sk&ダウノット

sk >
 (植物棟のベンチにすわり、彼はその顔を天井に向けた。日の光が入るようにと鉄の格子にガラスのはめられたような透けた天井は、そこにとまる鳥の影をそっと落とし、それは夜に浮かぶ星の裏の姿のようで、幻想的ではないにしろそれなりに趣深かいのだ、けれど。)『今日は……、また一段と。』ぱちり。(瞬いた翡翠はいつにも増した星の数を認め、彼は小さく息を零す。二日前に行われた清掃作業のせいだろうか、まっさらになった天井に我先にと鳥たちはその足をつけ、自分の痕跡を影にして落とす。彼の座ったその場所も気付けば影が落とされて、じんわりと温まった頬だけがしんわり、しょんわり冷えていく。ちょい、と身をずらせば別の影に入り、またずらせば別の影。満点の影はそれはそれで面白いと思うのだけれど、これはちょっぴり困ったなぁ、なんて小さく笑い、彼はそうっとベンチから立ち上がる。)『……、』(さて、今日はこれからどうしよう。そんなふうに植物棟内をふらりと歩けば、聞きなれない足音に、小さく鳴るアクセサリーの金具の音。ここに来る人は大抵が小休止を求めているから足音は穏やかになるのに、君のそれはちょっぴり違うように思えたものですから。)『こんにちは。……そんなに急いでいては、綺麗なものも、見落としてしまいますよ。』(おせっかいとは知りながら、彼は君にそう声をかけた。見過ごされてきた花々も、草や木も、とってもとっても美しく、暖かい。)『………、ね。はじめましての、お嬢さん。』(ぱちりと一つ瞬いて、君の美しい瞳を見たなら小さな驚きを胸に秘めて。) (2/21 23:13:22)


ダウノット > 
…………出迎えご苦労。…なんて、キミからすればそんなものではないのだろうけれど。(父親とは。男性の親の事。子が父に、父が自身を指すときに、母が父を呼ぶときには、お父さんや親父なんて風に、形を変えることもある。親とは、子を持つ人の事。血縁的に、或いは環境や関係的に、持つの形も自在に変わる。意味なんて辞書を引けば幾らでも分かることだ。引かずとも誰かに聞けば、聞かずとも本や周囲を見て学んだ知識から導くのは容易なことだ。だから、大切なのは 『 よく此処に居ると人伝に聞いたものだからね、なんだか図書館に居る司書のようだなとボクは思ったわけだ。植物園に居るキミの事をなんと呼ぶべきなのかは分からないけれど……、…ま、よく此処に居るキミが直に来てくれたものだからね、まるで迎えに来てくれたみたいだ、とね、…都合良く、ボクはそう思うことにしたわけだ。』その2文字に、どんな意味を込めるか。貴方の声に振り返った彼女は、長い袖を閃かせながら、腕を後ろに隠して。そうして、ちょっぴり"笑った"。『 日向ぼっこでもしながらのんびりしたいのは山々だけどね、生憎、ボクにはあんまり時間がないらしいんだ。くだらないことにぽろぽろ無駄遣いをしてしまって、その結果、うん、キミの言う通り、きっと綺麗なものを見落としてしまった。……だから、そうだなぁ…………。』『 落としてしまった分、キミの時間を分けてくれ。 』『 …そう口にしたなら、キミは、見ず知らずのボクに時間を分けてくれるかな。 』風に揺れる髪と、髪飾りに耳飾り。1歩踏み込めば長い袖も揺れ、厚い靴底が地面を震わす。するり、ちゃりり、ちき、しゅるり、─コツン。肌と、金属と、布と、様々な音が鼓膜を擽る。2度目の初めましては、随分と明るく賑やかだった。) (2/21 23:43:13)


sk > 
(初めまして、彼から見た君は確かにそうで、それでも君は彼を知っているように見えた。相手を知るための小さな心構え、未知との遭遇、自分を相手に開く準備。…そういう、きっと人の出会いに必要なものが、欠けているように見えた。)『…、人伝に。』(君の言葉を小さく反芻し、彼はそっと記憶を辿る。彼の記憶に君は確かに存在しない。娘を探しに盗み見た”シキガミ”たちのデータの中にも、普通の人間らしい君のデータはなかった。君が彼を知っていたとて、彼は君を知るのは初めてなはずで、それならばきっと多少の緊張はするだろうに、君にそれをうかがえなかったのは、彼の気のせいか、それとも。…、彼はちょっぴり戸惑ってから、それでも君を受容するだろう。)『良いですよ、わかりました。丁度、私もてもちぶたさんだったので。』『私の時間を、君にあげます。』(ずいぶんにぎやかで聡明らしく、言葉の多い面白い人。彼は君の形にそう色を付けて、君に合わせて髪を揺らした。)『聞いてきた……、ということは、最初から私に何か、用事があった。…、そう、ですよね。』(小さな疑問を転がしながら、彼はそうっと耳を澄ませ、彼は小さく微笑んだ。…きっと、君みたいに。)『約束があったなら、すみません。忘れていたかもしれなくて。』(彼のここでの目的は一つ。__外の世界の方が彼には穏やかで、自由だ。実験されることも研究されることもなく、逆に人工の音に、柔い存在にあふれたここは彼にとっては窮屈だ。……そんな場所で生まれてしまったまだ見ぬ娘が、幸せに安全に、元気に暮らして生きているか。それを確かめることだけが、彼がここに来たたった一つの理由である。)(ただ、探す手立てもその目途も完全に頓挫したいま、彼にできることは偶然の邂逅を待つか、徒に時間をつぶし、”死んでしまったかもしれない”という可能性から逃げるか。……たった、それだけで。)(だから、自分の無駄な時間を君が奪ってくれるのは、幾分彼にも都合がよかった。…よすぎたのかも、しれないが。) (2/22 00:08:24)


