白雪 > 大江楠美の報告書によれば、デッドマンラスベガスは寮の近くに出現したのだと書いてあった。同じような場所に現れたということは、イーコール反応を追っているのか、はたまた地縛霊のように特定の場所に執着する性質でもあるのか……兎にも角にも、【偶然】見つけられるなど期待などしていなかったそのカミサマと雪とは遭遇を果たしたというわけだ。絢爛なしつらえ、スロット、ポーカー、ルーレットの台。BGMも人の喧騒もなく静まり返ったハリボテのカジノは、夢の中のだだっ広い空間みたいに心をざわつかせた。「……」大勝して手に入れたチップをピエロの人形に渡す。これで本当に、あの人に会えるのだろうか?https://eliade.1web.jp/blog/31376.html#contents (2/14 15:31:42)
狗咬 当馬 >
「……おやぁ、ツクモ嬢…博打なんざアンタにゃ似合わねえと思いますがねえ… それに此処は“何の足しにも”為りゃしねえ賭場ですぜ? ………帰んなせえ。あっしと違ってアンタは忙しいはずでしょうよ。」(死後の世界が在るか否か、それは君には分からない、ただそこに現れたのは死したその時には既に失われていた両腕をハリボテのガラクタを寄せ集めて復元したその男だ。侍を名乗るには、今一つ何かが足らないその風貌で、ルーレット台の前の椅子に胡坐を掻いて規則的なのか不規則的なのか分からない円形の文字盤を眺めていた。その後ろ姿は、君にはどう映っただろうか。) (2/14 15:41:38)
白雪 >
「……あっ……」ピエロが示したルーレット台へと振り返ると、そこには貴方の後ろ姿があった。まるではじめからそこに居たのに雪が気づかなかっただけなのではないかと思うほど、ごく自然に。「……狗咬当馬。」改めて思えば、貴方の事をどう呼ぶのが正しいのかも解らない。唇から溢れたフルネームは遠慮がちで、他人行儀で、ぎこちなかった。ルーレット台を見ている背中は丸められているようにも見える。まさしく死人のようと形容するのはあまりにも陳腐だろうか。けれど、振り返った貴方がまたあの禍々しく獰猛な視線を投げかけてくれる想像が、どうにもできなかった。炎を燃えたぎらせる糧、削り、砕く命があるようには……少なくとも今は、見えなかった。「……帰れと言われて、はいというわけには……いかないの。……ひさしぶりね。」近づく事が出来ないまま、背中に声をかける。サングラスの記憶を読み取って貴方との時間を過ごしてきたような錯覚に陥っていたけれど、その実きちんと言葉を交わしたのは、あの忌まわしい研究の場が最後だった。あそこから歯車が狂って自分はおかしくなった。最もおかしくなった瞬間、痴態の限りを見られていたのだから、有りていに言えば気まずく……避けているうちに、貴方は帰らぬ人となった。羞恥と悔恨と、言葉にできない感情が綯い交ぜになった表情を隠すように俯き貴方の後ろで立っている事しかできない彼女の姿は、見ようによってはしおらしくすらあっただろう。「突然冥界から呼び出されたにしては、落ち着いてるのね。……まるであの世が存在して、何もかも説明を受けていたと思わないとおかしいくらいに。……ねえ、サングラスがすり替えられたの、気づいてた?……私の能力、しってるわよね。貴方がした事、ぜんぶ見たわ。話しがしたくて呼んだの。隣に行っても?」 (2/14 16:32:14)
狗咬_当馬 > (彼は全て聞き終えるまでただ黙って君の言葉に耳を澄ましていただろう。それとも言葉すら交わすのが面倒なのか、暫くの沈黙は君が一歩を踏み出して良い物か悩ませるのに十分だっただろう。だとしても君が歩みを進めようが実際に隣の席に腰を下ろそうが彼は嫌な顔一つせずに黙っているのだろう。)「……アンタこそ、あっしの事は知ってンでしょう?……如何だって構いやしねんですわ。何が摩り替ってようが、誰が生きてようが、死んでようが、…ただあっしゃ目的を果たす為にアンタみたいな狂人を利用したに過ぎない。 ……そのせいでヒトじゃなくなっちまったのは全くの誤算でしたがね。」)(死後の世界があるかは応えない。応えてはいけない。自分が狗咬当馬である事にも否定も肯定もしてはいけない。それはきっと遺恨を遺す事に為りかねない。喚ばれた以上は此処に居る。しかし、それ以上も以下もするべきではないと彼は思っているのだろう。もしくは、そういう風に作られた幻なのかもしれない。人智を超えた神格の為す事象に確定的な物はきっと無いから、彼が彼である証明も、彼が本当に此処に居ると言える証明も、君には出来ない。君はただ、記憶の中の彼が此処に呼び起されただけであるという虚しい妄想が事実に成らないようにカミサマに祈るほか無いだろう。) (2/14 16:46:05)
白雪 >
