゃないかな、だから、もしも僕がそうなったときに、出来る懺悔は、………… 【 運命と向き合って生き続ける事 】 …だと思う。 ……アマヤドリさんは、………どう思う?」 (2/6 17:17:05)
雨夜鳥 志乃紀>
『アマヤドリさん、……能力、自分にも使ってあげて。さっき、多分ぼくにしか使ってない…でしょ?』(やっぱり君は、やさしいんだ。彼女が人殺しであると自白しても……裏切り者かも知れないと言っても尚、君は彼女の身を案ずるのだから。)「……うん。」(君の気まずそうな笑顔は何だか不格好で、ほんの少し、やっぱりあの人に似てる、と思う。)(君の言うとおりに自身の頭に手を当てる。海馬の手前に掬った汚いその虫を探し出して____ああ。)【容量3消費。彼女の脳内に寄生した『さぶりみならず』は__3ロル分の逆行じゃあ、消せやしない。彼女の脳内に浮かんでいた【諦観】を、再び。】(もう、遅いんだ。)「おわんくんは……、やさしい、ね。」(彼女は自身の頭からそうっと手を離して、目を細めて君を見た。君の膝に手を置いて膝を立て、そうっと上半身を乗り出して手を伸ばす。)(小さな子供が、親に甘えてすがるように。もしも、もし君が受け入れるのなら、彼女は再び君の首に腕を回すことでしょう。)「わたし、」(わたしも。)「………………やさしいひとに、なりたかった。」『出来る懺悔は、………… 【 運命と向き合って生き続ける事 】 …だと思う。』(落ち着いた、自分とは違う低い声。話す度に喉が震えて、その感覚がなんとなくくすぐったくて好きだと思う。人より少し高いらしいその体温はほんの少しだけ泣きそうなくらいに。)『……アマヤドリさんは、………どう思う?』(誰かを殺して、誰かに殺される。それは確かに世の常で、その競争に……否、この世界に生まれ落ちたときからきっと、それは必然のことなのだ。そのレールから降りることなんてきっと、『世界から逃げる』ことでしかできやしないし、……逃げてしまえばきっと、もうまともになんて歩けやしない。)「」(頭に巣くった小さな文字が、ざわりと蠢いた。)「……そう、だなぁ。」(君のその問に答えないまま、彼女はちいさく、ちいさく嗚咽を飲み込んで。)「……もういっこ、おねがい、いい?」(酷く穢い、醜い、お願い。)「わたし、……わたしね。」「死ぬときは、きみに殺されたい、な。」(彼女は晴れやかに笑いながら、君の肩口を濡らすのでしょう。) (2/6 17:52:58)
日満寺 百貫>
「…ッ、ダメだ。………ダメだよ…」(それはまるで、だって、もう、自分がそうであるって宣言も同然じゃないか。うっすらと感じていた疑念が事実であると証明される事の恐ろしさを、確信してしまう事の怖ろしさを、目の当たりにしてしまっては、自身に身体を寄せてきた君にそう咄嗟に云い切ってしまうのだ。)「僕より先に君が死ぬなんて有り得ないじゃないか…だって、ほら、まだまだ色んな事が君を待ってるよ、それに、……僕は、………君を殺す事も、君の命に影響を与える事も出来ない、僕は、…"そういう人"だから、…せめて、君が居なくならないように僕は尽力するよ……」(彼は君の肩を抱き返す権利が自分にあるとは思えなかったのだろう。容姿も君にはそぐわない、そして、多分、君のそばに居るべきは自分ではないのだろう。)(君の為、みたいに、綺麗事を云っている様に聞こえるのならそれもそうなのかもしれないけれど、でも、多分これもひとつの逃げなのだと思う。自分の幸せの為に歩き続けるのはあまりにも恐ろしいんだ。もしもこれを受け入れてしまったら、失った時、自分のなけなしの何かが壊れてしまわないかって、だから、君の幸せを願うのが僕でも、君の幸せを叶えるのは僕じゃない。だから、…だから)「_________だから、生きて、幸せになろう、ね?」(彼は、そっと君の肩に手を置いて、引き剥がす様に優しく押し退ければにへら、と笑みを零す。嗚呼、今思えば自分がこの子の隣に選ばれたわけでもないのに、何を思っているのだろうか、そう、これはただ、…自分よりも低い立場の人間になら口が軽くなるような、そんな現象と同じで、君がそういう人だと言っているつもりは無いのだけれど、でも、多分…一人で勝手に盛り上がってるだけだろうから、これでいい。) (2/6 18:18:44)
雨夜鳥 志乃紀>