ダウノット > 
、…それは良かった。てもちぶたさんを忙しかくんにしてあげよう。…………やりなれないことをするものではないね、てもちぶたさんに合わせてみようと思ったんだけれど。( 同じ髪の色。同じ声。嗚呼でも、そんな風にお茶目な面があることは、初めて知った。そっくりで、まだ知らない面を見せてくれる〝偽物〟の貴方。硬い生地と金属の擦れる音がまた鳴った。用事、用事、3文字でぽんっと跳ねるようなそんな言葉。なのに、指摘された用事はひどく重たくて、言葉の行く先を少しころころ、転がさなくっちゃならなかった。『 半分正解、半分ハズレ、だな。用事はね、とっても大事なモノが1つ、2つ、……いや、5つだったかな、そのくらいはあるが、何れもキミとは約束をしていない。だから、キミが忘れてしまっていることなんてないよ。………不思議だろう?初対面だというのに、ボクはキミに対して6つも8つも用事があるんだ。ここまで来ると、不思議を越えて気味が悪くもあるのかな。てもちぶたさんは、もしかしたら出荷されてしまうかもしれない。がおー、と、悪いボクに食べられてしまう前に、…逃げるかい? 』こんこん、と、2度地面を足で叩いた。手は引かずに、その代わりにと足を鳴らして。彼女は貴方の1歩先を、貴方を見ながら話して歩いた。当たり屋が居たなら、良い鴨にされる不注意さ。足取りから、そんな注意力の散漫さはきっと伝わることだろう。大事な用事。偽物である貴方を傷付けること。貴方の、娘であること。人伝なんて本当は嘘で、それほどずっと、見ていたこと。貴方は偽物で、傷付けなければならないのに、傷付けることが怖いこと。放っておいても、貴方なんて初めから居なかったみたいに、数日後には消えるのに。本当は、逃げてほしいこと。言い出せない、ズルい秘密を幾つも抱えてる。『 ………時間の売り逃げをしたって、別に誰も責めやしないさ。 』 (2/22 00:59:13)


sk > 
『いそが、しかくん。……ふふ、いえ、好きですよ、私。今度、使ってみます。』(声の調子は変わらないままに並んだ小さな冗談は、不器用で不格好で、不慣れらしくて愛おしい。ほんのちょっとの間をおいてからふふ、と笑えば、”今度”なんて先を見て、ちょっぴり嬉しくなったりなんてして。)(ひとつ、ふたつから増えていく用事は、いつつをゆうに越して、八つも、それからきっと九つにだってなるんじゃないかと思うくらい。約束ではない、けれど自分に用事が確かにある。……彼に思い当たるのは、研究に関することくらい。)『逃げや、しませんよ。……、大丈夫です。』(研究も実験も好きじゃない。それはだって大抵の場合、彼が実験体であるからだ。逃げ出す前より幾分かよくなっているとはいえ、いい思い出は一つもない。優しくなった、いたわられるようになった、だから何だ。彼の立場が実験体であり、調査対象であり、……何かを被る立場であるのは変わらない。それは彼の強さゆえであり、彼の望み故であるのは理解している、けれど。……快くも、ないものですから。)「別に誰も責めやしないさ。」(わかっていても尚彼がすべてを受け入れるのは、彼が、彼を。_____)(こん、こん。泣いた足音はカナリヤか、それとも月夜にきらめく小石か。きっと大丈夫、と心に唱えて無用なパンくずを零しながら、彼は君の後に続くでしょう。……もとより餌になる立場を受け入れた彼にだって伝わる君の不注意さに『これが私じゃなかったら、』なんてそっと君の身を案じながら、自分のことなんて気にもせず。)『………今日は、ほら。みえますか。……鳥が、あんな。……………きょうは、お天気で。きっと外は、きもちいいですよ。』(彼の口数は少ない。歩く足音、君の声、揺れる木の声と鳥の音に気を遣っていれば、自分の声ですらノイズにしかならないから。それでも不器用そうに、___君の秘密をその場からなかったように。……君が暴かれたがっているその言葉を、暴かなくていいと包むように、そんな、どうでもいい言葉をかけるのです。)(十分な間を蓄えながら、そうっと沈黙をなでるように。君の言葉を遮らないよう呼吸をそっと感じながら、君が言いにくい言葉を言わなくたっていいように。)『…この季節はまだ、寒いですから。行くなら、あったかくするといいですよ。』(その言葉は、子をいたわる親のように。) (2/22 01:35:24)


