ダウノット >
( 先日のArkとの1件から、SIR_3299_JPN 三途之川に対抗しうる解毒剤、或いは耐性剤、或いは戦闘時に置ける高性能な回復薬が必要である。謎の仮面の人物やアルマデル職員の活躍により奇跡的に統計的な死亡者は居なかったものの、その話は尤もであった。であるから、200時間の間に限り、なんでも治す性質をもつ二人菓子の研究をするようにやや偉そうに指示されたのも、多少の反骨精神は働きかけたが尤もなこと。であるからして、彼女はそれはもう快く引き受け、それなりのやる気には満ちていた筈だった。共同研究者名を見るまでは。『 ………すまない、予定時間より少し遅れてしまった。…6番小隊所属、ダウノットというものだ。今日はキミのバディのようなものを勤めさせてもらう、宜しく頼んだよ。 』紙とペンを実験室特有の滑らかな机上に置いた彼女はそんな風に、何度もシミュレートした台詞を口にした。小さくぺこり。と、頭を下げれば、白い花と長方形のピアスが揺れる。いつもと変わらない無表情、じぃ……と貴方を一瞥した後、二人菓子へと向けられた瞳。相変わらず、考え事をするときの癖で、口元に布で覆われた手を寄せる姿はいつもとなんら変わらない。………だが、耳の良い貴方は気付いていただろうか。彼女の心拍数がかなりの所で早いことに。それに加えて、15分前からこの部屋の扉を開けるために、掴んでは離し、掴んでは離し。気分を落ち着かせるために深呼吸したりうろうろと歩き回ったりしていたことを。時折ぺちぺちと、頬を叩く音だってしていたことを。扉を開ける。その行為に何れ程の時間と覚悟がかかったことか…。そんな彼女の奮闘に気付いていたとしても、あまり触れない方が良いことだろう。) (2/16 22:31:51)
sk >
(君の逡巡は気が付いていた。靴が躊躇いがちにたたく床の音、微かにゆれる布の鳴き声と、触れる度に小さく揺れる扉の隙間まで。__彼はその理由を知らない。彼は自身の遺伝子を残した後、生きるために、自身を、周囲を守るためにこの場所を出た。……追ってきた研究員の言葉につられて戻ってきたは良いけれど、自身の子が誰かなんて、教えてもらえやしなかった。保護サイトに収容されているカミサマの中も、監視対象になっているシキガミの子たちも、自分で全員見回った。……それでも、面影の残るものは誰だって見つからなくて。だから。)『よろしくおねがいします。……その、あまり緊張なさらないで。痛いことは、しませんから。』(だから、君が自身の遺伝子をひく子であるとも。君が自身の求める相手だとも。……君が、一番に抱き締めたい相手だとも気が付かないまま。君の手をさまよわせた理由なんて、何一つ理解しないままに、彼は君を曖昧に許し、君に合わせて頭を下げた。) 『始めましょうか。……これが、例の。』(色のない肌、色のない指先で、彼は研究対象の入れられたボックスから小さな袋をつまみ出す。回収された二人菓子は一人分ずつに小分けにされ、おおよそ一人が食し効果を発揮するに足る分量に分けられている。)『概要程度は読んで来たのですが……その、自分はあまり、頭が良くなくて。』(彼は元来そこまで口数が多い質じゃない。耳が余計に良いせいで人混みは苦しいし、静かな空間でだって十分に耳を楽しませるに足る情報が入ってくる。)『ええと……たしか、傷を治してくれるカミサマ、でした……よね。』(そんな彼が話すのはきっと、君の芯の音が忙しなく、それがきっと、彼にとっては泣きそうなくらいに痛く響くからだ。)(瞬きをするように、ぱちりと瞼を上下させる。瞬いた翡翠は君をたしかにそこに写し、……それから一つ、彼の息は止まり。)『……………………………………、その。』『……君は、私を見ていて下さい。』(そういって、何でもないようにきみからふいと距離をとり。こつこつとテーブルを指で叩き反響から自身の位置と物の配置を把握したなら、実験器具の中から器用に選り分けたメスを、自身の手の平に突き立てた。) (2/16 23:07:10)
ダウノット >