何が摩り替わってようが、誰が生きてようが死んでようが……その感情は尤もだと思えた。今となって貴方は、同じページに居る事すらも赦されない存在となってしまったのだから。死んでは元も子もないし、何もかも終わった。そう思えてしまうほど、貴方は何も遺せなかったのだろう。「そうよね。わかってる。……途中だったのよね。」狗咬当馬の目的は例の幼馴染にまつわるものなのだろうと、なんとなく仮説を立てる。けれどその人はもう救えない。だから彼は、自分の罪や感情と真っ向から向き合い続ける事を選択したのかもしれない。死ぬまでそれに終わりが無ければ、目的が果たされるビジョンも無く、あくまでも自分の精神世界の話へ煮詰まるからこそ、自分の居なくなった世界にまで、もはや用はないのかもしれない。「うまく言えないのだけれど……目的だとか、何がしたかったのかとか、そんな事根掘り葉掘り聞いて満足する為に、あなたを呼んだ訳じゃない。ただ話足りないのだと思って付き合って欲しいわ。」ようやく勇気を出して一歩を踏み出し、貴方の隣に腰掛ける。「……貴方を憎もうと、愛そうと、いまさら仕様がない……そう思っていても、それでも染み付いてとれないの。私、これからどう生きていけばいい?………………知ったことじゃないんでしょうね。でも……貴方の変わりが居ないのよ。あの日からずっと貴方に囚われてしまっているのに、貴方のことを何も知らないの。」貴方が本当はどう思っていようが、遺志を果たすだとか、復讐を果たすだとか、たとえお為ごかしでも自分なりに解釈ができるだけの情報すらのこりはしなかった。狗咬当馬という存在は、それと出会う前にどうして生きてきたのかを思い出せなくなる程の衝撃だったのだ。「どうせ24時間後にはまた居なくなる。すべてが終わった今だからこそ、しがらみを捨てて話したいの。……まずひとつ聴きたいわ。貴方、生きることから解放されて楽になった?」 (2/14 17:14:53)
狗咬_当馬 > 「嗚呼、……楽になった、でしょうねえ。」(カジノには似つかわしくない酒の香りを湛えたグラスには恐らく日本酒が入っていたのだろう。ルーレット台の淵に置かれたそれを盗み取る様にするりと手に取れば、口を付けて傾ける。サングラスに隠された表情も横顔ならばきっとうかがえるはずだ。それは何処か遠くを見る様にグラスの中の水面を見つめている。)「……あっしゃあねえ、…迷ってたんでさ。自分が選んだ道が本当に正しい道かどうか。………けど、進まざるを得ねえなら自分を騙しながらでも歩き続けるしかありゃあせんでしょう? ………生きる糧を見つけた途端に行くも地獄退くも地獄って云うじゃあありゃあせんか…」(語れる事はそう多くはない。親友を助けられなかった。助けすら求めなかった親友に罪悪を抱いて、助けすら求めなかった親友に憎悪を抱いて、助けすら求められない世界に殺気や呪詛に悉くほど近い呪怨を抱いた。)「………ツクモ嬢もこうなりたくなきゃあ、… 自分が"善い"と念う事を為る と良う御座いやすぜ。」 (2/14 17:32:06)
白雪 >
楽になったでしょうね、とどこか他人事のような言葉が引っかかる。その表情もなにもかもがふわふわと浮ついて、地に脚がついてない。幽霊というのはこういうものなのだろう。ならば、生きているのにまるで貴方と同じ、目的を失って生き永らえているだけの自分は何なんだろうかと思った。「……私も死ねば楽になるんでしょうね。……もう疲れちゃった。」私も貴方も、一生赦されやしないと貴方は言った。「修羅の道を往くと決めていたのなら、誰かにやっつけてもらうしか、終わる道はないんでしょうね。……どうせなら、貴方と一緒に逝ければよかった。」そう言うと、雪はヴェールを脱いで手で髪をくくった。「……ねえ見て、私ね。ルクレルク人の血が入ってたの。だから削ぎ落としたわ、この耳。……ふふ、あの日私を組み伏せた時、貴方には見えていたのかもしれないけれど。」手を下ろすと、髪が肩に掛かった。ヴェールを畳みながら話を続ける。嫉妬にかられながら生きてきたこと、自分の存在価値を見つけようとしていたこと、そうなった過去やしがらみを、掻い摘みながら訥々と吐き出していく。花嫁衣装のようにも見える、彼女の象徴のような白を畳みながら。「こんなにねじ曲がってしまった私に、貴方の歪さだけがぴったりと合ったわ。結局は色恋の話だったなんて呆れているでしょうけれど……そんなものだと思わない?たまたま近くにいたから。たまたま利用するだけの価値があったから。たまたまそれが、私の求めて止まない歪さだったから。そんなもの、そんなものなのよ。」「貴方は、私が死ぬのを赦しはしなかった。……どうしてなんて聞かないわ。自分が自分でなくなるような赫怒に突き動かされて、わけが分からなくなっていたと言われても、それすら共感できるもの。……赦されないままでいい。ただ、白雪でいるのは、もう終わりにしようと思うの。」雪はすっと椅子から降りると、人形に近寄り、何かを告げながらチップを渡した。対価を受け取ると、また台へ戻ってくる。その手には鋏が握られていた。「髪を切ってくれない?私、女でいるのを辞めるわ。その前に、もしできれば、最後に、……」話しながら声が震えて、塩辛いものがせりあがってくる。息を吐き出して、背を向けた。「……なんでもないわ。ごめんなさい。」 (2/14 18:13:29)