ダウノット > 
( 意地悪、なんて、ズルい人が言えることじゃない。暴かれないことにホッとして、けれど今は、自ら言い出すことなんて出来ないから、その優しさがむずったい。下唇を、ちょっとだけ凹ませて。踏み出す一歩は、自分から。まるで断崖絶壁のようなその先への一歩を、踏み出せた彼女達の強さが計り知れない。見上げた空は何処までも高く、翼を広げた鳥の影が顔の上にふっと落ちる。隙間から覗いた太陽は、ひどく眩しくて。『 ……………ここは鳥籠の様なものだよ。どうしようもない程に閉じきっている訳ではないけどね、きっと、勝手に外に羽ばたいたらそれなりに騒がれる。…その癖、見える範囲で亡くなっていれば、何処かに飛んでいってしまったときより騒がれはしない。……まあ、ボクはその鳥籠を勝手に改造して好き勝手にしてしまうタイプの鳥だけれどね。だから、どうしようもない程に閉じきっていた訳じゃないんだ。だけど、…………ボクも、キミの鳥籠に鍵を掛けてしまったみたいだ。 』この間のように、お友達と外で遊ぶなんて機会はなかなか来ない。眩しい太陽は何処までも遠くて、外や、目的地に辿り着くための翼はまだ無い。緩やかに首を振ったのは、調査のため以外の外に、何の気兼ねもない気持ちの良い外になんてめったに出られないから。ちき、と、弱い金属の音が鳴るのは、袖の中に隠れたメスを時折握り締めてしまうから。キミは、鳥籠を勝手に改造してしまう鳥じゃない。勝手に羽ばたいていってしまうような鳥でもない。だから、実験体として使われるのが嫌なことも、痛みも知っているのに、抵抗しないキミに同じ事を強いているのが嫌で嫌で堪らない。『 …………、 』逃げても、良いんだよ。は、お願いだから、逃げて。そんな我儘の裏返し。今なら何処にだって行けてしまう。だって、数日後には〝キミ〟は居なくなるのだから。だから、だから。『 …………キミはそんなにも優しいのにね。あぁ、うん、そうだなぁ………、…なあ、キミ。 』いっぱいいっぱい頭を働かせても、どうやったって綺麗事。なのに、堂々と使えるようなヒトにはなれない。使われたくなんてなかったから。キミの為に出来ることなんて思い付かないのに、きっとキミは、それすら受け入れる。言いづらいことを、頑張って口にしているふりをして。『 ____もしも、ボクがキミの娘で、1人で調べて、ずっと遠くから見てたっていったら、…どう、する? 』 (2/22 02:34:36)