………………キミが、馬鹿みたいに優しいカミサマであることは知っているよ。一緒に研究するにあたって、他の研究員からその程度の事は聞いている。( 近くで響く貴方の声。記録された資料でもなく、誰かと話しているのを遠くから聞くでもなく、…正真正銘、貴方から、彼女に向けられた言葉。彼女は呆れたように溜め息を吐き、無用な心配だと言いたげにきゅうと眉を寄せる。見るからに不機嫌で、……本当は嬉しくったって、貴方から見れば初対面、心臓が高鳴るのは緊張していたり怯えているからで、顔が緩んでしまったって、ただの不審者で。だからぎゅうっと顔をしかめて、的外れな心配に不快であるふりをした。心拍数だけは、どうにも完璧に誤魔かしは出来なさそうだけど。『 ……ん、【識別番号】NIN_2024_JPN、【通称学名】ニ人菓子。綿菓子のような見た目をして居るが、これでもれっきとしたカミサマだ。……傷を治すとはいっても、効果は200時間以内。200時間経過すれば、治した傷も元に戻ってしまうけどね。 』いつの間にか所持品に加わっている、という特異性も持ち合わせてはいるが、それは今回の実験には関係のない事項だろう。透明なビニル袋の端には年数が記載され、貴方に倣うように取った代物は数年前のもの。防腐剤のようなものは入っていない。にも関わらず、その綿菓子は昨日買ったばかりの物のように白くふわふわで、腐ったり溶けている姿は見られなかった。三途之川の毒性のみが取れたように、この二人菓子も治す性質のみを取り出す、或いは不可逆的となれば高い成果にはなるのだろうか。自身が成果を上げたところでぶん盗られるのだと考えると、嫌気が差さないこともない。暫く触っていても、布や袋越しとはいえ、伝わった熱が二人菓子を溶かしてしまうことはどうやらないようで、それが分かるほどの時間、貴方が息を飲む最中まで、珍しく彼女は静かだった。彼女にとっては微かな、貴方にとっては大きな心拍音と、ビニル袋がかさりと擦れる音だけが、二人きりの研究室の中に響いていた。「……………………………………、その。」『 、…うん? 』「……君は、私を見ていて下さい。」そんな中声をかけられて、彼女の肩は内心じゃ大きく、実際は小さくぴくりと跳ねる。やや勢いよく見上げた顔は瞳を閉じていて、それでも普段より近く、近いだけ綺麗に見えていた。がっしりとした、しかし痩せた体躯、近しい髪の色、気のせいだと言われたらそれまでな程に、実はほんの少しだけ、お揃いの角。痛々しい傷跡は、直視すると胸が微かに締め付けられる。細かく全身を見て、貴方の高い背に合わせるように、机に手を付いてほんの少しだけ背伸びした。『 ……見ていろ、というのは……………なんだい、ボクはじろじろとキミのことを観察するような趣味は……………? 』そう言いながら、何処までも真剣に見詰める瞳は貴方から一切反らされなかった。目を閉じているにしては、まるで見えているみたいに貴方は歩く。2m程後ろを、少し遅れて付いて回り、メスを手にしたことを理解し、……………メスを手にした?何のために、そんな疑問が浮かぶのと、鮮血が散ったのは殆ど同時の事だった。『 』『 ─────、な、に、なに、してるんだ……!? 』メスの合間から鼠色の血が滲み、赤でないだけ視覚的な作用はましなものの、色が違うだけで血が出ていることには代わりがない。痛みだって、何度も受けたことがあろうと痛いことに代わりはないだろう。顔を歪ませて、歩み寄った彼女の震えた手は弱くも机を叩く。そういう人だ。馬鹿みたいに優しい、そういう人なんだ。だからって、『 きみ、キミはほんっっっとに……っ、二人菓子の研究のためとかなら、怪我をするのはボクの方でも良いだろう!? 』 (2/17 00:12:31)
sk >
『いいえ、……いいえ。私で、良いんですよ。傷が一つ増えたところで変わりませんし……痛いことはほら、慣れています。』(ゆっくりゆったり、落ち着いた調子で、彼はまるで御伽噺を寝室で語って聞かせるように言葉を零す。)『私は目を…………、君は利口で、きっと賢い。私よりもきっと、多くのことに気が付きます。適材適所、ですから。』(血液のこぼれる手をぎゅうと握り、血が床を汚さないように気をつけながら、また彼はひとつ瞬いて。そっと、机を叩いた君の手にもう片方の手を伸ばし、傷つかないように包みたい。彼の話したことはきっと、冷静沈着であろう君だって理解できるはずだ。体を走る縫い跡も、それが物語る傷の数も。滅多に開かない彼の瞼も、きっと観測者には向かない。……良い子だから、ね。