『…ッ、ダメだ。………ダメだよ…』「……、」(やっぱり君はやさしいから。嫌だ、なんて言わないんだ。強く拒むこともせず、自分のしたいこともせず。こうやって部屋に呼んだのだって、この間の邂逅だって、さっきのお仕事のことだって。君がするのはきっとずっとずっと誰かの為で、それはきっと美しくて社会の中では当然で、でも、それでも。)(医療を学ぼうと思ったのは、あの夜あの場所に居たのは、きっと君を愛するためじゃあ、ないのでしょう。誰かの為に、何かのために。……遠回しにそれが君自身を支えているのだとしても。人の心の本当のところなんて、彼女にはまるで分からないから。)「なんで……、なんで、何かのせいに、するの、」(柔く肩を押されたなら、彼女は傷ついたような顔をして、恨めしいような顔をして。……否、酷く悔しい顔をして、君の肩に手を置いては強く、強く押すのでしょう。)「拒むなら、自分の……っ、『ダメ』なんて、じゃなくて、……っきみのいしで、やだって、」(君の手は温かくて酷く安心した。自分の事を嫌いになるほど、君が酷く優しい人なのだと思った。悪いことを話しても否定しなかった、迷惑かけても怒らなかった。一緒に夜を明かしても怖くなかった、手を出されなかった、痛くなかった、苦しくなかった、安心できた、大人の、暖かい男の人。かささんと……、あの人とは違う、君という人。)「う”ーーー……っ、にげ、ないで……っ、いやだって、いってよう、」(彼女がこうやって君を汚そうと言葉をかけて、君に残酷な言葉を吐かせようとしても。穢い部分を暴いてやろうと手を伸ばしても。) 「ひとの直し方、が、わかるから、君もわたしをころせるんだよ、」「さぶ、……っ、きえなく、て、だから、だめ、なんだよ、」「死刑、が、あるみたいに、……っ幸せは、だめなんだよ、」「もし、もしゆるされても、るくすくんが怒る、んだよ、」「『ダメ』、なんだよ、わたし、だから……、」(功罪に縛られながらでしか自由に生きられない彼女だから。綺麗に綺麗に生きている君が、羨ましかったんだと、おもう。幸せになる権利なんて、彼女にはもうないのだから。)(彼女の力は弱い。成人男性の君が本気で抵抗すれば難なく彼女を押しのけて、鍵のかかっていない扉から出て行くこともできるだろう。彼女は君の肩をおして押し倒したって跨がって泣くだけで何もしない。できやしない。)(君がこっちに墜ちてくれたら、きみに正しく裁かれたら。きっと、しあわせになれると、おもったんだ。) (2/6 20:16:09)
日満寺 百貫>
「______なら、アマヤドリさんも自分の意思で、…教えて…ッ」(自分の意思がどれかなんて、分からないけれど、でも、多分、直感的に掴み取ったこれが自分にとっての正しさであるはずだ。君が今まさに口にしたそれの様に、君もそれが自分の意思ではない事は判っているはずなんだ、だから僕にそんな事を云ったんだと思うから、だから。)「……赦されても、ルクスさんが怒るから…… 【ダメ】なんて、拒むなら自分の意思で、……なんだよね?」(そう君は云った、ダメだと、だから君がどうなりたかったかは分からない、だから君がどうするべきかも彼には何もわからない。もしも今までの話を要約するのであれば、君が、そして、他のアークの人間が人を殺すのは、“生きる為である”という事にならないだろうか?ルクスという人間が、君達にそんな事を強いているという事にならないか?だとしたら、)「僕は、アマヤドリさんがアークの人間だろうと、…殺したくない。 ……だからと言って、僕は君が生きる為に殺されるつもりもないし、別の誰かを殺させるつもりもない…だって、……こんなの馬鹿らしいじゃないか。“僕ら”だって、きっと知らない内に沢山のルクレルク人に酷い事をしてきたと思う、…それのせいで僕達が仕返しされるのは、甘んじて受け入れなきゃならない。受け入れた上で、こんな事は終わらせなきゃいけないじゃないか…… もしも、…もしも終わらせられるとしたら、僕らだけだ。もしもアマヤドリさんが、……ぼ、………彼らと居たいと思ってくれるのなら、もしもアマヤドリさんが協力してくれるのなら、君の存在はあまりにも大きいよ。アマヤドリさんならこの連鎖を止められるんだ…ッ………それも、懺悔になるんじゃないかな……っ、今まで手を掛けてしまった人やその家族や友人たちも許してはくれなくても、納得はしてくれると思う…」 (2/6 21:08:51)
雨夜鳥 志乃紀>