sk > 
『…………鳥かご、ですか。』(詩人ですね、なんて胸の中にそっと呟きを押し込めて、君の言葉の意味を考えてみたりして。…それでもきっと彼は、何も言いやしないけれど。)(日は増してその色を濃くなじませる。暴力的とも言えるほど強い、強い陽光は彼見た人の視界から色を奪い、かろうじて寄り添ってくれている葉の緑をかすかに認識できる程度に残すから。世界は彩度の冷えた灰色と、翡翠によく似た淡い緑に満たされて。それからきっと、柔らかく、暖かく君を包む。)『閉じ込められ、ても。ほんの少し窮屈でも、それでもいいんです。』(君の言葉の意味を図りかねる。彼にとって君は未知でしかなくて、君が彼をどこまで知っているのかも、どこまでわかった気になっているのかも、彼には知り得ない。ただ。……ただ、君がそれを悔むように苦虫をかみつぶすのなら、彼はそっと、その苦みが和らぐような魔法をちょっと、かけてあげるだけ。)『ここは穏やかで、気分がいいですし。……ご飯もありますし、ね。』(君の飲み込んだ息の波は、彼のもとまで確かに、確かに届いている。飲み込んだのはこちらへの配慮か、それとも君が選んだのか。聞き出してやるべきか、それとも君の飲み込んだ判断を信頼すべきか。決め損ね、選び損ね、二人の間に再び沈黙が落ちて。……雨雲のにおいが、そっと匂った気がしたから。)『あなたは………、』(そっと傘を差さずとも、どこかで小さく、雨宿りのできる場所をみつけられたら。__そう、思ったのだけれど。)「____もしも、ボクがキミの娘で、1人で調べて、ずっと遠くから見てたっていったら、」「…どう、する?」(_______零された言葉は、思いの外土臭く、それからきっと、確かな重量をもって、彼の鼓膜を重く揺らす。ぱちぱちと瞬いて、視界の端に映る自分の髪と、君の髪がおんなじ色なのに気が付いた。君の瞳は彼女に似て、研究者らしい理知的な雰囲気もきっと、彼女のそれに図らずとも似るのでしょう。)『____________それ、は。』 (すぐに飲み込める話じゃない。受け取った言葉を何処にしまうべきか、この言葉を、感情を、どこへおいたら良いのだろうか。浮かんだ言葉は曖昧模糊で、着地点を探して不安定に空を舞う。__ずっと探していた娘、ずっと会いたかった娘。自分の、カミサマの血を受け継いだ子だから、”普通の人”らしい生活はできないと思っていた。彼から見て、君は確かに人間だ。多少薄いが確かな色素が肌を包み、角のない女の子らしい丸い頭蓋は壊れてしまいそうに小さくて愛らしい。__彼の頭に描かれていた”最悪”よりも、あまりに君は普通過ぎて、だから。)『どう……、どう、しましょう。ああ、すみません、ずっと考えていたのに、どう………あぁ。』(自分なんかと似ていなくて良かったと、思ったんだ。)(立ち止まり、行き場の失った感情は指先を不安定に揺らめかせる。)(抱きしめたいとおもった、謝りたいと思った。元気ですかと聞きたかった、幸せですかと問いたかった。それから、それより、なにより。)『言いたいことは、たくさんあります、謝らなきゃとも、思います。でも……、でも、ぼくが、さいしょにいいたい、ことは。』(迷った指先を君に伸ばす。人間らしくない、不格好な手。もし、もしもそれがかなうなら、どうか。どうか、君を抱きしめたいと願いながら。)『……、ぼくの、むすめに。生まれてきてくれて、ありがとう、と。……そばにいれなくて、ごめんなさいと。……っ、ずっと、』(漂った雨雲は、ぽつりぽつりと雫を零し、温室の乾いたその土に、ちいさな染みを作るのです。)『…、ずっと、あい、たかった。』 (2/22 12:40:12)


ダウノット >
 ( もしもと言っただろう、馬鹿め。そう言えてしまったら、どんなに楽だったか。声は聞こえていた。動きは見えていた。それでも、その一声が、一挙一動が、あまりにも心を揺るがすものだから。伸ばされた手はあまりにも拙く、避けるのも振り払うのも容易だった。なのに、キミのせいで、そのどちらともし損ねてしまった。大人しく抱き締められる。震えているのは、貴方の震えが伝わったからに決まってる。重たい鉄に押し潰されていたような心臓が、やたらバクバクと煩いのも、頬っぺたが生暖かいのも、空気が音に鳴らないのだって、きっときっと、全部、キミのせい。『 ……、…………っ………………、…………ず、……ずっと、かぁ…………、それ、は、…………………。』『 …………お、かしいな、ぼくだって、たくさん、それなりにたくさん、考えてきた、はずなんだよ。言ったのも、ぼくからだ、だから、いや、なのに、なんて言ったら、良いのか、 』歩けない足がたたらを踏む。キミは偽物。だから口にして良いと思ってしまって、そんな娘でも良いと、肯定してほしいと欲が出た。そんな我欲がきっかけで、キミは優しいから、肯定してくれるだろうなんて甘く思っちゃって。そうしたら、この後の行いもなんだか赦されるような気がしてしまって。こんなに想われていて、こんなになっちゃうなんて思ってなかったんだ。『 っ"………………ぅ……ふ、ッ…………… 』呼んで良いのかな 『 〝 お、とおさ………っん、 〟 』呼びたいな。『 お、とう、さん、おとう、さん、ぼくの、…ぼくの、お父さん、やっと、ぁえた…………っ 』本当に心臓の音が煩くて、身体をキミに預けたって楽にはならない。頬や鼻を薄い体毛に擽られていた筈が、いつの間にかそれらはぺしょりと閉じてしまって。獣っぽい匂いの中、潮の香りが僅かに漂う。ぐりぐりと強く、強く額を押し付けて、キミが居ることを実感して。そしたらまた、ぶわりと体温が上昇した。研究者じゃない、無意味を知った被検体でもない、1人の少女。研究者でなくてはならないことも、気が付かないふりをして。許されるならもうちょっとだけ、慣れない感情の濁流も、どうしようもない罪悪感も、全部、抱き止めてほしかった。) (2/23 01:24:51)