そんな風にあやすように、彼は無機質な冷たさを湛えた硬い指で、君の手を、服越しだって宥めようとするだろう。)『あー…えっと。…………わたがしを、食べたいのでしたら、その。お金はあげますから、街で買うといいです、多分。……ついて行けたら、良かったんですけど。』(触れてなだめようとしたって、それはきっと一瞬のこと。君を娘に重ねて見てみたって、君からしたら、彼はただ一緒に実験をしているだけのカミサマ、のはずだから。君が怒った理由ぼんやりと考えたならそんな言葉を君におくって、困ったように笑いながら、封をあけた二人菓子を口にする。灰色の口内に溶けていく綿飴はやっぱり真っ白で色がない。……そこだけ、世界に切り取られたみたいに。)『_____味は甘い、です。すぐ、ふふ、面白い。すぐに亡くなって消えます。舌で押しつぶすと……アメ?みたいに、ちょっと固めの、甘い塊?みたいになります。……あ、メモ、おねがいします。』(味、食感、その他の感覚。微笑を零しながら彼は情報を口にして、君に記録を任せるだろう。手にこめていた傷口はぱっとひらいて君に見せ、それがどのように癒えていくかも含め。)『……、こんなところで、大丈夫でしょうか。』(君の記録の音が止んだ頃、彼はぽつりと君に問う。またひとつ瞬いて、愛おしそうに、微笑んで。) (2/17 00:47:42)
ダウノット >
っ……………、( 上手い反論は浮かばなかった。だって、自分が怪我を負う側になったとしても、きっと同じ事を言っただろうから。エリアーデの血の採取や、仮にもカミサマの、…キミの遺伝子を継いでいるのだから、それに何の成果もなくとも定期的な検査は必要になる。彼女だって、好きじゃないが痛みには慣れていた。だけどそんな風に穏やかに論じられて、同じ事を言いかねなかった以上、それは自分にとって筋が通り、理解が出来てしまうことで、『 …………そういうことじゃ、…ない、』包まれた手をきゅうと握り締める。それでも、キミが怪我をするのは嫌だった。『 …そういうことでもない、あんぽんたんめ。………でも、食べたいからお金は後でボクにあげること、…今更やっぱりなしで、はボクが許さないよ。 』直ぐに離れてしまった手が冷たい。その思い毎、深呼吸で飲み込んだ。理屈を通されたのなら、何れ程嫌でも、貴方に特別な感情を抱いていたとしても、通し続けないといけない。いつまでもぐずぐずして、貴方の怪我をただの怪我にしてしまうことが、何よりも何のためにもならないのだと分かっている。ちょっと待ってて、そんな声と、ぱたぱたと響く急ぎの足音。それから、紙が擦れたり、ペンの転がるような音。落ち着きのない賑やかな小隊を引き連れて、彼女は戻ればシャーレを貴方の側に置いた。怪我をした方の腕を控えめにつっついて、誘導するのは置いたばかりのシャーレの上。『 ……嗚呼、うん、記録した。食レポ上手だねキミ。他の下手な記録を残すやからに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいくらいだ。それから、下にシャーレを置いたからそのまま手を開いて大丈夫だよ。寧ろ開いて、そこに血を落としてほしい。ああでも、今なかなか口頭じゃ説明しづらい感じで治りつつあるから無理に落とす必要はない、自然と落ちる分だけで充分だ。……とはいえ、後々採血は必要かな。 』ペンが紙の上を走る、見せられた傷口は離れ離れになった皮膚が手を繋ぐように、或いは互いを喰らい合うように引っ付き、そしてもう離れることはない。そんな光景に、ぅゎ………と小さな声が彼女から漏れた。皿に溜まった血はスポイトで吸い、小瓶に落としたが検査に使えるような質と量かは微妙だろう。比較する過去のデータは、忌々しくもアルマデルのデータバンク内に恐らく残っている筈だ。キミから得た情報と、実際に見た情報、記録されたそれらの内、重要そうな事項に下線を引けば、そこでペンの音は止まった。『 …………ん、こんなところで、…………大丈夫、だよ。……、…二人菓子を食べたということは、この世界の何処かにキミのドッペルゲンガーが現れている筈だ。そのキミの手をもう一度、メスで刺せばキミの怪我は完璧に治る。…ただし、そのドッペルゲンガーと出会えば、キミは死んでしまう。普段行かないような場所に引きこもるか、……それかいっそ、』『 …ボクの部屋にでも、来てみるかい? 