「~~……っ、だって、だって、なにができるの、」(染みついた諦観と、我儘は深く。)「ころさなきゃ、るくす君が……、でも、でも殺したらだって、だって……っ、おわんく、ん、ころしたく、ない、けど、だって、」(そしてきっと、なによりも最悪だったのは、彼女自身がスパイとしてアルマデルに入った理由を。彼女がここに来た理由を、全て”雨に濯われて”しまったことだ。)(嗚咽混じりに自分の下にいる君の肩口をきゅうとつかみながら、ぽろぽろと彼女はそう零すのでしょう。自分の大事なアークの家族、ここで知り合った優しい愛しい沢山の人、自分の命、罪悪感、それから。彼女の抱える多くのことはどれだって同じくらいに大きくて、それでも最終的に自己愛が勝ってしまうものだから。命の天秤は関わりのない一般局員を選別し、彼女にそれを奪わせていく。)「きっと、でも……っ、いまも、ルクス君はみて、て…………、」(これ以上の罪悪感に苦しめられながら生きるのならば、そんな天秤など、投げ出した方が楽なのだと、何度も、自身に叩き付けたはずなのに。)「しに、たくな、い。」(彼女は未だ、死ねていない。) _____________「…………………、おわらせる、として、」(呼吸を少し落ち着けてから、彼女は鼻をすすりつつ君にそう聞くのでしょう。)「れいれいも、るるちゃん、も。ルクレルク人が悲しいのは、やだ……から、アルマデルがね、ちょっとだけ……嫌い。だ、けどね、おわんくんみたいにやさしいひとも、いるって知ったし……すきなひとたちもいる、から。……きみがしんじゃうのは、やだ、……。」(君の話すとおりに『終わらせる』ことができるのなら、それは勿論本望だ。互いに互いを恨んで好きで殺している人だって居るのだろうけれど、それは彼ら個人の問題だろう。存在が大きいと言われたって彼女には何もできやしないし、いまだってこうして君に馬乗りになったって、なにもできずに泣くだけだった。)「どう、すればいい……?」(目をぐじぐじとこすったのなら、君のお腹をぽんぽんとたたいてお願い、とちいさく急かしてみる。)(もう一つの正義を、探しに。) (2/6 21:43:43)
日満寺 百貫>
「………今まで、不審死した人間は居ないんだよ。それこそカミサマの仕業で行方を眩ました人間なら沢山居たけれど…今のところ、みんながみんな、アーク側のルールを守っているから誰も死んでいない。……考えてもみてください、今までアークの幹部達はこのアルマデルの施設内には一歩も踏み入れて来なかった。 抜け道があるんですよ…きっと彼らは把握できていない、僕達の行動や言動やデータを閲覧できたとしても、僕らの持つデータには誰かがアークであるとは記載されていない。………彼らも自分たちの拠点にスパイの情報を置いておくという事はしていないんじゃないですか…?あちらがデータを盗み見る事が出来るという力を持っている以上、僕達にも似た力が生まれないとも限らない、前例があるのだから警戒しない筈はありません…だから、彼らはスパイをスパイだと見分ける術がない。」(彼は淡々と仮説を述べるだろう。もしもこれが正しくとも、正しくなくとも、どっちだって良かった。君が前に踏み出すだけの口実になるのならば、あとは隣を歩いてもしもの時は自分が守ればいいのだから。)「いわゆる、首輪も名札も無い放し飼い状態。……執行猶予までに誰かを殺せなかったとしても自己申告してきたスパイを自らの手で殺すか、他人の手を借りるしか彼らに処刑方法は無いんじゃないでしょうか…でなければ、今までの事件で僕らに影響が無かったのも辻褄が合う。あの、バグの時、…アルマデル施設内の職員は一切消えていなかった。 つまり、幹部達が直接手を下す事は無い………それなら君がスパイであるという事実を消して誰かの手を借りても殺せなくしてしまえば手は出せない。 ………【人事考課権限】を使い、こちらの持つ情報を書き換えれば、…アマヤドリさんはアークから狙われる事が無くなる。……違いますか?」(もしも、…もしも、一歩踏み出せるのならば、もしも、逃げずに歩めるのならば、もう一歩、踏み出せるのならば、今度は、今度はちゃんと向き合えるのならば、これは、僕の懺悔になるでしょうか。もしも、…もしも、君が同じように運命に従いながら生きてくれるのならば、それは、彼女の懺悔になるでしょうか。どうか、もう一度___)