sk > 
(腕の中に収まった体温を、もう二度と離さないようにと抱きしめる。自身の前を歩いていた、足音でコツコツと遠回しに存在を示していたその距離のある存在は自身の腕に収まって、柔い、小さな生き物のようにくすりとその身を震わせる。___その肩を、背を抱いて。それが自分よりいくつもいくつも小さくてか弱いものに見えたから。)『……、よ、かった。…………っ、いきていて、くれて、……………、っよかった。』(悲しいかなしい、さみしい世界。壁の外は未知にあふれ、壁のうちは人の陰謀が渦巻いている、汚い苦しい、大変な世界。独りぼっちにしてごめん、傍にいてやれなくてごめん。守ってやれなくてごめん、いままで抱きしめてやれなくてごめん。____否、違う。そんなことを君にしてやりたかったんじゃない。彼が。私が、君に、娘にそうしてやりたかったんだ。)(たどたどしい”おとうさん”を確かにぎゅうと受け止めて、押し付けられる額も温度もどんな雫も、その身で全て受け止めよう。ぽつり、ポタリ、君の頭に自身の雫が零れないようそっと君の頭をなで守りながら、君を苦しいくらいに抱きしめて。)(あふれてしまった感情のやり場に困って深く息を吸いながら、君の名前を呼ぼうとして。ふと、君の名前すら知らないことに、呆然として。自分は父親を名乗っていいのか、こんな血のつながりだけで、自分は君の傍にいていいのか。……自身に抱き着いてくれた君の言葉を尊重するならきっと彼は自身を父親と呼べるだろう。けれど、だからこそ。今まで君を放置して、何もしてこなかった存在を父親と呼ぶことを、彼は自身を許せそうになくて。)『─────っ、会いたかったです、ずっと。』(自分からそれを君に聞いても良いものか、それすら知らないのかと傷つけやしないか。顔が分かったならきっと後から調べて君の名前を知れるだろうからそうすべきか。小さな悩みを飲み込んで、彼は穏やかに笑いながら、君の頭をぽんぽんと撫でる。)『げんき、でしたか。幸せでしたか。……痛いことはされていませんか、お友達はできましたか。_____さみしくはありませんでした、か。』(自分の喉に罪悪感を刺しながら、彼は君にそう尋ねた。聞きたかったこと、言いたかったことをぽつぽつと、きっと君が幸せであったように願いながら、自分を寂しんでくれたらいいなんて、ずるい願いを隠しながら。) (2/23 13:27:33)


ダウノット > 
( 嗚呼、この人は本当にずっと、自分の事を探していてくれたんだ、と、心の底から安心できた。今にも流されてしまいそうな言葉の一つ一つを繋ぎ止めて紡いだ言葉は、届くまでは鳥の羽ばたき一つで散ってしまいそうな程に脆くとも。届けば、それが何れだけ暖かく、強固に包み込んでくれるものかがよく分かる。キミの娘、ずっと会えていないと言っていた一人娘。それが自分であることが、ただただ嬉しかった。『 っ………う、ん………………っ 』『 色々、ありはしたけれど、…この年まで、それなりに元気だったよ。…………守ってくれていた人が居てね、お友達も、この間出来たんだ。贅沢すぎるくらいには幸せで、だから、……だから、これは我儘、だけど、………お父さんが居ないのは、ちょっとだけ、寂しくはあったよ。 』大きな掌。触れられる度に、ほんの数ミリ、分からないくらいに揺れた頭は振動を伝えて。それが変に心地良い。幾つもの質問の答え方に迷いはしたけれど、その迷いが出来ることも嫌じゃなかった。何れもずっとではないけれど、元気だったし、幸せな時間は時が経つに連れて増えていった。研究と復讐とも言える向上心、遠くから貴方を見るだけの日々は、それに加えて母親代わりのような、安心できる存在の居る日々へと変わり。いつの転機からか、仕事と目的の為の研究、安心出来る人の元へだけ行く半引きこもりのような日々は、止めどなく人の死んでいく外の景色を見るに至った。それで怪我もしたし、それでお友達も出来た。変わらない日々はぬるま湯の中の幸福ではあったけれど、それではきっとキミには、お父さんには出会えなかった。様々な幸福の形があるのは、周りに居た人のおかげで、その上でキミの存在が足りなかったというのは、失礼なことのように思う。でも、それでも、会いたいと希っていた事実は変えられない。『 あ、のね、あのね、お父さん、 』いつまで、どこまで幸せでいて良いのだろう。今抱き締められることを止められても、離れられないくらいにはこの体温と側に居たい。何度だってお父さんと口にして、娘で居て良いのだと確かめることを止められない。離れたくない、何処にも行ってほしくない。なのに、終止符は自分で打たなければならない。幸福がこれほどまでに依存性の高いものだなんて、知らなかった。) (2/23 14:28:23)