絶対に来る機会なんてないだろう。 』ころころと転がるペンを、静かに拾った。血のついたメスも、密封できる袋に閉まって、それで、一旦の調査はおしまい。確認と、直視してしまった笑みに激しさは変わらずとも、力強く鳴る心臓の音を誤魔化して口数を無理矢理増やした。冗談半分、…わがまま半分。こうして話せたのは今日が初めてだった。いつも遠くから見るばかりで、話し掛けられる訳もない。今日が終われば、或いは200時間が過ぎれば、また、そんな風になるのだろうかと。そう思うと、『 …………なんてね、面白くもない冗談さ。人を招けるような可愛らしい部屋もしていないことだし。……一見治ったように見えるけど、痛んだら直ぐに人に言うこと、良いね? 』アルマデルの事情も、ドッペルゲンガーのことも忘れた訳じゃない。一時の幸福や執着心にかまけてなんていられない。………何より、キミはボクのことを知らない。せめてもの記念に、袖から手袋に覆われた指先だけをちょっぴり出して、怪我をしていたキミの手のひらに、大きさを比べるときのように重ね合わせる。…一緒に二人菓子の研究をした6番小隊のダウノットが、貴方の記憶に少しでも残ったなら、それだけで、充分すぎる。) (2/17 01:55:40)
sk >
(ほら、思った通りだ。君はやっぱり手際が良いし、指示だって分かりやすく的確だ。小さく溢れた、忌避を甘く溶かしたような苦い溜息に若干の申し訳なさを感じながら、それでもそれは実験のためだと、そっと堪えて君の声を待つ。硬質な机とシャーレのぶつかる小さな悲鳴、ペン先が記録紙を削りインクを流し込む微かな音。景色の……、彼のせいで変わる、君のかすかな心拍と息の歩調。君の言うとおり手を開き、君の言うとおりに身を固めていれば耳は自然と意識を集め、そわりとその身を粟立たせる。)「…………大丈夫、だよ。」(そんな君の声に合わせ、ゆったりと手を握り、自身の手の平の感触を確かめる。滴った血の分だけぬるついた感覚こそあれど、傷ついたぴり、とした感覚も、それがそっと神経を撫でることもなく。きっとそこにあるのは自身の血液に濡れた、健康な手の平だけ。)『ありがとう、ございます。やっぱり……、私じゃ、こうもきちんと記録はとれなかったでしょうから。』もうひとつ、ありがとうございますと彼は丁寧に頭を下げた。ドッペルゲンガーのこと、その後の処置のこと。)『女の子がそんなこと、簡単に言ってはいけない。……私がもし君の、父親だったなら。……とても、…………きっと、きっと。すこしだけ、さみしがると、おもうので。』(君の嘘か真か、曖昧に混ぜた言葉だって聞き逃せなくて、それでも君が娘であるとは彼にはどうしても言うことができないから、彼もまた君みたいに、それの程度を曖昧に混ぜて小さく零す。君の小言はどこかだれかの母親のようで、きっと君もこうやってだれかにその身を案じられて生きてきたのだろうか、なんて考えて。自分の娘も、誰かに愛されていたら良いと願った。自分の娘を今まで愛してやれなかった分、自分も君の母親のように、娘を愛してやれたらと。そんな風に、願うから。)『私も、娘がいるんです。ずっと、…………ずっと、会えていないんですが。自分の娘が初めて会う男性を部屋に招くのは、その。……君を卑下するつもりはありませんが、その、親として……もっと、自分を愛して欲しいと、思います。…………傍にいてやれない父親が、何を言ったって届きやしませんけど、ね。』(自身の手の平に触れたそれにぱちくりと目を瞬かせて、それが君の手だと気が付いたのなら。緩慢な動きで、君が何時だって逃げられるような、そんな柔らかさと優しさで、その指先を包み込むように彼はそっと手を握る。……彼には、君が何を考えて居るのかは分からない。早鐘を打っていた心臓、怒って叩いた机と丁寧な事務の態度。……にしてはきっと、几帳面な様子からは少し予想外れな、ちょっぴり近い二人の距離。君が彼に何を抱くか、分からないけれど。……わからないけれど、きっと彼は何だって、君のその感情を“許す”だろう。) 『心なしか……そうですね。ちょっといつもより体の調子が良いのも、このわたあめのおかげかも知れない、のかな』(そうっとそうっと手を話したなら、彼はそう言って体をひねり、動かしてみせる。