狗咬_当馬 >
「……さいですか。」(彼はぐっと残った日本酒を飲み干せば、席を立って鋏を受け取るだろう。彼は君の言う言葉の全てを肯定せざるを得なかった。そうだ、人間同士の関係なんてものは利害の一致で、その場にいた最も条件を満たしている誰かがその役をやっているに過ぎない、だから自分が自分じゃなくともアンタが今抱いている感情に代わりは無かったのだろう。ただ偶然にその感情を抱かせたのが偶然そこに居合わせた自分であったというだけでしかない。全ては代替可能な“唯一”という名の集団幻覚に過ぎない。そうと知りながら、全くどんな育ち方をしたらこんなに我儘になるものか。此処に至るまで後生大事に携えた刀を失った自分に、切れ、だなんて。どんな皮肉だろうか。わざわざ自分を呼び出して、皮肉めいたその願いを、自分にするのは、君もきっとその幻覚を見ているひとりであるという証明なのだろう。)「含沙射影……《怨孵し》…」(彼は頭上に浮かんだ札を手に取れば、受け取った鋏にそれを重ねるだろう。青く禍々しく鋏に纏わりついた炎はかつて彼が守り続けていた刀の残滓を象るだろう。そのまま、彼は君の髪だけをばっさりと切り落とした。この場所を去るまで解けない粗末な呪いを貴方に掛けて。)「……あっしにも、何故か解らんのですわ………偶然近くに居たから、偶然利用するだけの価値があったから、偶然あっしの求めて止まない力の根源だったから…………それは認めますぜ、けど、ツクモ嬢。」(彼は君が何を求めていたのかはわからなかった。けれど、女で無くなる前に為し得たかった事が何かは判らないが、君が女だろうと生者だろうともう会う事のない相手だろうと、刀を象った炎を纏う鋏をその場に放り、まるで今まで一度もそんな事をしたことが無いかのように、まるでどうしたら良いのか何も分からないかのような恐る恐る入れられた弱い力加減で君の後ろ姿を抱きしめるだろう。)「……けど、それなら、きっとお互い別の利用対象を探した方がよっぽど利口じゃあありゃあせんか………そんな事も分からねえ莫迦じゃあ無かったはずでしょうよ、お互いに。 ………きっとアンタの何かがあっしを莫迦にしちまった事は、間違っちゃあ居ねえんじゃねえですか?」(ほんの数秒、君の身体のぬくもりを感じて、その細い体を感じて、君に掛けた呪いを反芻して、君に掛けた祝福を反芻して、腕を放しては、そっとその背を押すだろう。)含沙射影《怨孵し》によって鋏に札を付与し、これで影響を与えた白雪から一時的に【振り返る】という行動を削り取った。アンタは、アンタが善いと念う道を往くんですぜ。 (2/14 18:57:21)
白雪 >
髪を切る音が、耳の後ろで残響する。こらえていたものが、つうと頬を流れた。「……」運命だの、貴方じゃなきゃいけないだのなんだのと、大言壮語で彩って都合のいい夢にした瞬間に稚拙になってしまうのが嫌だったのだろうか。けれどその言い訳の中にほんの一握り捨てきれなかったしがらみだけが、彼女を彼女たらしめていた。女でなくなる前に、最後に抱き締めて欲しいと、きっと自分は言いたかったのだろう───────継ぎ接ぎの腕が体に回った時、そう思った。「……………ずるい人ねえ。……自分だけ、すっきりしちゃって」涙は、あの一筋だけ。切なげに顔を歪めてはいたものの、ぼろぼろと泣き崩れる事もなく凛と呟いた。これ以上の言葉は野暮だと、背中を押されたまま前へ歩を進める。人形しかいないハリボテのカジノを出てから、ようやく振り返る。「……女が髪を切る時は、失恋した時って相場が決まっているのよ。」デッドマンラスベガスは、24時間以内にその稼ぎも、会う事が出来た誰かも【失わなければならない】。最後の言葉に私もそうだと、貴方を愛していたと言えば白雪の恋は成就したと言えるのかもしれなかった。けれど、雪はその喪失感だけを抱えていくだろう。「……デッドマン・ラスベガス。その召喚に成功。……報告しないと、ね。」会いたい人に会えるカミサマと【偶然】遭遇するなんて、虫のいい話がある筈がない。初めから、貴方を失う事は解っていたような気がした。【H.O.変更:特権階級→ドルイド…捕獲されているカミサマの性質もしくは性能を模倣した能力が使える。ただし、使う度に侵蝕が1上昇する。】帯に挟んで持ち歩いている手鏡を出し、もう見る事はないだろう自分の顔貌をじっと目に焼き付けた。白雪の人生は、ようやく最期の時を迎える。【コード改竄】【高い解像度を有する反射物に触れる事で、それに過去写ったものを『異性』にする事ができる。】………まだまだそっちには、逝けそうにない。〆 (2/14 19:41:43)