sk > 
(紡がれる言葉は戸惑いながらそれでもなお暖かく、柔らかく、またきっと寂し気でありながら触れたら壊れてしまいそうなくらいに愛おしい。)(それなりに元気だったよ。)(守ってくれていた人が居てね、)(お友達も、この間出来たんだ。)(贅沢すぎるくらいには幸せで、)(___素直に良かったと思う反面、ほんの少しの嫉妬と、寂しさが滲んでしまいそうで、君を抱きしめる腕にほんの少し力を籠める。あまり人の目を見ながら話をしないものですから、自分の表情も見ることはなくて、感情を隠すのが下手なのだ。)『……、そう、』(………お父さんが居ないのは、ちょっとだけ、寂しくはあったよ。)『っ……、…そう、でした、か。』(だから、君のさみしさに救われてしまうから。嬉しくてほころんでしまう顔が、どうしても罪深いその顔が隠せるこの体制で、よかった。)『じゃあ、いつか。その人に、お礼を言わなきゃ、いけませんね。』(君を守ってくれていた人。過去形に込められた意味なんて嬉しさに隠されて見えなくて、そんなことを優しくやさしくつぶやきながら、腕に込めていた力を抜いて、髪をそうっと撫でる。結んだ髪がほどけてしまわないよう気を付けながら、君の顔を良く見せて、と希うように、胸元にわずかにでも空間を開き、目を薄く開きながら。)「あ、のね、あのね、お父さん、」『はい。……どう、したの。』(戸惑うように、迷うように。何かを選ぶように、不安のままに呼ばれたのなら、できうる限り君を安心させようと柔らかい声で返事をする。砕けた言葉、柔らかい音。畏まっていない近い言葉は得意じゃないけれど、君は、君だけは特別だから。)『……言いにくかったら、今度で、いいよ。…まだ、時間はきっと、たくさんある、から。』(これから先もずっと、君と過ごせるだろうから。彼は、そんな夢を見て。) (2/23 14:53:46)


ダウノット > 
ん…………そう、だね、( その人は……、もう、とても遠くに言ってしまったから、望んだって言葉を混じわせて、真意を問うことだって、もう、出来ないんだ。これもまた、言えるような事ではなくって、静かに頷く間際、緩やかに首を振った。撫でる手に合わせて瞳を細め、微かに上を見る。太陽に照らされ、一閃の煌めきの中暗がりに浸かった葉の群れの中で、唯一、照らされるほどに煌めく閃緑の木葉がキミの瞳。ぱちり、ぱちりと2度瞬く。真っ直ぐ向けられた、綺麗な瞳。こうして目があったのは初めての事。きっと瞼は少しだけ腫れていて、目だって赤く染まっているに違いない。おまけに、あまりにも優しい声をかけるから、瞳は塩水を被ってしまう。恥ずかしくて、申し訳なくて、もう、そんなに時間のないことが悲しくて。その実、嫌われてしまわないかと自分が怯えていることだって、ずっとずっと分かってる。『 …………んーん、 』『 今じゃ、ないと、……だめ、なんだ、 』『 あの、ね、 』何もせずに、嘘をついて。幸せな夢に浸ることだってきっと出来る。あとほんの少しでキミという存在は初めから居なかったみたいに消えてしまって、お父さんと呼んだのも、こんなにも幸せであったのも、1人の秘密にしてしまえば、きっと。『 ………………………………………………………ぼ、く、ぼくは、…ひどい、娘だよ。ボクは、…キミを傷付けるために、此処に来たんだ、…………研究のために傷付いた、本物のキミの怪我を、治すために、 』握り締めた掌が強く痛んだ。下を向いてしまっては、見えるのは枯れた地面だけ。怖かった。キミを傷付けてしまうことが、軽蔑されてしまうことが、見放されてしまうことが、なにもかも、全部。だけど、二人菓子の効果が切れて、またキミが怪我を負うことも、傷付けられなかったことに仕方ないと受け止めかねないことも嫌で、慣れているから大丈夫なんて言ってほしくなくて。でもそんなの、偽物相手だって同じだ。『 …………っ………ごめん、………ごめん、なさい、 』 (2/23 15:33:56)


sk >
 (下を向いてしまった君の頭をそっと眺めてから、また目を閉じて考える。)「ぼくは、…ひどい、娘だよ。ボクは、…キミを傷付けるために、此処に来たんだ、…………研究のために傷付いた、本物のキミの怪我を、治すために、」(君の謝罪は胸が痛いなぁ、なんて考えながら、俯いてしまった君の雫を取りこぼさないように、またそっと抱き寄せる。……乾いた大地に雫が必要でも、ごめんね、これだけは僕が欲しいんだ。なんて、そんなわがまま。)(…研究、本物、けがを治すために、傷つけに来た。君の話も研究もわからない、本物が何を示す言葉なのか、それなら自分は偽物なのか、それは、………、それは、どう、飲み込めば良いのか。)__そんなことは、どうでも良くて。(肌がこすれ、爪の食い込む悲しい音が聞こえたものだから、握りしめられた君の拳をほどくように、そっと自身の手を伸ばす。手元に隠された金属の何か、傷つける為のものならナイフににた何かだろうか。)『だいじょうぶ。……、だいじょうぶ、だよ。』(左手を君の頬に添えて、そっと上を向かせるように雫を掬おうと指を伸ばす。右の手で君のその手を開けたのならば、どうか、そのメスをこっそりとでも奪ってしまいたい。)『本物がいる……なら、”僕”はきっと、だめ……、なんだね。』『……本物を、…”私”をすくってくれようとして、ありがとう。』(君の涙は、誰かを傷つけなければいけない罪悪感によるものか、それとも。わからないけれど、君の雫をいまこうして受け止めてやれるのならば、偽物だってよかったかもしれないな、なんてちょっとだけ、思うのです。)『……、どうすれば、本物は救えるのか。…お父さんに、おしえてほしい、な。』(君が苦しいのなら僕がやろう、それは僕の。父親の、役目だから。)(そっとしゃがみ込み、俯いた君の顔を覗き込むようにしながら君に問おう。もう一人の僕は、もう君に父親としてあったのだろうか。それは……、なんだかずるいな、なんて嫉妬して、それでも君が笑ってくれたならいいかもな、なんて綻んで。)『君は、僕の大事な娘だ。……だから、ひどい娘、だなんて、いわないでくれ。………る、と、うれしい、かな。』 (2/23 15:54:56)