_________________________好機を。 (2/6 22:08:49)
雨夜鳥 志乃紀>
「……、わか、らない……けど、この間のバグのときは、なんにも知らされて、無かった。……入った後に、指令が来たことも、ないし……そう、なのかな、」(君の話す言葉は彼女にとっては難解で、きっと八割も理解できやしないでしょう。今の彼女にできるのは君の言葉の裏付けになり得る様な事実を思い出すことと、君の言葉を自分の分かる言葉に脳内で置き換えること。それだって殆どのことができなくて、結局は分からずじまいだ。)(けれど、それ、でも。)「わかんない、けど、おわんくんがいるなら_____」『____』(脳に巣くった、取り除けなかった虫は。今も微かに騒ぐから。)「…きっと、なんとかなる。よね。」(彼女は、未だ噛み砕けもしていない、硬い君の言葉を行儀良く受け入れて、それをそのままに飲み込んだ。噛まないと消化不良で良くないのよ、なんてかつて誰かが言っていたけれど、それすらきっとどうでも良くて。)彼女に根ざした【諦観】は、奥深く。(飲み込もうと苦心していた、迷うような表情は彼女からさらりとおちて。その顔に浮かぶのは穏やかな、静かな静かな微笑だけだった。)「これで、もう。」『__』「だれも、殺さなくって、済むんだよね。」(そうっとそうっと、君の柔い頬に手を伸ばす。諦観の滲んだ瞳に君を写し、彼女はそろりと君の上から退いた。)「ごめんね、…………その。内緒にしてくれる、と。うれしい、かも……いや、べつにいい、のかも。」(へへぇ、なんてほんの少し眉尻を下げながら、彼女は君に笑いかけた。自身の左腕をきゅうとつかみ、頭の中でざわめくそれに嫌な汗をかきながら、それでも。それでも下手くそに君に嘘を吐いたのは、きっと。)(…………きっと、なんとなく。嫌いで疎ましくて妬ましくて仕方なかった、綺麗で、優しくて、暖かい君に。)(きっとはじめて、寄り添ってくれた君に。)「あり、がと。ね。」(ほんのすこしでも、救われたからだ。) (2/7 20:08:36)
日満寺 百貫>
「大丈夫だよ、……僕は、しばらく情報を集める為に動くから、……そうだな、ええと、出来る限り時間を稼いでほしい、その…あとどれくらいの間ならアークの人は待ってくれるの?」(嗚呼、こんな時、どうしたらいいのか分からない。少なくとも、君はこの変化を恐れているはずなんだ。それは僕も同じだ。だから、不安だと思うけれど、今の僕には大丈夫だなんて言葉しか吐けないから、あとは自分の行動で示して証明するしかない。これが気休めの大丈夫じゃないように、もう誰かが泣かなくても良い様に、未だ芽吹かない希望を育むしかない。この小さな一歩が大きな何かを変える前兆でありますように、願う先はカミサマなんかよりも平等な太陽にでもしておこう。)「もし、…何か待ってもらうのに証拠が必要なら……その時は教えてね。少しだけなら協力できるから。」(その為ならば、片腕だろうと、片足だろうと、賭けてもかまわない、こんな自分が何かを変えられるなら、世界を、誰かの世界を少しでも照らせるのなら。出来る事ならその頬を撫でて、その体を抱きしめて夜明けまで一緒に居てあげたいけれど、多分、そんな時間は残されていないはずだから。僕は君を優しく遠ざけて、ベチンッと強めに頬を両手で叩いて荷物を抱えて立ち上がるだろう。) (2/7 20:41:37)
雨夜鳥 志乃紀>
「あとえっと……ちょうど、10日。……でも、だいじょうぶ。なんとかなるよ、……一人でも、だいじょうぶ。無意味に誰かを、傷つけやしない。から。」(大丈夫、だいじょうぶ。自分に言い聞かせるように、喉奥の言葉をあやしてなだめて飲み込むように。やっぱり君の言葉が見えないなぁんんて独りごちて、それでもいいかなと小さく笑って、寂しくなって泣きそうだった。)(先のことなんて、本当はちょっとも考えちゃ居なかった。ただ、それでもいいかと思ったんだ。)「今日、その。ありがとう……また、その。あそびに、きて、ね。お礼もしたいし……、おはなし、も。」(君にとられた距離を、今度は詰めようともせずに。彼女は君の背に手を伸ばして___その手をうしろに、そうっと隠して。)「…………また、ね。」(部屋を去ろうとする君の背を眺めながら、また一つ、次のお願いを。)『__』(この虫が体を這いずる、その前に。) (2/7 21:00:43)