満足に睡眠のとれない彼は体に様々な不調を抱えている。それらが全て解消されているなんてきっと久しいことで、常に穏やかな笑みを湛えている彼の顔は、最初の時よりもきっと晴れやかで明るいことだろう。)『私の部屋は不用意に人が立ち入らないようになっていますし、管理されているので大丈夫です。……その、もし。ひとつ、お願いが。』(ドッペルゲンガーがいる以上、長く自室を出ているわけにも行かないでしょう。研究室をあとにすれば、きっとまた君と話す機会は遠くなる。……だから。)『私のドッペルゲンガーの処理を、君にお願いしたい。……申し訳ないけど、頼めないだろうか。』(きっともう一人の彼も、君になら。……君に刺されるのであれば、きっと。きっと、悲しくたって飲み込めるから。) (2/17 02:36:57)
ダウノット >
どういたしまして、……………、っ……………………ぁ…… ( もしも、自分が娘だと言えたら。貴方の娘だと、告げて、抱き付いたら。そしたら、そしたら、抱き締め返してもらえたり、して、ハッピーエンドと、言われるものになるのだろうか。言いたかった。言いたくって堪らなかった。ボクは貴方の娘だと、お父さんって、呼びたかった。でも、きっと貴方は知らない。娘が生まれたことも、父親の、貴方のカミサマの力をあまり引いていないことも、一般人に紛れ込もうと思えば紛れ込めてしまう程に、けれど何処かずれていて、完全には溶け込めない程度にしか、似てないことを。湧くのは、娘が居たなんて嬉しい!ではなく、困惑と、その優しさ故に生い立ちを想像して、背負ってしまう罪だけだ。幼い頃から分かっていたこと。だから、見送って、見送って、見送って、「私も、─────」『 っ──────、………………あぁ、うん、…そうだね、その通りだ。いやあ~なんだろうね、あまり父親からの言葉と言うのは貰ったことがないものだから、なんだか、うん、…照れてしまったよ。確かに迂闊だった、キミだから口にしたことではあるけれど、もう少し気を付けることにしよう。具体的には、他の人には口にしませんって具合に。 』〝私も、娘がいるんです。〟どっち、だろう。こんな形で、望まれないような形で生まれた娘か、それとも、アルマデルに居なかった間の、誰かとの娘か。前者なら、積み上げた思いをこれ以上崩さずに積みきれる気がしなかった。後者なら、…言えるわけが、ない。知らない内に、娘がもう1人出来ている。その上キミは、娘の事を大切に想っている1人の立派な父親で、会えない寂しさや愛しさを抱いた立派な家族で、口にすれば、それは壊してしまいかねないもので。キミに愛されて、まだ会えていた頃こんな風に手を握ったりしていたのだろうかと、初めて見たときから素直に駆け寄れていたら、そんな風に慣れていたのかと思うと、無駄なことなのに泣いてしまいそうで。良くない感情の本流に、声が震えてやしないだろうか。上手く隠せているだろうか。キミの瞼が閉じていて、ああ、ああ、本当によかった。『 それは良かった。安心したのと、普段のキミの調子に不安が残るな。普段からそう成れるような生活をしろと言ったところで、難しい面はあるのだろうし………、…………ふむ、お願い。 』手が離れるのは2回目のこと。寂しくなった手を袖の内で、1人きり、ぎゅうと抱き締める。『 …………お願いのお駄賃は、わたあめ1個分としようか。それでよければ、うん、引き受けることにしよう。 』『 さぁて、時間が惜しい。キミはドッペルゲンガーに遭遇する前に自室に籠らなければならないし、ボクも早く今日のデータを提出して、キミのドッペルゲンガーに会う準備を進めなくっちゃあならない。折角だ、ただのキミには出来ないことの1つや2つはしてしまおうかな。なに、悪いようにはしないよ。だから…、………うん、キミは安心して久方ぶりの元気な身体でのんびり過ごすと良い。ボクへのわたあめ代の事でも考えながらね。 』ぱふ、と1度手を叩こう。布越しじゃあ、大きな音はなることはない。それでも微かに空気を震わす、その事象は存在した。急かすように、背中をトンと一度叩いて。冗談めかして語る言葉はいつものように。ドッペルゲンガーでも、偽物でも、キミを、父親を傷付けなければならないこと、その事実に、じくじくと胸が痛みながら。) (2/17 03:38:07)