ダウノット > 
( ほら、やっぱり。瞳から零れ落ちた滴も、握り締めたメスも、落ちてしまう前にキミの手に掬われて。温もりだけが残される度に、じくじくと胸の奥が痛んだ。『 だ、めじゃ、だめじゃ、ない、………初めて、キミだった、から、ぼくは、お父さんって、…呼べたん、だから。 』それも、偽物だから利用したまでだと言われてしまえばそれまでだ。でもお父さんであったのは、この一時を過ごしたのは紛れもないキミで、キミだって本物のキミと何も変わらない筈だった。二人菓子を食べたこと、その一点以外は、全て。だめじゃない、救ったなんて立派なものでもない、実行する気なら教えたくもなくて、ないと嫌ばかり。だけど、〝君は、僕の大事な娘だ。……だから、〟それだけは、小さく頷いて。嫌だ嫌だと駄々を捏ねて、しゃがみこんで目を合わせられて、おまけに、みっともなくボロボロ泣いている。泣いたって、どうにもならないからいつの間にか泣くのを止めた。その筈が、キミが泣けば泣いただけ掬って、甘やかしてしまうものだから。ちっちゃな子供になったみたいで、止め方もどうにも分からない。『 ……………………………みぎ、みぎの、てのひら。そこが、………おとうさんの、怪我した、場所で、………そこを、刺せば、 』刺してしまったら、もう1人のキミの怪我は完全に治って、そうして、…キミとは、お別れだ。) (2/23 16:24:51)


sk > 
「初めて、」「お父さんって、…呼べたん、だから。」『……、』(下唇がちょっとだけせりあがるのは、ほんのちょっと。…ちょっとだけ、嬉しくて、恥ずかしくて。…自分がずっと、君の隣にいたいと思ってしまって、少しだけ。……すこしだけ、寂しくて、なきそうなだけ。君が泣いていてくれてよかった、なんて小さく思いながらくしゃりと顔をゆがめて、君をやさしくあやすのです。)『よし、よぉし。』(何度だって想像したし、ぬいぐるみに手をあてがって練習した。それでもいざ実際に泣かれてしまうとどうすれば良いかもわからなくて、ただ不器用に、そんな呪文を唱えることしかできなくて。……ただ、ぽつぽつとくちから零されるそれを聞き逃さぬよう、そうっと相槌をうつままに。)『はい、…はい。…………右の、てのひら。』(君の手から盗み取ったメスをキチ、と鳴らし、その光沢に指を這わす。つるりとした表面は悲しいくらいに冷たくて、……かすかな体温でも、どうかそれが温まるといいな、なんて、きゅうとそれを握ってみる。)「………そこを、刺せば、」『………、刺せば。』(…させば、自分にはきっと、君を悲しませてしまうようなことが起こるのでしょう。……例えば、私が消えてしまう、とか。)(もちろん、もう一人の私は元気になるだけで、君の前からは消えやしないのでしょう。きっと私のことだから、他の人と同じように君を愛し、君を守り、きっと君を変わらない温度で守り続ける。……でもそれはきっと、父親として、ではないのでしょうね。)『………、名前を、聞いてもいいですか。』(今度は訪れないなら、君の名前を調べることも、お礼を言いに行くことも。…外に一緒に行くことも、できなくなってしまうのだろう。)(そしたらきっと君はまた泣いてしまうのだろうし、……それは、あんまり嬉しくはない、な。)『ごめんなさい、……ちょっと、失礼。』(しゃがみ込んだまま、君を抱きしめるように、救い上げるように腕を伸ばし。君を、小さい子供を抱えるみたいに腕に収め、そのまま歩いてしまいましょう。できる限り君が怖がらないよう、揺れないようにと体幹に力をこめ、人通りの少ない隠れた道を、そうっと歩いて。)『………これは、僕の。…私の、わがままなんですが。』(たどり着いて、君を下ろした先はなんだってない、普通の場所。ベンチがあるわけでも特別綺麗な自然があるわけでもない、コンクリートの施設の壁と、何でもないような乾いた地面があるだけの、人目につかない施設裏。沈みかけた日が差して、ひんやりとした空気は柔らかく温まる。手入れのされていない植え込みは雑草を伸ばし、ちいさな野草の子供をその身の下に守っている。)『…もっと、もっと。…いつか、君が、気が向いたら。もっと、甘えてほしい、んです。』『僕が今まで親として君にできなかったことをしたい。もっと君を甘やかして、愛して、抱きしめて。……それができなくても、こうやって。…………こう、やって、いっしょに……いっしょに、あるいたり、が、したい、んです。』(君に涙をみせたくないと、思っていたのになぁ、なんて自嘲するように笑いながら。彼は左手にメスをもち、君の頭を、ぽんぽんと右手で撫でるのです。)『いつか、いつか。……また、おとうさん、と、よんでくだ、さい。』 (2/23 17:10:37)


ダウノット > 
な、まえ、( …………そういえば、初めましてでありながら、名乗っていないことにふと気が付いた。名前を名乗るより咲に、娘であることを明かして、名前も知らないのにこうも受け入れ、親として愛してくれていた。嬉しくて、そんな基本のきもしていなかったことがなんだかおかしいのに、涙はしょっぱい。モタモタしていたら、謝罪の言葉が耳に届いて、地についていた筈の足がふわりと浮いた。どころか、足だけじゃない。遠退く地面。それと反対に、近付く、キミの身体。反射的に落ちないようにくっついてしまうけれど、それが必要ないくらいに揺れは少なく、キミが支えてくれていた。抱っこの経験は、無くはない。だけど男性、お父さんにしてもらったのは初めてで、母猫に咥えられた子猫よりも大人しく、降りた地面に身体の重心が微かに揺らいだ。「 ………これは、僕の。…私の、わがままなんですが。」『 ………………うん、 』『 っ…………………ぅ、ん………ッ 』『 ………………だうのっと、…それが、ね、…ぼくの、なまえ。だうって、呼ばれるのが、多いな。……キミは? 』きゅうと凹んだ喉を開いて、無理矢理深く息を吸い込む。頬っぺたも、キミの身体もべしょべしょで、なのに涙は枯れやしない。不思議なもので、伸ばした手、滑り落ちた袖の中、皮の手袋に覆われた手がキミの頬を撫でたから、それも吸い取ってきっとまだまだ枯れないのだろう。〝 夢幻の貴方へ〟届く何かが欲しかった。言葉でも良い、行動でも良い。キミのようなカミサマにボクもなったなら、貴方へ、声をかけてな、娘になることが出来ると思ったんだ。そうしたら、でき損ないとして生まれた、キミを貶めた贖罪になると思っていた。『 ぼく、ね、 』……だけど、そんなものなくたって、ボクはキミの愛娘で、キミは 『 おとーさんの、む、すめで、っ、……良か、ぁた……………っ! 』 (2/23 18:08:27)


sk > 
『だう、だうのっと。……ダウ、ダウ。』(おとうさんのむすめで、よかった。___これ以上に、何を望むと言うのだろう。君の名前をなぞり、飲み込んで、それから何度だって君を呼ぼう。君の輪郭をなぞるように、君の存在を確かめるように。ダウノット。だうのっと。君の名前、君の存在、君の事。自分の頬に触れた君の手は、手袋のせいかどこか冷たく、それでもなんだか暖かく。きっとまた抱きしめてしまったら離れられなくなる、涙を掬ったら目を離せなくなる。………僕は、偽物だから。)(照っていた日は沈み、世界を橙に、それからその影を藍に沈める。風は冷えた空気を運び、君の頬を撫でるのでしょう。)『ダウ、愛しています。…きっと本物も、君を愛していますから、どうかまた。……僕は、__いや。』『……………………もう、行きなさい。ダウ。』(夜が沈んだら寒いから、朝までは一緒にいよう。朝は別れには似合わないから、どうか昼まで。お昼頃は暖かいから、きっと別れなんて忘れて眠ってしまうでしょう。…また夕方がめぐってきたら、こうしてお話していたら、きっとすぐに夜になる。そしたらまた、朝まで__________こんなこと。) (かれはそっと、君の背を押した。)『ダウ、どうか笑って。僕は……、私は、大丈夫。君の傍に、ずっといます。君のことを、愛しています。だから、大丈夫。』(左手のメスの感覚を忘れないようになぞりながら、それをそっと君に見えないように後ろ手に隠す。)『…僕は、もう少ししたら戻ります。大人には、一人の時間が必要なんです、本当。…僕は死なない、ダウのことも忘れない。…もう少ししたら部屋に戻ります、本当です。…自分の手を刺すなんて、怖いですから。本物には、申し訳ないけれど。』(そっと、穏やかな笑みを浮かべながら。)『ただ………、今日の事は、あんまりにうれしかったものだから、”夢だと勘違いしてしまう”かもしれませんから。……そうしたら、また。また、僕に…わたしに、おしえてください。君の名前と、娘だってことと。…君が、幸せに生きていること。』(ダウ、君を愛しています。) (2/23 20:35:32)